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36 黒いローブの男

「おめでとー!」

「良い勝負だったよ」


 ユノが席に戻って来たので、二人で称賛を送った。


「いやいや、今回は相手が雑魚だったからな。次からが本番だぜ」


 言って向こうにいるヤスへと目を向けた。ぐぬぬと震えているのが見える。彼はDランク冒険者、ギルド内でも大した実力者ではない。流石に、ユノは相手が悪かった。


「それにしても凄いね。勝負に勝った時、こうピンって何か弾けて……」

「ああ、それは魔道具だね」

「魔道具?」


「参加者には試合前に小さい魔道具を渡されて、それを持っていると、体を小さい膜みたいなものが覆うんだ」


「んで、膜に一定のダメージが入るとそれが弾けて、余分なダメージを逃す。あたしの空炎剣を受けてもアイツに傷一つ付かなかったのはそれが理由だな」


「なるほどー。じゃあ、それが弾けたら負けなんだね」

「そうだね。他には戦闘不能になったり、場外に飛ばされても負けになるかな」


 実際、殆どは魔道具の膜が弾け飛ぶ事によるものだ。たまに場外に飛ばされて負ける例もあるらしいが、戦闘不能になる事は滅多にないらしい。


「まあ、イベントで死者が出たら大問題だし、今はどこの小規模大会でも義務化されてる筈だよ」


 そんな話をしていると、舞台に次の参加者が上がって来た。Bグループの試合のようだ。


「Bグループか、あたしが準決勝で当たる奴らだな」

「確かBグループには、B級冒険者のショウさんがいる筈だ。あの人も油断ならない人だよ」


 B級冒険者ショウは、マルクスのライバルで、ナルヤがいたギルドでも有数の実力者だ。Sランクの水魔法から放たれる攻撃は、あらゆる物を貫くと言われている。


「確か……あの人だ……けど」


 奥の舞台にショウらしき人物を発見する。だが、ナルヤ達の視線は彼ではなくその対戦者にそそがれた。


「なんだありゃ」


 ユノが疑問を声に出した。だがそうなるのも無理はない。ショウの前に立つ男? は、黒いローブで顔を目まで覆い、武器も持たず、無防備な状態で立っている。


「これじゃまるで、倒してくれって言ってるようなもんだぜ」

「そう……だね。ネタ枠なのかも」


 五年に一度の国民的大会であれば、勝つ為ではなく、パフォーマンスする為に出場すら選手も一定数存在する。あのローブの男も、その類の人間なのだろうか。


 ビーという音が鳴り、試合が開始する。最初に動いたのはショウだ。


「ウォーターストリーム」


 エッジから繰り出された水流の竜巻が、ローブの男へと向かい進んで行く。しかし男は一歩も動かない。


「なんだ? パフォーマンスもしねぇのか?」

「いや、何かおかしい」


 ナルヤがそう言った刹那、地面に亀裂が入り、そこから謎の物体が現れた。その物体は現れるや否や、水の竜巻を飲み込んだ。


 体は機械で覆われており、その姿は、龍のような形をしていた。否、正確に言うならば……


「ナルヤ、アレって……」

「ルウの町を襲った風龍そのものだ」


 そう、その姿は、先日町を襲った風龍に非常に酷似していた。だが、その物体の驚くべき部分は他にもある。


 それは、その物体が機械で覆われている事だ。この世界に機械魔法なんてものは存在しない。その上、ローブの男の口元が動いた形跡が無かった。


 シャイニングブレイクや空炎剣のように、魔法を放つ際にはその魔法名を宣言する必要がある。でなければわざわざ攻撃方法を宣言したりしない。


 遠目なので実は小さく動かしていた可能性はあるが、ナルヤ達が見た限りではそのような形跡はなかった。つまり……


「……魔道具である可能性が高い」

「そうだな。あたしも魔道具にしか見えねぇ」


 それを聞いたミユキが首を傾げた。


「魔道具だったら何かあるの?」

「魔道具は使用者の実力に関わらず魔法が使えるから、認められた物以外は大会で使えないんだ」


「つまり、あたし達の目が腐ってなきゃ、アイツは不正してるって事になる」

「でもこんな見え見えの不正なら、すぐに運営が対処してくれる筈だよ」


 しかし、その後も中断される事はなく、その試合はローブの男の勝利に終わった

  

カウントダウン

       17day

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