43 正体不明の正体
「勝負あり。勝者イテルギ!」
吹き飛ばされたユノを見て、審判が勝敗を言い渡した。少しの間が空いてから、観客席から歓声が上がる。
「ユノ!」
「ユノちゃん!」
そんな中、ナルヤとミユキは場外で倒れているユノへと駆け寄った。すぐさまミユキが呼吸を確認した。
「良かった。息はあるみたい」
「でも酷い傷だ。早く医務室に運ばないと」
手当をする為、背中にユノをおぶろうとするナルヤ。その時、運営の人間らしき人達がタンカーを持って現れた。
「救護班の人間です。彼女は我々が医務室まで運びます」
「あの、私も同行していいですか? ユノちゃんは私達の仲間なんです」
ミユキがそう名乗りを上げる。ナルヤも同行したかったが、試合があるためそれは出来ない。今は託すしかないだろう。
「それじゃあミユキ。ユノを頼む」
「まかせて。ナルヤも試合、頑張ってね」
「ああ」
そして、タンカーにユノを乗せたミユキ達は、医務室へと足を進めた。この場にいるのはナルヤのみである。
ナルヤは未だ舞台にいる男を見つめる。決着をつけようと思えばもっと早くつけられた筈である。なのにあの男は、わざわざユノを痛めつけた。
何か狙いがあるのか、それとも愉快犯か。どちらかは分からないが、どちらにせよ許される行為ではない。
ナルヤの視線に気づいてか、男がこちらに向けてニッと口元を歪ませた。その後、羽織っていたローブを空へと放り上げる。
今まではほとんど隠れていた全身が露わになった。眼鏡をかけた黒髪黒目の長身の男だ。格好は昨日会った時とは異なり、黒いタンクトップとネイビーのズボンという軽装だった。
今日一の衝撃を覚えながら、ナルヤはその名を口にした。
「ザイ……さん?」
カウントダウン
17day




