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46 隠されし突破口

 試合が開始し、ナルヤは魔道具へと向かう。戦法としてはユノと同じである。まずは魔道具を倒し、その後ザイを処理する。


 ユノは魔道具のカラクリに気付くのに時間がかかったせいで負けてしまったが、今回は最初からタネが割れている。大した脅威ではない。


「雷雨」

 

 大量の雷がナルヤを襲う。ナルヤはそれをなんとか躱しきると、魔法を放った。


「シャイニングエンチャント」


 遠距離の攻撃魔法はあの魔道具に吸収されてしまう。ここは身体能力を上げ、戦況を有利に進める方が得策だと踏んだからだ。


「くっ、ならこれならどうかな? 円炎剣」


 ナルヤの周りを炎が覆った。だが、ナルヤにはその技は通じない。ユノの研究なら、誰よりも行なってきたからだ。


 覆い始めるとすぐに回避し、魔道具の懐に潜り込んだ。円炎剣を発動してすぐのため、次の魔法を放つ準備は出来ていない。ナルヤは腹に剣を当て、魔法を繰り出した。


「シャイニングスラッシュ!」


 そのまま腹を引き裂き、無敵を誇った魔道具は地に沈む。残されたのは、丸腰のザイだけである。


「これで終わりです」

「…………」


 ナルヤは剣を構え、そこに光を集中させる。そして溜まり切ったのを確認し、それを振るった。


「シャイニングブレイク!」


 光の波が剣から溢れ、ザイへと向かっていった。その様子を見たザイがニヤリと口元を歪めた。


「それを待っていた!」

「⁉︎」


 地面から二体目の魔道具が現れ、ナルヤの魔法を吸収する。だが、もう止められない。こうなった以上やる事は一つ。相手の吸収力を上回る威力で相手を粉砕する。


 この町についてすぐのユノとの戦闘で、ナルヤは限界を超える魔力を放出した。あの時と同じ事が出来れば!


「はぁぁぁぁぁ!」


 叫び声を上げるも、威力が上がった感覚はしない。


「これで、魔王の力がわたしの手に。とうとう、本当の復讐の始まりだぁぁぁはっはっはぁ!」


 高笑いするザイ。早くも勝ちを確信したのか、何かをやり遂げた気になっている。気になった単語があったが、今はそんな事にかまけている暇ではない。なんとかしてあの力を……


「ナールーヤー!」


 遠くからミユキの声が聞こえる。……そしてもう一つ


「ナルヤ! 負けんじゃねぇぞ!」


 ユノの声である。まだ完全には癒えていない筈だが、怪我を押して来てくれたようだ。


「ナルヤ! 君ならなれるよ。自分を信じて!」

「あんな奴ぶっ飛ばしてやれ! どっちとも戦ったあたしが保証してやる。テメェの方が絶対強ぇ!」


 二人の声援を受け、心が熱くなるのを感じた。


(負けられない。応援してくれる仲間の為にも、絶対に、この試合に勝つ!)


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……!」


 光が増していき、次第に魔道具が押されていく。だが、まだ足りない。後一押し、一押しあれば……


 ピキッという音を立て、魔道具の口元が少し割れた。確かあの位置は、ユノが最後に魔法を放った場所である。


「何⁉︎」


 さっきまで余裕綽々だった。ザイの表情が一気に険しくなった。ついに、彼の予測出来ていない所まで来たようだ。


 きっと、吸収される直前に、あの口に小さな亀裂を入れていたという事だろう。その亀裂はどんどんと広がり、風龍を形作ったその姿が崩れていく。


「やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろぉぉぉ!」

「「「いっけぇぇぇぇぇぇ!」」」


 ザイが呪文のように言葉を連呼するも意味をなさず、ナルヤ、ミユキ、ユノの声がシンクロし、光の放流は更に力を強めた。


「嘘だ……わたしの計画は完璧だった筈……そんな事……絶対に…………」


 そして、光が魔道具諸共ザイを飲み込み、舞台外へと弾き出す。


「勝負あり! 勝者ナルヤ!」


 ナルヤは倒れそうになるものの、剣を立ててそれを防ぐ。前回同様、魔力を使い果たした事による影響だろう。


 観客席からの歓声をその身に受け、ナルヤは舞台を降りた。


 下にはザイが、白目を剥き倒れ伏していた。そのあまりにも似つかわしくない姿に、ナルヤは吹き出してしまう。


 少し悪いなという気もしたが、今まで散々弄んでくれたのだ、これくらいは良いだろう。その姿を見ながら笑っていると、ザイが目を覚ました。

 



カウントダウン

       17day

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