表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

38/89

37 A級vsE級

 観客席からブーイングが起こる。当然だ。不正の筈の魔道具が紛れ込んだだけでなく、それが判明したにもかかわらず、試合が続行されたのだから。


「どうなってんだ運営!」「あの不敬者を排除しろ!」「これ向こうもグルなんじゃねぇのか⁉︎」


 様々な場所からヤジが飛び交い、会場にはゴミやら何やらが投げ込まれていく。


『えー、ただいま魔道具持ち込みの疑いがあった。イテルギ選手ですが、コアが見つからなかったため、魔道具とは認められない事となりました』


 アナウンスを聞き、会場中が騒めきだす。

 魔道具には、コアと言われる魔力を注ぐ部分が必要となる。魔道具協会の規定でも、コアがある物を魔道具と扱うとされている。


 つまり、あの一見魔道具としか考えられないあの物体は、分類上は武器扱いとなる。


「でもそんな事が可能なのか……」

「分からねぇ。だが、アレを正々堂々倒すしかねぇのは確かだ」


 ユノは拳を強く握った。勝ち進めば、ナルヤは決勝、ユノは準決勝でアレに当たる事になる。彼女の方がプレッシャーは強い筈だ。


 そうこうしている内に、Cグループの試合も終了した。次はDグループ、ナルヤの番である。


「次はナルヤのグループだよね?」

「ああ、行ってくるよ」


 気になる事もあるが、今は目先の勝利の方が大事だ。相手はSSランクの草魔法を扱い、A級冒険者としてその名を轟かせるマルクスだ。一瞬たりとも侮れる相手ではない。


 ナルヤは膜用の魔道具を受け取り舞台へ上がる。それに少し遅れてマルクスも現れた。


「俺は言ったよな? 分を弁えろって」


 ギルドをクビにされた時、彼に言われた言葉だ。ナルヤは首肯する。


「はい。でも、諦めたくないんです。例え僕に不相応だとしても!」

「…………そうか」


 マルクスは顔を伏せ、暫しの静寂が訪れる。それからそれから数瞬、開始を知らせる音が鳴り響いた。


「なら!」


 マルクスは顔を上げ、大剣を振り上げ……


「その夢! 終わらせてやるよ!」


 そしてそれを勢いよく地面に叩きつけた。


「ダブルクレーン!」


 割れた地面から、二本のつるが出現し、ナルヤへと襲いかかる。


「シャイニングプロテクション」

「何⁉︎ 魔法だと⁉︎」


 ナルヤが光の結界を張り、迫り来るつるから身を守る。それを見たマルクスが同様しているのが見えたが、今はそれを気にしている場合ではない。


 一時的には凌いだものの、破られるのは時間の問題だ。

 結界が破られれば、間髪なく行われるつるの攻撃を躱し続けなければいけなくなり、一気に形勢が不利になる。


 このダブルクレーンという魔法は、それが厄介なのだ。


「おらおらどうした! 魔法が使えるって言ってもその程度か!」

「今だ!」


 二つのつるが限りなく結界から離れたタイミングを狙い、ナルヤは魔法を解除する。


 あくまでも人間が操る都合上、必ずどこかでタイミングがズレる場面が発生する。そこを狙っていたのだ。


 攻撃を中止しようと考えた時にはもう遅い。ナルヤは、既に発射された二つのつるを躱し、マルクスへの反撃に出た。


 マルクスは地面に打ち付けていた剣を上げ、ナルヤの攻撃をガードする。剣を擦り合わせた二人はせめぎ合いを始める。


「リーフブレイク!」

「シャイニングブレイク!」


「「うぉぉぉぉぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」


 それぞれの剣先から光と草が溢れ、しのぎを削る。

 だが、パワー勝負であれば有利なのはスキルの強い方である。次第にマルクスは押され、大量にあった葉っぱは光に飲み込まれていった。


「まだだぁ!」


 マルクスは両手で剣を抑え、押し切られるのを必死に防ぐ。が、彼は試合開始から一歩もその場を動いていない。つまり、舞台の端に位置したままだった。


「うぉぉぉぁぁぁぁぁぁぁ!」

「がぅぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 彼はなんとか踏ん張って勢いを殺すも、微かに後方へとズレてしまい、とうとう足場を失い、勢いよく舞台外へと押し出された。




カウントダウン

       17day

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ