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53 正義の選択

 魔族。人間の数倍と言われる程の身体能力を有し、四百年に渡り人類と戦った亜人種。


 魔王が撃破された後もごく僅かながら生存しているという話は聞いた事があるが、まさかこんな所にいようとは。


 ナルヤは剣を構える。見た目は子供のようだが油断はならない。例え子供であっても、大人の人間を殺す事など雑作もないのだから。


「ミユキ、下がってて」

「待って。何か様子が……」

「ちょっミユキ危ない!」


 ミユキがナルヤから離れ、魔族の元へ向かう。それを静止するも、彼女は止まらない。

 

「近づくな! それ以上近づくと……我が……容赦…………」

「お兄ちゃん!」


 男の魔族が立ち塞がるも、歯切れの悪い言葉と共に膝を着く。よく見れば、彼らの全身は傷だらけで、今にも倒れそうな程体も震えている。


 ミユキはバックからパンを取り出すと、魔族の前に差し出した。


「どうぞ」

「……何のマネだ」

「お腹空いてるでしょ。口に合うかは分からないけど、人間の食べ物だよ、食べてみて」


 魔族が理解出来ないと言った様子で彼女を見つめる。


「ミユキ……相手は魔族だ。危険だから早く」

「魔族じゃないよ。この子達にも名前があるだから。種族の名前じゃなくて、名前で呼んであげなきゃ」


 ミユキは魔族へ振り返り、再びパンを差し出した。それを見てか、女の魔族がそれを受け取った。


「メイ、何を!」

「だって、このお姉ちゃんが食べて良いって……」

「いいかメイ、人間の言葉を信用するな。人間の事だ。毒でも入ってるに決まってる」

「でもメイ、もう限界だよ。お腹ぺこぺこで動けない」


 そう言ってむしゃむしゃと食べ出した。余程お腹が空いていたのか、一瞬で全て飲み込んだ。


「メイ、何もないか? 少しでも異変が生じたらお兄ちゃんに言うんだ」

「お兄ちゃん……」

「毒か⁉︎ 早く吐き出すんだ! 毒が全身に回る前に……」


「美味し〜い」

「……へっ?」


 笑顔を浮かべた彼女を見て、男の魔族がきょとんした表情を作る。

 実際あのパンに毒なんて入っていない。ここに来る途中にあったパン屋で買ったものである。


「本当に……なんとも無いのか?」

「うん。とっても美味しいよ」


 会話が噛み合っているようで噛み合っていない。だが、意味は通じ合ったようである。


「ねっナルヤ。この子達はこの子達だよ」

「……君の言った意味が少しだけ分かった気がする」


 彼等を魔族という括りだけで見て、勝手に敵だと思い込んだ。だが、魔族だって意思がある。心を通わせようと思えば、通わせる事も出来る。そういう事が言いたかったのだろう。


「ほんと、君には驚かされてばかりだ……」

「? 今何か言った?」

「いいや、何でもない」


 その時、入口の方からコツコツと音が聞こえてきた。その音はどんどんと大きくなって行く、近づいてきているようだ。


「まずい! 早く隠れ……」

「なーにしてんだ?」



カウントダウン

       16day

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