34 トーナメント
「何だアイツら。人の仲間に手ぇ出しやがってよ!」
去っていく彼らを見て、ユノが不満げに声を上げた。
ナルヤにとっては色々と込み入った事情があるが、彼女から見ればただのチンピラである。当然の反応だろう。
そんな中、大人しくしていたミユキがナルヤへと駆け寄った。
「ねえ、さっきの人ってナルヤの……」
「ああ、冒険者をしていた時に、一緒に仕事をしていた人達だ」
その言葉に反応したユノが言葉を漏らした。
「つまりアイツら冒険者か。通りでガラが悪い訳だ。冒険者なんて時代遅れな職業についてるぐらいだし、脳みそにパンでも詰まってんだろ」
「そうか……そうだよね。時代遅れ……時代遅れか……」
「ユノストップ! ナルヤのメンタルが! ただでさえ大会前で脆くなってるナルヤのメンタルが!」
ナルヤもつい最近まで冒険者だった身だ。今の一言は、ナルヤにとっても痛い言葉だった。それに気付いたユノは「わりぃわりぃ」と謝罪し、言葉を繋げた。
「まあアイツらは大会でぶっ飛ばすとしてだ。大会開始までどうする?」
「私は売店でご飯食べたいかな。ナルヤは?」
「そうか……僕の脳みそはパン……パ、ん? あああ、僕も腹ごしらえしたいかも」
「よーし、なら売店で時間潰すか。ただ、食べすぎて腹を壊さねぇようにな」
◆◆◆◆◆
「エントリー受付終了。トーナメント表が掲示されました」
アナウンスが入り、朝食を取っていた手を止める。
「トーナメント表が出たらしいよ。先に見に行く? ご飯中だけど」
「いや、今行っても混雑で見られないと思う。いつ見ても大丈夫なんだから、少し間を空けても良いんじゃないかな」
「本音は?」
「緊張しすぎて見られる気がしないから、少し心の準備をさせて欲しい」
「ふふっ、ナルヤは素直だなー」
「ほっといてくれ」
ナルヤはやや赤面しながら、手に持っていたバーガーを口に入れた。
ミユキは相変わらず微笑ましそうに見ている。癪である。
「さてと、全員食べ終えたみたいだし、どうなってるか確認するか」
ユノの一言で立ち上がり、仮支部へと向かった。
仮支部では、設置された巨大なスクリーンにデカデカとトーナメント表が表示されていた。二人の名前を探す。
「あっユノだ!」
「どこだ」
「左から二番目だね。って事は、第一試合じゃない?」
「うわマジか、しかも相手の名前」
ユノの名前の横には、ヤスと書かれてあった。そう、さっきミユキに絡んでいた冒険者である。
「まさかこんな早々にチャンスがやって来るとはな。燃えてきたぜ!」
「僕もあった!」
「どこどこ?」
「ほら、右から五番目かな?」
「なら結構後だね。対戦相手は?」
ナルヤは自分の名前の右に目を向ける。一番右がシード枠となるなで、ナルヤの相手は右から四番目の人間である。
「……マルクス」
対戦相手となる右から四番目には、マルクスという文字があった。
「マルクスって確か……」
「ああ、さっきヤスさんを止めた人だ。あのギルドの冒険者達のリーダー的存在だよ」
そしてマルクスは、ナルヤを蔑み出した第一人者でもある。リーダー的存在である彼が始めたのがきっかけで、ギルド全体でそういう雰囲気が流れ出したのは間違いない。
「なんか一回戦目から凄いマッチングだね」
「いつかは当たるんだ。全力でぶつかるだけさ」
「その通り。誰が来ようと捻り潰してやるぜ!」
カウントダウン
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