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21/89

20 マジックロス

「うっ……う……」


 背中に強い痛みを覚えながらも、ナルヤはその体を起こす。

 周りには木々が生い茂っており、奥もそれが続いている事から、恐らく森の中なのだろう。


 何故自分はこんな所に……、順に記憶を辿って行く。風龍が町を襲撃し、応戦したが逃げられ、ミユキが連れさら……


「ミユキ! ミユキだ!」


 意識を無くす寸前。うっすら見えた風龍の足には、まだミユキが捕まったままだった。そして、風龍もこの辺りに落下している筈である。


 ナルヤはミユキを捜索すべく、森の奥へと進んでいった。


◆◆◆◆◆


 ミユキを捜索してからどれだけ経ったか。詳しい時間は分からないが、結構な時間が経過したように思う。


 剣が有れば心強いのだが、風龍に突き刺したままになっているので、この場にはない。


 そして、剣がない影響なのか、今まで湧き上がっていた力の様なものを感じなくなっている。

 まるで、スキルを手に入れる前に戻ったかの様な、そんな感覚だ。


 それからまた暫く進むも、一向に見つからない。


「これだけ探したんだし、そろそろ見つかっても……あれ……」


 ナルヤの視線の先には、何十本もの倒れた木々が見える。あれが風龍の墜落した跡なのであれば、あそこにミユキがいる可能性は高い。


 急いで向かうナルヤ。予想通り、そこには倒れたミユキの姿があった。すぐに駆け寄り、安否を確認する。


 息がある。どうやら眠っているだけのようだ。


「ミユキ!」


 その言葉を聞くと、ミユキはゆっくりと目を覚ました。


「……ん……ナルヤ……そうか、ナルヤが助けてくれたんだ」

「ああ、とりあえず逃げよう。風龍が起きる前に」


 風龍はミユキから少し離れ場所で倒れていた。今がチャンスだとも思ったが、剣がなくなっていた上に、ナルヤの調子も悪い。下手に行動せず、まずは生き延びる事を優先するべきだと判断した。


 ミユキを背負い、風龍から距離を取る。


「ごめんナルヤ。私が捕まったばっかりに……」

「そういうのは後で聞く。まずはここから逃げ延びよう」

 

 風龍がかなり弱っているのは間違いない。町にに戻れば、討伐隊を編成してもらい、一気に叩けば……


「ぎぎゃぁぁぁぉぅ!」


 背後から叫び声が聞こえた。もう目覚めてしまったらしい。


 あのモンスターのスピードから考えて、逃げ切るのは不可能。ならば、ここで撃退するしかない。


 ナルヤはミユキを下ろし、魔法を発動する準備をする。

 まずはあの動きに対応する為に、シャイニングエンチャントで移動速度を上げるべきだろう。


「シャイニングエンチャント」


 その言葉と共に、光がナルヤの体を包……まない。


「シャイニングエンチャントが使えない?」


 他の魔法ならどうだろうか? そう思い試すも、そのどれもが失敗した。


「どうして⁉︎」


 何故突然魔法が使えなくなってしまったのか。まさか、噂のホワイトパニッシュが今起こったのだろうか?


 そう考えたナルヤだったが、その考えはすぐさま否定された。風龍が魔法を使い、風を巻き起こしていたからだ。


 そうなるとますます分からない。ホワイトパニッシュでないとなると何が……


「まさか!」


 そこである仮説が思い浮かんだ。初めてナルヤが魔法を使った時、剣に共鳴する感覚を覚えた。つまり、ナルヤのスキルの発現にはあの剣が必要なのではないだろうか。


 体に違和感を覚えたのも、剣から離れてからだ。この仮説は、あながち間違っていないように思う。


 だが、抜け落ちたのか、風龍の翼に刺さっていた剣はどこかに消えてしまった。このままでは、撃退はおろか逃げ延びる事も出来ない。


 そんなナルヤの事情を知る由もなく、風龍は彼らを視界に捉えた。

 


カウントダウン

       24day

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