12 手合わせ
ナルヤ達がやって来たのは塀の外にある平原。ナルヤと女性は、間隔を空け向かい合っている。
「馬車旅をしてるとどうも身体がなまっちゃいそうでな。ちょうど相手してくれる奴がいないかなって思ってたんだ」
「それなら大歓迎ですよ。僕もちょうど相手が欲しかったんです」
スキルを手に入れてから、ナルヤはまともな対人戦をした事がない。一応どんな魔法を使えるか、どんな戦法を取ろうかなど、旅の合間に確認、考案したりしたものの、実践をするかしないかは大きな違いだ。
一応モンスター相手に試してはみたものの、ここら辺のモンスターでは相手にならなかった。過去の苦戦ぶりが嘘の様である。
「そういやまだ名前聞いてなかったな。あたしはユノ」
「僕はナルヤ。そこにいるのがミユキです」
「イェーイ」
ミユキがピースサインを取る。
「ハハハ、ならミユキ。審判を頼むぜ」
「任せて。背中がついたら負けで、対戦フィールドはこの平原。時間制限はなしだよ。それではレディ──」
剣を構え、開始の合図を待つ。二人、そこにはさっきまでの騒々しさはなく、辺りは緊張に包まれていた。その静寂を彼女の声が鳴り響く。
「ファイト!」
「シャイニングスラッシュ!」
「大炎剣!」
両者の魔法がぶつかり合い、衝撃により砂埃が撒き上がる。ナルヤはすかさず追撃を行う。が、その一撃は一歩届かす、大剣により防御された。
カウンターを喰らってはひとたまりもない。すぐに後ろに引き下がり、体勢を立て直した。
「やるなあんた。その剣撃、中々のもんだよ」
「そちらこそ。全然隙がないですね」
英雄に憧れた日から、ナルヤが剣の修行を怠った事はない。スキルを得た直後は魔法による恩恵が強すぎて実感が湧かなかったが、今なら分かる。あの日々は無駄ではなかったと。
「シャイニングストライク」
「斬炎剣」
再び両者の魔法がぶつかり合う。だが、今回はそれだけではない。
さっき、彼女は即座に追撃を行わなかった事から、彼女の魔法はナルヤのものより反動が大きいと予測出来る。
勿論、それが油断を誘う為の罠や、こっちの動きを窺っていただけの可能性もあるが、そもそもナルヤのスキルはSSSSランク。魔法の威力ならこの世界で最も強いのだ。
ならば、向こうの反動が大きいと捉えるのが一番しっくりくる。
「シャイニングエンチャント」
そう唱えると、ナルヤの体が微かな光を帯び始めた。
技のぶつかり合いの直後は相手の攻撃がこない。だが、追撃はさっきの様に防がれる可能性が高い。ならば、その合間に付与魔法を使う事で、それ以降の展開を有利に進めればいい。
砂煙が晴れたが、ユノの姿がない。向こうもこの間を利用して、次の手を打ったようだ。だが、ここは平原、身を隠せる場所なんてどこにも……
「空か!」
慌てて見上げるナルヤ。しかし気がつくのが遅かった。彼女はもう発動体勢を整えている。
「空炎剣!」
業火の剣が振り下ろされ、地面に爆発が起こる。さっきまでナルヤがいた場所に巨大なクレーターが出来流た。
「……いない⁉︎」
落下しながら、跡を確認したユノだが、ナルヤの姿が見当たらない。流石にあれ程の魔法を使う者がこんな簡単に死ぬとは思えないが、空でも飛んでいない限りこの平原で隠れる場所など……まさか!
「シャイニングブレイク」
ユノの真下で待機していたナルヤは、その魔法の名を呟く。
彼女は最初の競り合いでナルヤの大体の移動速度を把握していた。だからこそ魔法を避け切れないと思ったし、ましてや真下まで移動しているとは思わなかった。
だが、彼が先程使っていたシャイニングエンチャントは、移動速度を速める効果がある。ナルヤの体感だと二倍程だ。
それにより彼女の計算が狂い、大きな隙を与える事になった。
「くっ!」
彼女が防御体勢を取るがもう遅い。光を纏った一撃が剣越しに彼女へと伝わる。その衝撃のまま吹き飛ばされ、背中を地面に打ち付けた。
「勝負あり! 勝者ナルヤ」
カウントダウン
25day




