鉄道員
1956年のイタリア映画です。
浅田次郎先生の「鉄道員」と書いて、ぽっぽやと読ませる作品があり、こちらも高倉健さんの主演で映画化されたが、今回取り上げるのは、それとは全く関係ない、モノクロの古い映画だ。
これは気が短くて頑固な初老の鉄道機関士と、その家族の哀歓を描いている。
しかし、物語をここに書いたからといって、読者の方々にとって面白いものになるかどうか分からない。
もちろん物語無くしては、この映画は成り立たないのだが、この映画は登場人物一人ひとりに背負っている人生があり、かけがえのない生活がある。人と人との繋がりと断絶、そして確執と和解、そうした機微を感じ取り、そこに忘れてはならないカルロ・ルスティケッリの音楽が重なって、はじめて共感が生まれると思うのだ。
そういう意味では、ただ物語だけを追って、読者の皆様につまらなそうなどと感じさせてしまうようなことがあっては、この映画に対して申し訳なさすぎるというものなのだ。
この作品を見ていると、昔淀川長治氏が言っていたが、日本もイタリアも何も変わらないという気がする。
家族があり、切っても切れない絆があり、そうした生活の中に様々な喜怒哀楽がある。
この映画は、そうしたどこにでもありそうな一家を描いて深い感動を呼ぶ。
ここからはちょっと余談になるが、実はこの映画、私にとって涙腺崩壊ナンバーワンの映画なのだ。
初めて観たのは小学校六年生の時で、その時はぽろぽろぽろぽろ涙を流した。
今回随分久しぶり(20年ぶりくらい)に観て、やっぱり涙なくしては観られなかった。
しかも60年以上もまえの映画なのに、ちっとも古いと感じられなかったからすごい。
この映画で主役を務めているピエトロ・ジェルミは、ここでは監督も兼ねている。
是非おすすめしたい一作だ。




