表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

57/89

56 そうですユウです子供です

 それから幾つかの町を周り、とうとうハール村に辿り着いた。


「ここがハール村か、良い村だね」

「だろ? あたしの自慢の故郷だ」


 胸を張るユノを尻目に村の様子を見る。小さい子供達が和気あいあいと田畑を駆け回っている様は、小さい頃の村での生活を思い出す。


 炎龍による襲撃がなければ、今もあの村ではこんな姿が見られたのだろうか。

 同じく辺りを見ていたユノが驚いた様に声を上げる。


「ユウ⁉︎ ユウじゃねぇか!」


 そう言って遊んでいた子供達へ駆け寄る。ユウはユノの弟だ。重病という話だったが、体を動かす分には支障がないのだろうか。


「姉ちゃん……? 姉ちゃんだ!」

「ユーウ!」

「お姉ちゃーん!」


 ギシッと抱きしめ合う二人。その光景から、いかに二人の仲が良いかが見て取れる。


「感動の再会だね」

「ああ……」

「そういえば重病って聞いてたけど、走り回って大丈夫なのかな?」

「あ? それなら大丈夫だぜ」


 さっきまで抱きついていたユノが、弟を連れてやって来た。


「コイツがユウ。あたしの弟だ」

「あんたらが姉ちゃんの仲間?」

「そうだよー。私はミユキ、横にいるのはナルヤ、よろしくね」

「よろしくな」


 ユウが右手を上げて答えた。重病という事で、もう少し大人しいイメージだったが、結構生意気である。


「それで、なんでユウ君は自由に走り回れてるの?」

「おう、そうだったな。ユウの病気は呪い型で、今は症状があまり出てねぇんだ。年を重ねる毎に重くなって、四年もすれば死ぬらしい」

「……そうなのか」


 ユウの年齢は十歳らしいので、四年だと十四歳。スキルすら受け取る事なく死んでしまうというのか。


 ナルヤもミユキも顔が俯き、空気がどんと重くなる。そんな中、当のユウだけはニコニコとしていた。


「でも、姉ちゃんが優勝して僕の病気を治してくれるんだよー。そう約束してくれたもん」

「ユウ、それなんだが……お姉ちゃん負けちゃった」

「え…………?」


 ユウの目がハイライトが消えた様に輝きが消えた。


「でもな、仲間が優勝したら賞金を分けてくれるって言ってくれてんだ。だからお前の病気が……」

「違うもん! 僕は姉ちゃんに勇者になって欲しいんだもん!」


 言ってぷくーと頬を膨らませるユウ。ユノは困惑して、何も返さずにいる。


「ミユキお姉ちゃんが姉ちゃんを倒したの?」

「違うよ。優勝したのはナルヤ、横にいるお兄ちゃんだね」

「ネルヤ……ってこれ⁉︎」


 ナルヤを指差し、驚いた様に聞き返すユウ。しかも名前を少しまちがえている。


「おう。姉ちゃんのライバルだ」

「ノルヤ……コイツが……」


 ぶつぶつと呟きながらまじまじと観察するユウ。それから少しした後、ユノへ振り向く。


「弱そう」

「弱そう⁉︎」


 突如出た言葉に、思わずオーバーリアクションで返してしまう。確かにガタイも良くなければ、勇者の様に派手な格好をしている訳でもないが、流石にそれは言い過ぎでは……


「まあ地味だしな」

「ちょっユノ!」

「確かにパッとしないよね」

「ミユキまで⁉︎」


 見事にコンプレックスを突かれ、心にダメージを負うナルヤ。全て事実なので言い返せないのが本当に辛い。


「ごめんね。でも嘘はつけなくて」

「大丈夫。大丈夫だからお母さんの所に行こう。きっと心配してるだろうし」


 これ以上この話を続ければナルヤの心が持たない。ナルヤの提案を受けた一同は、母に会う為ユノ達の家へと向かった。



カウントダウン

       7day

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ