37 ユウ
「勝負あり! 勝者ナルヤ!」
辺りから歓声が巻き起こる。まだ予選の一回戦なのだが、多くの人がこの試合を見ていたようだ。
「やったねーナルヤー!」
「お前ならやると思ったぜ!」
観客席にいる二人からの声も聞こえた。ユノの時と同じように、ピースサインを二人に送る。
「はっ……強くなったじゃねぇか……」
地面に倒れたまま、マルクスはナルヤへ語りかけた。それに気付いたナルヤは、視線をマルクスへと向けた。
「その強さ……不正して手に入れたものじゃねぇよな」
「はい。これは僕の力です」
「……チッお前を追放したとなりゃ、ますますギルドの評判が下がっちまうな……」
その言葉を聞き、ナルヤは眉根をピクリと動かした。予測していた事ではあるが、やっぱり……
「ギルドが……」
「気にすんな。元はと言えば、クビにしたこっちの責任だ。お前は気にせず、英雄とやらになればいい」
そう言って目を瞑った。毎度毎度、言いたい事だけ言っていく人である。
ナルヤは何も言わず、その場を後にした。
◆◆◆◆◆
二回戦
「勝負あり! 勝者ユノ!」
三回戦
「勝負あり! 勝者ナルヤ!」
四回戦etc
「勝負あり!」
それからも危なげなく勝ち進んだナルヤとユノ。二人はとうとう、準決勝までやって来た。
「よっし! 次勝てば、ナルヤとの決勝戦だぜ!」
「ああ、これさえ勝てば、この舞台で君と戦える」
大会で数多の強敵と戦ったが、ユノとの戦闘が一番楽しかった。そして、彼女もそう思っている。その確信が、ナルヤにはあった。
「確か準決勝からは、セントラルステージって所でやるんだよね」
「そうそう、真ん中に立ってるあの大きめのステージだね。準決勝と決勝を合わせても三試合しかないから、もう同時進行する必要がないだよ」
「って事で最初はアタシだな。サクッと倒してくるから、首を洗って待っててくれ。じゃあ「少し待ってくれ」……なんだ?」
そう言って立ち去ろうとするユノを、ナルヤは制止した。一つ気になる事があるからだ。
「対戦相手……ローブの男には十分気を付けて、アレは何か秘密がある気がする」
「……そうだな。まあ、何があろうとぶっ潰してやるだけだ」
そう宣言し、今度こそ立ち去ったユノ。だが、ナルヤの不安は拭いきれなかった。
◆◆◆◆◆
一足先に舞台へ上がったユノに、これまでの事がフラッシュバックした。きっと脳が告げているのだろう、ここが正念場だと。
ここで負ければ、彼女は振り出しに戻る。せっかく見えてきた道筋が、また閉ざされてしまう。勝たなければ……弟──ユウの為に!
それから暫くし、ローブの男も現れた。不気味な雰囲気を漂わせた怪しい男だ。ユノは剣を構え、開戦に備える。
審判が現れ、ひとしきり確認を行う。準決勝からは、同時進行する必要がないため、ブザーではなく審判の掛け声で試合が開始されるからだ。
「それでは準決勝第一試合。よーい……始め!」
カウントダウン
17day




