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5 最初の旅仲間

「旅ですか?」

「そうなんだ。私これから旅に出るんだけど、一人だと寂しくて、一緒に旅する仲間を探してたの。で、さっきビビっときたんだ。君となら良い旅が出来るって」


 旅とはまた予想外な物が飛んできた。だが、悪い提案ではない。ナルヤ自身冒険譚は大好きなのだ。仲間と様々な所を旅するのに憧れたことも一度や二度ではない。だが……


「ごめんなさい。僕にはお受け出来ません」


 その言葉を聞いた途端、彼女の顔が明らかに悲しげになった。その表情に罪悪感を覚えるも、だからといってどうこうという話ではなかった。


「ごめんね。迷惑だったよね」

「いえ、そうではなく。ただ僕今仕事が無くて、貯金も心許ないので、とてもじゃないですが旅をするのは……」


 ナルヤの返答に「あーそんなことか」と呟く少女。その後少し考える……というよりは何かを見つめるような動作を見せた後、再びナルヤの方へと向き直る。


「なら大丈夫、旅の資金は私が全部出すよ。それにもしかしたら、私の知り合いに頼めば就職先が見つかるかも」

「本当ですか⁉︎」


 旅をするには相当な額が必要な筈だが、自分の分まで出せるというのか。この少女の素性が気になりはしたが、それよりも旅である。今まで読んできた冒険譚は数知れず、そんな中、何度も憧れを募らせた。


 勿論英雄になるという夢の方が大事だが、職場も紹介してくれるのなら、結果的にそっちの方が夢への近道になりそうだ。


「さあどうする? こんなチャンス二度とないかもよ?」

「……な、なら、お世話になっても良いですかね?」

「勿論。という事でよろしく、ナルヤ」


 そう言って右手を差し出す少女。ナルヤはそれを両手で掴む。


「よろしくお願いします」

「後、仲間になったんだから今から敬語は無しだよ」

「は……ああ。えーと、なんと呼べば……」

「敬語出てるよ」


 両親が死んでから敬語呼びしかしてこなかったナルヤは、あまりこの喋り方に慣れない。彼は小さく苦笑する。


「私はミユキ。呼び方は別になんでも良いよ。私も勝手にナルヤって呼んでるし」

「じゃあミユキで。よ、よろしくミユキ」

「うん。よろしく」


 そこでナルヤは手に持っているずっしりとした物を思い出す。そう言えばまだ借りたままだった。


「これ、返すの忘れてた」

「あー、その剣なら君に預けとくよ。君の方が上手く使えこなせるみたいだしね」

「いいの? もしかしたらこれを持って逃げるかもとかは思ったり……」

「しないよ。ナルヤはそんな事しないって信じてるから」


 ハッキリと言い切るミユキ。その意外な言葉に拍子抜けるナルヤだったが、すぐにそれが喜びに変わった。


「……なら預かるよ。絶対に無くさない」


 ナルヤは何か大役を任されたような気がして、そう強く宣言した。


 思えばこの剣に触れてからナルヤは魔法が使えるようになった。この剣には何か凄い力が……魔法? 

 魔法はスキルが無ければ満足に扱う事が出来ない。だがナルヤは先程、見事な魔法を発動していた。つまり……


「ミユキ。今から寄りたい場所があるんだけどいい?」



カウントダウン

       29day

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