28 隠されし力
「……う……うん?」
重い瞼を開き、なんとか目を覚ます。辺りを見回すが、さっきまでいた平原とは違うようである。どこかの部屋の中だ。
「ナルヤ⁉︎」
「おーう、やっと目覚めたか」
そう声をかけたのはユノとミユキだ。ナルヤは状況を把握すべく、二人に問いかける。
「ここは?」
「近くにあった医療所だ。医者の話によれば、急激に限界値以上の魔力を使うと起こる魔力切れらしい。命に別状はねぇらしいが、念のため回復魔法を掛けてくれたぜ」
「魔力切れ……」
思い当たる節ならある。あの時の聖剣との共鳴。あれが、限界値以上の力を引き出したのだろう。
「ほんと大変だったんだからな。戦ってたらいきなりぶっ倒れるし、町まで運んだは良いものの医療所の場所は分からねぇし」
「あはは……ご迷惑をおかけしました」
「まっ、無事で良かったぜ。本当に」
ユノの弟は今も病で倒れている。そんな中身内が倒れれば、それがフラッシュバックするに違いない。
「ありがとうユノ」
「……おう」
「後ミユキも」
「ブイ!」
言ってピースサインを作る。彼女は相変わらずである。
「じゃあ、とりあえず今日は帰って休んじゃおー!」
「その件なんだけど、一つお願いしてもいいかな?」
逸るミユキを静止し、ナルヤは話を持ちかける。
「今日と明日だけ、宿でのベッドを分けて欲しい。万全の状態で大会に挑む為に」
「あたしも頼んでいいか? 大会で勝つ為に、最善を尽くしたい」
ナルヤは真剣な眼差しで語りかける。それにユノも同調した。大会を勝ち抜く上で、寝不足に陥る訳にはいかない。本来なら異議申し立て出来る立場ではないが、ここは言わない訳にはいかないのだ。
当のミユキはというと、「ふっふっふっ」と不思議な笑らいを浮かべ、得意げに胸を張っている。
「そう言うと思って、今日から三日間、別々の部屋を取ったよ!」
「ほんとに⁉︎」
「マジか!」
思わぬ朗報に、声を上げる二人。ベッドだけでなく、部屋も分けてくれていたとは。ただ旅をするだけなら部屋が同じでも良いのだが、大会前のデリケートな期間は一人部屋の方が色々と助かのだ。
「ありがとうミユキ」
「サンキュー」
「へへっ、もっと褒めて」
そんなこんなしながら、一日目を終えた。久しぶりの一人部屋は、安心はするものの、少し寂しく感じた。あの騒がしい雰囲気に慣れすぎたようである。
カウントダウン
19day




