35 ミユキvsヤス
予選大会は三つのグループに分けられて行う。左がAグループ、左中がBグループ、右中がCグループ、右がDグループだ。
しかし、グループと言っても形だけで、グループ毎に代表者を決める訳ではない。単純に、一試合ずつやっていては時間が足りないので、複数の試合を同時に進行して時間を短縮しようというものだ
「ユノはAグループだね」
「ああ、ちょっくらアイツに焼き入れて来るぜ。……それとナルヤ」
「ん?」
「あたしと当たるまで負けんじゃねぇぞ!」
言って拳を突き出した。それに応えるようにナルヤは拳をぶつける。
「ああ!」
その言葉にニッと笑顔を見せると、ユノは試合会場へと向かった。
「よーし、私達も観覧席に行こっか」
「目一杯応援しないとね」
◆◆◆◆◆
森の中に作られた幾つもの舞台、その右端のフィールドで待機していたユノの前に、ひょろりとした男が現れた。
さっきミユキにしつこく絡んできた男、ヤスである。ユノは観覧席にいるナルヤとミユキに目配せした後、視線を彼に戻す。
それと同時、ヤスから言葉を投げかけられた。
「よーく見たら、お前も見た目だけは悪くねぇな。もう少し性格が良ければ遊んでやっても良かったんだがなー」
「ああそうかよ。生憎、こっちは一ミリもテメェに興味がねぇんだ。一瞬でケリ付けてやるから覚悟しな」
言って剣先をヤスに向ける。ヤスはその発言にイラッと来たのか、露骨に悪態をつくと、腰に装備してあったナイフを抜いた。
「舐めやがって! 後悔させてやるよ、俺に楯突いた事をなぁ!」
ブーという音が森に鳴り響く。試合開始を告げる音だ。
ヤスはユノに向かう事なく、右、左とステップを踏み始めた。見た所スピードタイプ、こちらの攻撃を誘い、生じた隙をついて攻撃を入れるつもりなのだろう。
「円炎剣」
ヤスが炎の円に囲まれた。人一人分がすっぽり入る程の縦幅を持つ、炎の檻である。
ここで空に逃げてくれようものなら簡単に仕留められるのだが、流石は冒険者、それぐらいの事は分かるようだ。
「チッ厄介なもん出しやがって。だが攻撃を受けている訳じゃねぇ。あの娘が攻撃をしたタイミングで逃げ出せば……」
「と、思うよな?」
「何⁉︎」
「炎獄剣」
檻に炎のカーペットが掛かり、唯一空いていた空も塞がれる。炎の牢獄の完成である。
「どうだ。逃げられねぇだろ? まあ、どっかの野郎は強引に突破してきやがったがな」
「クソがぁぁぁぁぁ!」
炎の奥からでも分かる叫び声にニッと笑みを浮かべ、ユノは空へと飛び上がった。
「宣言通り、一瞬でケリを付けてやるぜ!」
彼女は剣を振り上げて叫ぶ。
「空炎剣!」
「ぐぅぁぁぁぁぁぁ!」
放たれた業火をモロに受けたヤス。その周りに覆われていた膜のようなものが弾け飛び、その場にヘタレ込んだ。
「勝負あり! 勝者ユノ!」
辺りから歓声が上がる。ユノは観覧席にいるミユキとナルヤに向け、ピースサインを作った。
カウントダウン
17day




