19 無謀な突撃
身体を強化して風龍を追っていたナルヤは、地下シェルターから出てきた風龍を発見した。その足には、人間が掴まれているのが分かる。
「ミユキ!」
ナルヤはその名を叫ぶ。風龍に掴まれている人間はミユキだった。
恐らく風龍はナルヤ達と正面から戦っても勝てないと考え、奥にいる無防備な人間を狙う事にしたのだろう。
となると、長居すれば追いつかれる可能性があるため、その場で捕食せず、直ちに逃走すると考えられる。
「逃すか!」
一か八か、ナルヤは足裏に力を込め、勢いよくその場を蹴る。
「シャイニングブースト」
シャイニングブーストは足裏に力を集中させ、勢いよく飛ぶ事で急加速する魔法だ。基本的に突進する用途で使う魔法なのだが、急加速する分反動がある上、一直線にしか飛べないため躱される可能性も高い。言わば諸刃の剣である。
だが、今風龍に追いつくにはこの魔法を使うしかない。ナルヤは剣を前に突き出し、風龍の方へと飛んでいく。
急加速したナルヤは風の膜を勢いよく突破し、風龍の右翼に突撃した。ぶつかった反動で振り落とされそうになるも、必死にしがみつきそれを耐える。
剣の突き刺さった傷口から多量の血が飛び散り、痛みに耐えかねた風龍が「ぎぎゃぁぁぁぉぅ!」と叫び暴れ回る。
そのままミユキを離してくれれば幸いなのだが、振り落とされそうになっている中、しがみつくのがやっとなナルヤには、周りがどんな状況なのかまでは分からない。
荒れ狂う風龍に必死にしがみつくナルヤだったが、それが永遠に続く筈もなく、とうとう剣から手を放してしまい、空中に放り投げ出された。
だが、風龍もまた、バランスが取れずに落下している様である。
しかし、足に目をやると、まだミユキが捕らえられていたのが見えた。
「ミユ……キ……」
そう呟くナルヤだったが、背中に強い衝撃を覚えると共に、その意識を手放した。
カウントダウン
24day




