47 その果てに
「わたしは……そうか」
ザイは状況を理解し、ゆっくりと体を起こした。まだダメージが抜け切ってないのか、足元がふらついている。
そんなザイを見て、ナルヤは問いかけた。
「教えてください。魔王ってどういう事ですか?」
ナルヤが魔法を放った時に、彼は魔王という言葉を使っていた。戦闘中はそこに思考を割く暇がなかったが、戦いが終わった事で余裕が出来たからだろう、ナルヤにはある仮説が思い浮かんでいた。
ナルヤに話した計画はフェイクで、本当の目的は別にあるのではないかと。
「フハハハハハ! 勘違いしないでくれたまえ。わたしが色々と話したのは、君に利用価値があったからだ。今の君と、話をする理由はない!」
それからザイは、いつの間にか手に持っていた玉の様な物を投げつける。辺りが白い煙で覆われ、それが晴れた時には、彼の姿はなかった。
「ザイさん……あなたは一体……」
ナルヤは彼が消えたであろう森の奥を見つめながら、ボソリと溢したのだった。
◆◆◆◆◆
「おめでとう、ナルヤ」
「やったな。流石あたしのライバルだぜ!」
観客席に戻ったナルヤを待っていたのは、仲間達からの祝福の言葉だった。それを受けたナルヤは、謝辞を返す。
「二人がいなかったら、僕は多分負けていた。ありがとうミユキ、ユノ。今日勝てたのは、君達のお陰だ」
ユノと修行をしていたから、ミユキが心を救ってくれたから、ナルヤはあの戦いに勝つ事が出来た。それはナルヤが最も理解している。
「なんだよ……かしこまって……」
「そうだよー」
「本当にありがとう」
ナルヤの言葉に若干照れる二人。そんな二人に念押しする様に、もう一度謝辞を繰り返す。
数日前まで明日の命すら危うかったナルヤが、勇者まで後一歩という所まで来ている。きっと、冒険者時代の自分に言っても信じないだろう。
それ程夢のような事が起きているのだ。
『これより閉会式を開始します。受賞者の方々は、壇上までお上がりください』
「あっもうそんな時間か」
「確かユノちゃんはギリギリ入賞じゃないんだっけ?」
「そうだな。しかも、準優勝のザイがどっかに行っちまったから、表彰されるのはナルヤだけだ」
一瞬ユノの顔が曇ったが、すぐにいつもの様子に戻った。この悔しさは尋常じゃないだろう。だが、それでも祝ってくれているのだ。その想いを無下には出来ない。
「それじゃあ行ってくる」
「おう。盛大に受け取ってこい!」
「私達もここから見てるからねー」
カウントダウン
17day




