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25 ユノの夢

「そういえば、ユノもグランドマジックに出るんだよね?」

「ああ、そうがどうかしたか?」


 夜食を取りながら、ふとした疑問をぶつけてみた。


「いや、ユノも勇者になりたいのかなと」

「まあなりたくないって言っちゃ嘘になるんだが、一番の目的はそっちじゃないんだよな」

「賞金の金貨五十枚か」

「そうそう、少しお金が必要でな」


 そこで、さっきまでは黙々と料理を頬張っていたミユキが会話に入ってきた。


「何か理由があるの?」

「まあな……」


 そう言ったユノの声色は少し暗い。そして、ここまでの経緯を語り始めた。


「あたしの家は結構貧乏でな、理由は親父が家を出て行ってしまったからなんだが、その後は女手一つであたしと弟を育ててくれたんだ」

「良いお母さんだね」


 ミユキの言葉に、ナルヤも相槌をうつ。


「ああ、自慢の母親だ。そんな中あたしが十五になって、SSランクのスキルを手に入れた。そして地元を守る自警団に入ったんだ。三年前の事だな」


 となると、ユノの年齢は十八。ナルヤの一つ上になる。

 それにしてもSSランクのスキルを持っていて自警団か。それだけの力があれば、国の騎士団に入る事も可能だ。余程地元愛が強いのだろう。


「まあその頃までは良かったんだが、半年前、弟が病気になった。それもかなりの重病で、治せる治癒魔法師は、この国でも数人らしい」

「⁉︎」


 ミユキの体がビクリと震えた。心無しか、表情も硬くなったように思う。


「まあそんな凄いとこにお願いするんだから治療費も高くてよ。とてもじゃないが今のあたし達じゃ払えない」

「それが、グランドマジックに出ようと思った理由か」


「だからってトーナメントで当たっても手を抜くなよ? そんなんで勝たせてもらっても嬉しくないからな」

「分かってるよ。手を抜くつもりは無いさ」

「ああ、頼……ミユキ?」


 言われて視線を寄越す。ミユキは何やら考え事をしているようである。さっきまで喋る事よりも食事だった彼女が、食べるのも忘れて考えに耽っている。


「大丈夫か?」

「えっ? あっうん大丈夫。でも少しお手洗いに行きたいかな」


 そう言って席を後にした。しかし、向かった方向は明らかにトイレのある場所ではない。ユノが不思議そうに言葉を溢した。


「なんだったんだ?」

「人には言えない秘密があるみたいだ。そっとしておいてくれってルイさんが言ってた」


「ルイ? まさか勇者ルイか! えっお前勇者ルイと知り合いなの?」

「知り合いも何も、さっき居たじゃないか」

「……えっ、アレって勇者ルイだったのか⁉︎ マジかよー、サイン貰っときゃ良かったー」

「知らなかったんだ……」


 思えばあの時彼女が呼んだのは、ナルヤとミユキの二人だけだった。勇者を視認出来ているのならば、あそこでリアクションがない筈がない。


 ナルヤはルイとの会話をユノに説明した。


「まあとりあえず分かった。ミユキの秘密? に触れないようにしなきゃいいんだな」

「そういう事だね」


 それから程なくして、ミユキが帰ってきた。その表情からは陰りが見えた気がするが、そこに触れる事はなかった。

 



カウントダウン

       24day

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