26 新たなる門出
「で、なんでベッドが一つしかねぇの?」
夜食を済ませ、ミユキが取った部屋を見たユノは、不満げな声を漏らした。
なんだか、昨日も似た光景を見た気がする。
「うーん。節約!」
「「…………」」
ミユキの回答にジト目になる二人。彼女は基本的に出費を惜しまないのだが、何故か宿代だけはケチるのだ。
しかし、ナルヤは持ち金がなく、ユノも弟の治療費の為に出来るだけ貯めておきたいという事で、ミユキが代わりに出している。二人には拒否権がなかった。
「てか、三人用ベッドとかあったんだな」
「たまたまあったんだ。いやーラッキーだったなー」
「本当に節約なんだよな? なんか別の意図混ざってねぇか?」
ユノが懐疑的に聞くも、ミユキは無視して荷物を置いた。これも触れちゃいけない話なのだろうか……いや、これは彼女の趣味だな。
やがて諦めた二人は、大人しくベッドに入った。その夜、中々寝付けなかったのは語るまでもない。
◆◆◆◆◆
「おはよー」
「「お……おはよう……」」
目を擦りながら体を起こすナルヤとユノ。まだぼーっとする頭をなんとか動かしながら、宿を出る準備をする。
「よーし、じゃあ行っくよー!」
元気の良いミユキの掛け声と共に宿を出るナルヤ達。そのテンションに、寝不足の二人ではついていけなかった。
「そういえばもう中継地点の町はないの?」
「うん。次の町が予選会場のヘルイスだよ」
「よーし! ナルヤ、今度こそあんたに勝つぜ!」
「こっちだって、次も勝たせて貰う!」
「なら私は二人とも応援するね!」
こうして新たな仲間、ユノが加わったナルヤ達は次から町ヘルイスへと向かった。
カウントダウン
23day




