33 冒険者とナルヤ
二人を見送り、暇になったミユキは、辺りの参加者らしき人物達を観察していた。
「うわーあの人強そうだなー。あっこの人も強そう! ああっこの人絶対に『ふっここは任せて先に行け』とか言う人だ!」
最初はナルヤとユノが勝てそうか心配で始まった観察だが、いつの間にか趣旨が変わっているような。
少し違和感を感じたミユキだが、気にせず観察を続ける事にした。ナルヤ達の為、そうナルヤ達の為である。
「おっ滅茶苦茶可愛い子がいるじゃねぇか。ねーねー君、今一人? 良ければお兄さんと遊ばない?」
後ろから声をかけられ、ミユキは振り返る。そこに居たのは、複数人の男性だ。見た限り年齢は様々で、声をかけたのは、比較的若めの男性のようだ。
「ヤス、今回目的を忘れたんじゃないだろうな」
「まー良いじゃないですかマルクスさん。俺じゃ逆立ちしたってあなたには勝てないんですから。という事でどうかな? 大丈夫、ちょーと遊ぶだけだから」
マルクスと呼ばれた後ろの男性が前の男性を制止した。が、それを意に返さず、尚も勧誘を続ける。
「いや……私は仲間がいるので遠慮しとこうかなーと」
「安心して、君の仲間にはこの人達がしっかり伝えてくれるから」
「いやそういう事じゃなくて……」
そう言って迫ってくる男性に気圧されるミユキ。反論する隙を与えないその口撃に、どうしようかと思考を巡らせるのだった。
◆◆◆◆◆
「はい。以上で大会の登録は完了です。開始まで暫しお待ち下さい」
受付を済ませた二人は合流し、待っているミユキの元へと戻る。
「いやー意外と掛かっちまったなー。もう少し早く終わると思ってたんだが」
「そうだね。ミユキも暇してるだろうし、早く戻らないと……ん?」
ナルヤの目線の先には、ミユキと、複数の人間の姿がある。それにあの装備は……
「おいナルヤ、急いで戻るぞ」
「あっああ」
彼女の身を案じ、急いで駆け寄る。
「安心して、君の仲間にはこの人達がしっかりと伝えてくれるから」
「いやそういう事じゃなくて……」
二人の予想通り、ミユキはナンパされていた。それを確認するや否や、ユノが間に割って入る。
「テメェ、あたしの仲間に何してくれてんだ。ああ⁉︎」
「そっちこそ俺の邪魔すんじゃねぇよ!」
睨み合う二人、だがナルヤはそれよりもその人物達に目を奪われていた。
無意識に言葉が溢れる。
「ヤスさん?」
その声に反応し、ヤスがナルヤへと目を向けた。
「あれ? 誰かと思えばマジックロスじゃねぇか。クビになったって聞いたけどまさかこんな所にいたとはなー。で何? お前もこの子狙ってんの?」
色々聞きたい事はあったが、今はそれよりも大事な事がある。ナルヤはミユキとヤスの間、ユノの隣に移動した。
「いえ、彼女は僕の仲間です。いくらあなたとはいえ、彼女の嫌がる事はさせられません」
「ほーう、魔法も使えねぇ癖に良いご身分じゃねぇか。良いぜ、なら俺が直々に「止めろ!」……マルクスさん」
今にも殴りかかろうという所で、マルクスが止めに入った。ヤスは振り上げた拳を下ろす。
「公衆の面前でそんな事をすれば、ギルドの評判がどうなるか分かってるだろ。お前も、そこのマジックロスみたいにクビにされるつもりか?」
「そうだぜヤス。ちょっとは場を弁えろって」
「その子がタイプなのは分かるけどな」
「まあギルドの評判上げる為に来てるんだし、ここで喧嘩はヤバイっしょ」
「……チッ、分りましたよ。命拾いしたな、マジックロス」
そう言い残し、彼らは受付へと向かった。
カウントダウン
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