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21 勇者ルイ

 さっきまでの事があるからか、風龍はすぐに動く事なくナルヤ達を見つめている。警戒してくれる事は有り難いが、この状況がいつまでも続く事はない。


 必ずどこかで仕掛けてくる筈である。そして、その時がナルヤ達の最後となる。スキルのない今のナルヤには、どうする事も出来ない。


「ミユキ、一人で逃げられるか?」

「えっうん、大丈夫だけど……ナルヤは?」

「僕が引きつけて時間を稼ぐ。その間に君はどこかに隠れてくれ」


 この状況で二人が生き残るのは不可能に近い。ならば、まずはミユキを逃し、なんとか森を利用して風龍から逃げ切る。


 まあ引きつけた上に逃げ切るなんて芸当が、あの龍相手に出来るとは思えないが。だが、ナルヤが死んでも、ミユキはひとまず危機を脱する事が出来る。それだけでもやる理由には十分だ。


「そんなの危険だよ。その役目なら私が……私が……」


 私がやると言いたいのだろう。だが、彼女はその言葉を出せずにいる。当然だ、死ぬのは誰だって怖い。


「安心して、僕は自分の命を犠牲にしようとしている訳じゃない。この森のどこかに剣があるのなら、逃げている途中で見つかるかもしれない。そうなった時に、僕が一番適任なだけだ」


「ナルヤ……」

「それに、僕が英雄を目指して旅が出来たのは君のお陰だ。これくらいの恩返しはさせて欲しい」


 それ以降、彼女は何も言わなかった。下唇を噛み締め、必死に言わまいとしている。


 覚悟は決まった。後はタイミングを見計らい、風龍の視界からミユキを外させる。


 三……ニ……一……今!


「シャイニングオーバードライブ」


 ナルヤが飛び出そうとした直後、背後から声が聞こえ、光の本流が風龍へと飛ばされた。


(光魔法⁉︎ まさか……)


 後ろに振り返るナルヤ。そこには一人の男性が立っていた。

 甲冑を着込んだ黄金色の髪と翠眼剣士。相貌は、あの時よりは大人らしくなった気がするが、当時の面影がしっかりと残っている。


 かつてナルヤの村を救った英雄にして、現行の勇者。


「勇者……ルイさん」


 ルイは二本の剣を手に持ちながら、ナルヤ達へと向かってくる。

 よく見れば、左手に持っているのは先ほど無くしたミユキの剣だ。


「やあ、これは君のだろう」

「あ、あっあ、ありがとうございます」


 なんとか返事を返し、剣を受け取る。あの時と同じ、剣に共鳴する感覚が戻ってきた。


「俺が合わせる。君は好きに暴れてくれ」

「はい!」


 攻撃から立ち直った風龍がこちらを見つめている。ナルヤは剣を構えた。


「さあ、反撃開始だ!」



カウントダウン

       24day

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