30 解析開始
二人はザイの泊まっている研究者用の研究室へと向かった。
「で、デカイ……」
その外観は、数泊利用するだけとは思えぬ程にデカかった。大体一軒家程度である。それが何棟もあるのだから、驚きだ。
「魔法の研究には広いスペースが必要だからね。研究者協会が提供している研究者用の施設はデカく作られているんだ」
「はあー」
ナルヤが感心していると、ザイが扉に手を当てた。
「それは何を?」
「ああ、中には貴重な資料が沢山あるからね。万が一に備えて、防犯には最大限注意を払っているんだよ。この魔道具は、登録したものの魔道具を感知し、自動で扉を開くようになっている」
その言葉が終わると同時、扉の方からカチャッという音が聞こえた。
「さあ、入ってくれたまえ」
「し、失礼します」
ここまで警備を厳重にしないといけない研究者の部屋。一体どんな風になっているのだろうか、唾液を飲み込み、中へと入る。
「……あれ、普通の部屋だ」
てっきり至る所に貴重な研究資料が散らばっていたり、作りかけの魔道具がそこかしこに転がっていたりするのを想像していたので、これは拍子抜けである。
「まだ来てから二日だからね。そこまで汚くはならないさ」
「あははは、そうですよねー」
ナルヤは羞恥で震えそうになりながらも、なんとか返事を返す。人様の部屋を勝手に汚部屋と勘違いしていたなんて笑えない。ナルヤは気まずくなり、目を逸らした。
ギシッ
逸らした視線の先にある。クローゼットから不穏な音が聞こえた。よく見れば、クローゼットがこちらの方へ出っ張ってるような……
「ザイさんあれは……」
「何もないよ。さあ行こうか」
「でもあれ「行・こ・う・か」……はい」
顔は笑顔だが、そこからは言い表しようのない恐怖を感じた。ナルヤは彼の圧に負け、追及を止めた。
「それじゃあナルヤ君、君の剣をそこの魔道具に置いてくれるかい?」
「はい」
ナルヤは机の上に置かれた魔道具に剣を置いた。力が抜ける感覚がする。
「ありがとう。では、早速解析をさせてもらうよ」
ザイは魔道具についてあるボタンを弄り始めた。その魔道具に対する知識がないナルヤには、何をしているかは分からないので、その様子をひたすら見つめる。
「いやはやすまない。退屈だったね」
「いやいや、僕なんて気にせず研究を続けてください」
「そうはいかない。そうだな、わたしの研究の話でもしようか」
そしてザイは語り始めた。彼の行なっている研究について。
カウントダウン
18day