57 強襲ワーウルフ
「なるほど、そんな事があったのですね」
長く伸びた髪を揺らしながら、ユノ達の母、ユズルは申し訳なさそうに言った。ユノがかなり男勝りな話し方なので、似た顔の女性が女性らしい話し方をしていると、無性に違和感を感じる。
「ナルヤさん、私達の為にありがとうございます」
「いえ、これは僕の為でもありますから」
それを聞いたユズルの表情が少し柔らかくなり、ユノへと目線を向ける。
「良い仲間を見つけたのね」
「おう」
「ふん。あんな弱腰野郎のどこが良いんだか」
ユウが不貞腐れた様に言う。
すると、突然バンという音が響き、扉が勢いよく開いた。外から高齢の男達が入ってきた。
「てぇへんだ!」
「どうしたのせっさん」
せっさんと呼ばれた男は続け様に言う。
「ワーウルフの群れだ!」
◆◆◆◆◆
ワーウルフは単体だと大した力を持たないが、その真価は群れの中で発揮される。特殊な超音波を飛ばす事で遠くの仲間とも交信する事ができ、そのお陰か非常に連携が上手い。
孤立したワーウルフを簡単に倒した冒険者が、二体になった途端手も足も出なかったというのは良くある話だ。
そんなワーウルフの大群を迎え撃つ為、ナルヤとユノは北と南に分かれて防衛に向かった。村を取り囲み攻撃するのはワーウルフの常套手段だからだ。
不幸にもこの村は森林に囲まれている。敵が全て見えているのならシャイニングブレイクで一掃出来るが、隠れる場所が多いこのフィールドでは、その隙を突かれかねない。
「一体ずつ倒すしかないか……んっ?」
遠くにワーウルフらしき影が見え隠れしている。すぐそこまで迫っているようだ。
「シャイニングエンチャント」
人数不利の乱戦が予想されるこの戦いでは、悠長に付与魔法を使っている余裕はない。効果時間が心配ではあるが、今のうちに使っておくしかないだろう。
「ガァガル!」
「はあっ!」
近くの草むらからワーウルフが現れ、ナルヤへと襲いかかった。それをすれ違いざまに一閃する。
「絶対に守り抜く!」
自分に宣言したナルヤは、単身森へと踏み込んだ。
カウントダウン
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