15 夜の中で
「おーい。ナールヤー」
門の近くまで行くと、大きな声を出しながら手を振るミユキの姿が見えた。迎えに来てくれたようだ。
小走りで彼女の元へと向かう。
「例の頼み事は終わった?」
「ああ。そっちこそ宿は取れた?」
「ばっちりだよ!」
◆◆◆◆◆
「ってさっき言ってたよね」
「だからばっちり取ったよ。二人入れるおっきいベッドの部屋を!」
銭湯で体を洗い、夜食を済ませたナルヤ達は、ミユキの取った部屋の前まで辿り着いた。
だが、想定外な事態が発生。部屋が一つしかない上に、ベッドも共用だった。
部屋が一つな事自体は然程問題ではない。馬車の中で寝た時も、同室で寝ているのと変わらないからだ。着替えに関しても、どちらかが部屋の外に出ればいい。
だが同じベッドで寝るというのは異常事態だ。大体こういうのは恋人同士だとか、そんな感じの人と……
「って事で入ろー」
「ちょっミユキ!」
釣られて部屋の中に入る。中は真ん中にある巨大なベッドがスペースの半分程を占めており、端には小さな机と椅子が備えつけられていた。
それを見たミユキが、子供の様にベッドへ飛び込む。
「ダイビーング!」
「君は本当に元気だなー」
「そう?」
「ああ。ただ僕はもう疲れた。早く寝たいから着替えよう」
「はーい」
◆◆◆◆◆
着替えを終えたナルヤは灯りを消しベッドに入る。ミユキの寝ているベッドに。
動悸がおさまらない。つい数日前まで同年代の女子と話した事すらなかったのだ。それがこの状況である。目を閉じても、横から香る良い匂いが鼻孔をくすぐり、否が応にも意識させられる。
「ねえナルヤ。夜明かりがついてるのも魔力のお陰なんだよね」
こんな状態で眠れるのだろうか? そんな事を考えていると、ミユキが話を切り出した。
「そうだね。魔道具によって電気魔法を循環させる事でみんな電気を使えてる」
「もし魔力がなくなったら?」
「多分どんな災害よりも被害が大きいだろうね」
最近起こっているらしいホワイトパニッシュがそれを物語っている。余波だけでどこの店もナルヤを受け入れられない程に被害を被っているのだから、もし全ての世界でそれが起こったら……想像したくもない。
沈黙が流れる。
「ねえナルヤ」
「何?」
「私、今凄くドキドキしてるんだ」
「ならなんで同じベッドにしたのさ」
ナルヤがそう問うと、「うーん」と考え込み始めた。
「経験……かな」
「経験?」
「こういう事、一生に一度は経験しておきたいでしょ?」
「だからって早過ぎ。こういうのは普通恋人が出来てからするものだから」
そんな当たり障りのない会話をしている内に、自然と眠りに落ちていた。
カウントダウン
25day




