10 それは運命【ギルド視点】
「で、ギルド中の冒険者を集めて何の用だ? ギルド長」
応接室に入りきらない量の冒険者が二階に集う。こんな事態はギルド創設から今まで一度もなかった。
冒険者達のリーダー格、Aランク冒険者のマルクスの問いに、珍しくソファに座らず、思い詰めた顔のサイハンは答える。
「これからお前達にはグランドマジックに出てもらう」
「報酬は?」
「ない」
「ふざけんな」「報酬なしだと?」「そんなので動くとでも思ってんのか」
周りの冒険者からヤジが飛ぶ。マルクスがそれを止める。
「俺達にそんな事頼むってことは何か理由があるんだろ? それが聞けない限りは引き受ける事はできないな」
「良かろう答えてやる」
サイハンは話した。新しく出た魔道具によって今後更に依頼が減るであろう事、このままでは大量にリストラをしなければいけない事。それを防ぐには策を打たなければいけない事を。
「つまりグランドマジックで功績を残し、ギルドの知名度を上げようって事か」
「ああ、明後日までに出ればギリギリ間に合う。至急準備をし、予選会場である『ヘルイス』へと向かへ。行かなかった者は真っ先にクビする!」
「「「「「…………」」」」」
サイハンに気圧される冒険者達。察していた。彼らも生活がある。クビがかかっているとあれば、従わない訳にはいかないと。
静寂の空気に包まれる中、最初に切り出したのはマルクスだった。
「俺らもギルドが潰れるのは困る。だから一つ提案だ。旅の資金の二割をそっちが負担してくれ。流石にギルドからの支援無しじゃ面目が立たんだろ」
「分かった。旅の資金の二割を負担しよう」
サイハンとマルクスが示し合わせたかのように円滑に取引を終わらせていく。別に仕組んでいた事ではない、マルクスはサイハンに呼ばれた時から、大まかな予想は付いていたのだ。
そしてサイハンも、この話をすれば少しの援助は要求されると踏んでいた。
マルクスに釣られて他の冒険者達もその条件で承諾していく。
かくして、冒険者達はグランドマジックに出場することとなった。ギルド存続の最後のチャンスを掴む為に。
だがその希望が、つい先日追放したナルヤによって打ち砕かれるとは、この時の彼らには知る由もなかった。
カウントダウン
27day