透視23 決闘!ってお話
三日振りの更新です~(//∇//)
翌日の朝、ミアさんはいつも通りの笑顔だった。そして俺の今日の決闘の事を心配してくれた。決闘の時間は今日の放課後。場所は学院の競技場だ。
学院内でも俺とウィリアムの決闘の話題であちらこちらで盛り上がっている。廊下を歩いていると
「ウィリアムがあのアベルに勝てるのかね~」
「ギフトは禁止なんだろ?」
「ギフトを使わなくても、あのリックにアベルは勝ったらしいからな」
「じゃあアベルで決まりだな」
とか
「ねえねえアベル君の決闘見に行くう?」
「え~~~ッ!また裸見られちゃうんじゃない!?」
「ギフト使わないみたいだよ。眼鏡してるから大丈夫だよ」
「でもほら、この間は寮で『眼鏡を食堂に置き忘れたのはわざとかも事件』があったじゃない」
「あの時は吃驚したよね~。アベル君が眼鏡無しで廊下をフラフラ歩いてるんだもん。私、見られちゃったかも~」
「私もだよ~」
「「アベル君って変態だからね~」」
とか……ってオイ!廊下で人を変態呼びするのは止めて下さい!あの時は本当にうっかり忘れたんですよ~!ごめんなさい!
♢
放課後の競技場はほぼ満席だった。学院始まって初の決闘という事や、俺が魔眼を使わないって事で、女子生徒も安心して見る事が出来るからだとか?……何だか切ないな俺。
競技場には幾つもの白い遮蔽物が設置されていた。広い所で20m、狭い場所ではかなり密集している。昨日迄は無かったからこの決闘の為に設置されたようだが何でだ?
そしてウィリアムだ!俺とは20m近く離れて対峙している。満面の笑みがムカつく!やられた感が満載だ!
俺は学院の学生服に片手剣。対するウィリアムは顔以外はほぼフルプレートの鎧に右手には剣、左手には連射式クロスボウを握っている。顔が無防備なのは頭への強打は禁止行為だからだろう。
「おや?君は随分と軽装だね~」
「お蔭様でね!」
ニヤニヤ笑うウィリアム。
「僕は言ったよね?禁止事項はギフトの使用のみってえええ」
ニヘラな勝ち誇った笑み!ああそうでしたね!武器も防具も魔法も制限無かったよな!
観客席もガヤガヤとしているがウィリアムが違反行為をした訳では無い。多分、観客席のリックは『汚ったね~!』って言っていると思うけどね。
「二人共いいか?」
立ち会いの先生が俺とウィリアムの中間位置で始めの合図を告げた。
ウィリアムは左手のクロスボウを即座に撃ってきた。距離はあるが俺は右手の遮蔽物へと身を躱す。
俺の利点は軽装な事だ。遮蔽物を使いながらウィリアムに近付く。
ウィリアムは連射式クロスボウを三発撃った所でクロスボウを捨て、剣を両手で握りしめる。
えっ!
重装備のウィリアムが軽快に走ってくる。って言うか速いィィィ!?
アレだけの重装備にして有り得ないスピード!
「アハハハ!我が家に隠されていた秘蔵の鎧だよ~!素晴らしいだろう田舎者オッ!」
マジックアーマーか!?
近接するウィリアム!俺の剣とウィリアムの剣が金属音を立て火花を散らし打ち合いを重ねる。
流石は貴族だ!流れる様な剣裁きだ!とはいえパターンが少ないかな?数合重ねる中でウィリアムの癖を見極める。
リックやローランドの様な実践的な剣では無く、型にはめられた剣裁きだ。此れならと思っていたら俺の剣が悲鳴を上げ始めている。
受け流していたつもりだが、どうやらウィリアムの剣はただの剣ではなさそうだ。鎧だけでは無く、剣もマジックウェポンかよ!
俺は一旦距離を取り、剣を正眼に構える。刃毀れが酷いな。
「アハハハ!逃げたな田舎者!謝るなら退学だけは許してあげるぞ!」
「いや、其れは遠慮しとくよ」
入学してまだ間もないのに学院辞めて帰ったら婆さんに殺されかねないからな。
「後で後悔するなよ!」
ウィリアムが上段から斬り掛かってくる。脇の下には当然装甲は無い。ウィリアムの剣が振り降りる前に脇の下に突きを打ち込む。
「ゥワギャアアアアアアーッ!」
カウンターで入った俺の突きだが、鎧下のアンダーシャツも防刃性が高く貫通はしなかった。しかし悲鳴と共にウィリアムは後方へ吹き飛び、転がりながら遮蔽物に激突した。
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いいいいいいい~!」
右脇の下を左手で押さえ悶絶している。見ていて可哀想になってくるが、決闘だから……いいんだよね?
立ち会いの先生も「ウィリアム、終わりにするか?」と確認したが、「わ、私の勝ちなら終わりにしてもいいぞ」と相変わらず訳が分からない。この状況でお前の勝ちは無いだろ!
ふらふらと腰砕けで立ち上がるウィリアム。しかしその瞳は俺への怒り辛みで殺気だっている。ウィリアムの口から血が流れていた。転倒した時に口の中を切ったようだ。
「よくもよくもよくもよくもよくもオオオッ!」
叫ぶウィリアムの口から流れた血が鎧に付き消えた。えっ!?消えた?ウィリアムの鎧が赤く光?
ウィリアムが剣を振り翳し突っ込んでくる。速い!?襲歩程の速さでは無いが、その速さに戸惑った俺はウィリアムの剣を剣で受けてしまった。
金属音と共に俺の剣が半ばで砕ける。更に追い打ちをかけるウィリアム。その剣は体捌きで右に交わし、空いた顔面を左拳で殴り付けた。
「グハアッ!」と蹌踉めき鼻血を巻き上げて後退るウィリアム。
「き、貴様あああ!審判ッ!反則だッ!頭への強打は反則だあ!」
立ち会いの先生は首を横に振る。頭への強打は武器による致死性の強打だ。鼻血パンチぐらいじゃ反則にはならない。
左手で鼻を押さえるウィリアム。指の隙間から鼻血が滴り落ちる。そして鎧に落ちた鼻血は鎧の中に消えていく?鎧が赤黒い光を放つ?
「貴様貴様貴様貴様貴様貴様貴様貴様あああああああああ!」
鼻血を押さえながらウィリアムが吼える。そして赤黒い光を放った鎧から6本の黒い触手が俺に向かって高速で伸びてきた!?
咄嗟に折れた剣で受けるが衝撃で俺の体は吹き飛ばされる。受け身も取れぬままに遮蔽物に激突。背中から身体中に衝撃が走り一瞬呼吸が止まる。頭をぶつけた反動で口の中を噛み切り唇から血が流れた。
俺を狙った触手は遮蔽物を砕いた後にウィリアムの元に戻る!?
「えっ!?」
触手はウィリアムの両耳、両肩、両腿に突き刺さった!?
「ギヤアアアアアアアアアアアアアッッッ!」
悲鳴を上げるウィリアム。競技場の観客席でも悲鳴が上がっている。何だ?何が起きた?
ウィリアムに突き刺さった触手が、どくっどくっと波打つ。……血を吸っているのか?ウィリアムは剣を手放して両手で頭の触手を抜こうとしている。
「きゅ……吸血装甲だあ!!!」
立ち会いの先生が走ってウィリアムの元に駆け付け、頭に刺さる触手をウィリアムと共に引き抜こうとするが……。
「!!!」
先生の腹を貫通して四本の触手が大量の血を撒き散らしながら飛び出した!観客席は悲鳴の嵐と化し、多くの女の子達がその惨酷な状況にバタバタで気を失っていく。
「止めろウィリアムーッ!」
虚ろな瞳のウィリアムが此方を見る。先生の体から触手が抜け、事切れた先生がドサッと崩れ落ち倒れた。
「……コロ……ス……」
呟いた瞬間に俺に向かって胴鎧から生えた四本の触手が矢の様な速さで伸びてくる。遮蔽物の裏に滑り込み身を隠すが、触手は俺を追いかけ遮蔽物に突き刺さり貫通する。身を低くしていた事が幸いし頭の真上を触手が通り過ぎた。
今がチャンスと思い遮蔽物から飛び出す。
「コロスコロスコロスコロロロロロススススス!!!」
ウィリアムの両手から触手が伸びて俺を狙う。
「クソ!」
遮蔽物に身を隠しながら時計回りに走り続ける。胴鎧の触手も俺を狙って伸びてきた。計六本の触手は次々と遮蔽物を破壊していく。
見ればウィリアムの足元に倒れている先生からは、大量の血が流れ血の池を作っていた。このままでは先生の命が危ない。
俺は紫色の魔眼封じの眼鏡を投げ捨てる。
「加速視!!!」
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