39 苦戦
「炎斬剣」
試合開始と共に、炎を纏わせた斬撃を放つ。だが、空から現れた機械の龍に飲み込まれた。
だが、ここまでは予定通りである。ユノは、脳内でシミュレートした通りに攻撃を開始する。
「円炎剣」
炎がローブの男を囲い、逃げ場をなくす。だが、この魔法を放ったのはその為ではない。
彼が炎に囲われた状態では、満足にユノを見る事が出来ず、龍に指示が出せないからだ。
そうなると次なる手は一つ。彼女の予想通り、龍は炎を飲み込む為に背中を後ろに向け、男の方へと戻っていった。チャンスだ。
攻撃と防御を龍に依存している都合上、それが行動をしている時は無防備な状態が生まれる。勿論、向こうがそれを読んで迎撃に当たらせる事も可能だが、炎で視界を塞がれているためどこから攻撃が来るのかが分からない。
ユノは左に移動し、魔法の準備をする。より確実性を上げる為、放つのは龍が背中を向けた瞬間。
(今だ!)
「瞬炎剣!」
瞬間剣はユノが出せる最も速い攻撃魔法。相手は視界が見えず、防御する龍も背中を見せている状態。これを防ぐ手段を相手は……
「ウォーターストリーム」
「ぎぎゃぁぁぁぉぅ!」
聞き覚えのある言葉と共に、男の周りに水流の竜巻が形成された。それにより炎は掻き消され、盤面は最初に戻った。
「あんた、水魔法の使い手だったのか」
今まであの男が魔法を使用した事はなかった。なので、どんな魔法を使えるかは把握していなかったが、ユノの魔法を打ち消せるだけの力を持っているようだ。
「なら! 円炎剣」
再び炎で囲い、ユノは龍に接近する。相手が自衛の手段を持っているなら、まずは龍から叩くしかない。
「業炎剣!」
炎を剣に纏わせ、再び男の元へ戻ろうとする龍に直接攻撃を仕掛ける。口元に魔法が行かなければ飲み込む事は出来ない。背中から切り裂けば、問題なく龍にダメージを与えられる筈だ。
ミユキは背後に周り、その無防備な背中を切り裂こうとした。が……
「ぎぎゃぁぁぁぉぅ!」
彼女が空中へ飛び上がった瞬間、何かに足を引っ張られ、そのまま地面に叩きつけられた。
「一体どうなってんだ……」
水魔法にそんな芸当は不可能な筈。疑問に思ったユノは、足を掴んでいるのは何なのかを確認した。それは、太めのつるだった。
「草魔法⁉︎ でもアイツは……」
そう、スキルは一人に一つ。同じ人物が二つの魔法を使う事はほぼ不可能だ。一応ナルヤが二年かけて鎖の下位魔法……とも呼べないレベルでの行使は可能にしていたが、もしかするとその類い……。
「アイアンロック」
「岩魔法⁉︎」
「ぎぎゃぁぁぁぉぅ!」
無数の岩が降り注ぎ、ユノを襲う。慌てて防御を取ろうとするも、集中力が削がれていた事もあり間に合わない。
「ぐぅぁぁぁぁ!」
ほとんど庇い切れず、強烈な痛みと共に後方へ飛ばされた。
「水魔法に草魔法、それに岩魔法まで……一体どうなってんだ」
立ち上がりつつ思考を巡らせるが、検討もつかない。ユノはきっぱりと考えるのを止め、戦闘に集中する。これ以上考えても、支障をきたすだけだ。なら、変に考えずにアドリブで戦った方が強い。
「さあ、第二ラウンドを始めようぜ!」
カウントダウン
17day




