62 激闘!グランドマジック
『さあ、とうとうこの日がやって参りました。グランドマジック本戦。実況はわたくしサイオン、解説は元王国騎士団団長のサリマさんでお送りします!』
『よろしくお願いします』
熱狂を受けながら、ナルヤ達はスタジアムへと足を踏み入れる。中央には、ヘルイス予選であったセントラルステージの倍はあろうかという巨大な舞台が設置され、観客席がそれを囲っている。
「ナルヤ、あそこで戦うんだ」
「くー! 羨ましいぜ」
興奮する二人に目もくれず、ナルヤは舞台をひたすら見つめていた。
十二年間、ここに立つ事を目標にして来た。勿論、この舞台も勇者となり、皆を守る英雄となる為の通過点ではあるのだが、まずはここに立たなければ始まらないのだ。
その舞台に来るまでに十二年。スキルによる恩恵が大きいが、この時間がなければ、ユノにもザイにも勝つ事は出来なかった。
一瞬涙が溢れそうになったものの、なんとかそれを押さえ込む。涙を流すのは優勝した時だ。
「やあ、ナルヤ君じゃないか」
聞き覚えのある声が聞こえ、後ろへ振り返る。
「ルイさん⁉︎」
「うおー!勇者ルイだ!」
声を掛けたのは現行の勇者にしてナルヤの憧れの人、そして一回戦の対戦相手であるルイだった。
「君と戦うだろうとは思っていたけど、まさか一回戦で当たるなんてね」
「相手がルイさんでも、負けるつもりはありません」
「僕もだよ。お互い良い勝負にしよう」
バチバチと火花が散らす……ように見えなくもない視線を交わす二人。それにユノは共感するように、うんうんと頷いている。だがミユキは、何故だか表情が暗い。
「ミユキ、具合でも悪い?」
「えっいや、なんでもないよ。ちょっと喉が渇いたなーって。飲み物買ってくる!」
言って出店の方へと駆けていった。そういえばこの町に来た時も様子が変だった。胸に妙な騒めきがする。これも彼女の秘密に関係があるのだろうか?
「じゃあ、僕はこれで。ナルヤ君、良い勝負にしよう」
「はい」
続いてルイも出店へと向かった。
カウントダウン
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