32 開幕!グランドマジック
朝日が差し込み、就寝中のナルヤを照らす。
「ん……うーん……ハッ」
光に当てられたナルヤは、勢いよく目を覚ました。んーと背伸びをし、ベッドから降りる。
寝起きだというのに、意識がはっきりとしている。それが緊張によるものか興奮によるものかは分からないが、ベッドの上でぐずらなくていいのは都合が良い。パッと準備を済ませ、部屋を出る。
廊下では、既にミユキとユノが待機していた。
「おう、ぐっすり眠れたか?」
「実を言うと中々寝付けなかった。緊張して」
「あたしもだ」
言って二人で笑い合う。その光景を見て、ミユキが不満げに声を漏らした。
「えー! せっかくお部屋を分けたのにー」
「すまないミユキ。でも体調はバッチリだ。負ける気がしない」
「あたしも最高に気分が良い。今なら誰だって倒せるぜ」
「んー。じゃあ優勝してきたら許してあげる。だから絶対に優勝してね」
言って拳を突き出すミユキ。二人は顔を見合わせ、彼女の腕にくっつけるように拳を出した。そして答える。
「ああ!」「おう!」
◆◆◆◆◆
グランドマジックの予選が行われるのは、ヘルイスの町から少し離れた森の中だ。町でやらないのは土地がないからである。
この大会は、五年に一度行われる国でも最大級の祭り事でもある。それ故参加者も非常に多く、何百という人間がヘルイスの町に集まる。
そんな人数を町で戦わせようものなら、どれだけ敷地が必要になるか分かったものではない。なので、森の中で行われる事となった。
「うわー、凄い人だね」
「こんなにいるのに、一人しか勝ち上がれねぇのか……」
「どうしよう。なんだか自信が無くなってきた……」
さっきの宣言は何だったのか。一瞬で自信を失う二人を、ミユキは「あはは……」と笑いながら見守っていた。
「ほら二人とも。受付が見えてきたよ!」
ミユキが指差す先には、幾つかの仮設テントと、横一列に並べられた机があった。大会の仮支部だ。
ここで戦績等を集計して、町にある支部に送り、そこから更に王都にある本部は送られる。
前に並んでいる机には、受付と書かれた紙が貼ってあり、そこに鎮座している運営らしき人達が、参加者達の相手をしていた。
「私はここで待ってるから、二人は受付に行ってきて」
「分かった。すぐ戻ってくるよ」
ミユキに送り出され、二人は受付へと向かった。
カウントダウン
17day




