14 悪魔の呼び声
ナルヤから十五メートル程離れた所に、漆黒に彩られた盾が設置される。これが、ザイの言っていた盾の様だ。
ミユキは宿を取る為に先に帰った。ユノも同様だ。なのでこの場には、ナルヤとザイの二人しかいない。
「セット完了だ。思う存分、吹っ飛ばしてくれ」
そう言って距離を取るザイ。ナルヤの前には、漆黒の盾だけが取り残された。
ナルヤは力強く柄を握る。今までは相手が人だったので死んでしまわない程度には抑えていた。だが、今回は耐久テスト。全力を出しても大丈夫な状況だ。
「シャイニングブレイク!」
振り下ろされた剣先から、膨大な光が放たれる。それは一直線に目標へと向かうと、瞬く間にそれを飲み込んだ。
光の筋が消え、かつて盾があった場所には、微かな残骸しか残されていなかった。……やり過ぎたかもしれない。
「すみません。少し強くし過ぎました」
「いやいや、吹っ飛ばしてくれた頼んだのはわたしだ。君は気にしなくていい」
そう言う彼からは、あまり悲しげな表情は見えなかった。自慢の作品が壊れてしまったので申し訳ないと思ったが、杞憂なのかもしれない。
壊れたという事はまだ改良の余地があるという事。それに燃えるタイプの研究者もいるそうだ。
ナルヤが安堵していると、「それより」とザイが話を進めた。
「それ程の実力があって何故今まで注目されなかったのか。見た所君は光魔法の使い手、発現から一週間もすれば君の噂が流れてくる筈だ」
「ああ、それは……」
ナルヤは今までの出来事をザイに話した。それを聞いたザイが笑い声を上げる。
「ハッハッハ! そんな物語の主人公の様な人生を歩んでいたのか」
「まあ……はい」
物語の主人公の様と言われ、少し照れてしまう。
「わたしの人生も大概だが、君の人生もなかなかに波瀾万丈だね」
「そう言えばザイさんは魔法研究者をしているんですよね。何の魔法を専攻しているんですか?」
魔法研究者は魔法全般を研究する人物達の総称。細かく分類すれば、炎魔法研究者や水魔法研究者など、多くの種類が存在している。
「わたしは闇魔法研究者」
「闇魔法?」
そんな魔法を使う人間を聞いた事がない。新種の魔法なのだろうか?
「まあ簡単に言えば魔王が使っていた魔法だ。もしまた魔王が現れた時の為に対策をしておこうと思ってね」
「凄い。魔道具作りだけでなくそんな魔法まで研究していたなんて……」
「少し褒め過ぎだ。まあ……っと、もう日が沈む時間か。これから会食があるのでここで失礼させてもらおう。では」
そう言って駆け足で町へと戻っていった。帰る時まで突然な男だった。そう言えば、報酬が出ると言っていたような……
「まあ、気にしても仕方ないか」
名の知れた研究者と話せただけでも満足だ。ミユキも待っているだろうし、そろそろ町へ戻った方が良さそうである。
そう思い、後を追いかけるナルヤだった。
カウントダウン
25day




