透視22 あれ?ミアさんのギフトって何だっけ?ってお話
学院長室を後にして寮へと帰宅した。学院長先生が「生徒会長は少しお話があるから残って」と言い、新生徒会長のミアさんが「え、今日は用事が……」と渋ったが、「直ぐに終わるわよ」と言われ渋々ミアさんは一人残った。
♢
ミアさんは中々帰ってこなかった。腹減った~。先に食事するのも気が引けたので部屋で待っていたのだが、しかし時計を見れば七時を過ぎている。
「ただいま~。もう姉様ってば少しとか言って2時間も話す………………」
俺達を見てミアさんが固まった?
「あ……あなた達……何をやっているの?」
俺達、つまり俺とソフィアさんに向かって質問をしているらしい。
「何ってダンスの練習だが?」
ミアさんが帰ってこなかったので、代わりにソフィアさんがダンスの練習を買って出てくれたと言うか、押し込んできた的な?
ミアさんの肩が何故かぷるぷると震えている?
「ゾブィィィアアアアアア~~~」
「ヒッ~」
み、ミアさん?な、なんか目が怖いよ?
「なあああ~んで、あなたがあ~、此処にィィィ~、いるのかしらんんんんん?」
「え、あ、そのですね……、アベルさんがだ、ダンスを…………」
「ダンスををを???」
「み、ミレリア様とだ、ダンスの練習……予定……みたいだったんですが……」
「……ですがあああ何かしらああああああん」
「み、み、ミレリア様……な、な、中々帰ってこなかったみたいだし……」
「ほおおおおおお~」
「が、学院長先生お話し……も、盛り上がっていた……みたいだし……」
「ほおおおおおおおお~~~」
「わ、私ったらほら……1キロ先の……針が落ちる音とかも……聞こえてたり……とか?」
「へえええええええええ~~~~~」
「じ、時間が勿体ないかな~かなかな~みたいな~?かな?」
「其れで胸元の広おおお~~~い素敵なドレスを上げて寄せて着ているとおおお~?」
「ヒッ!い、いえ、その、ぱ、パーティーとか、その、み、皆さんもっと上げて寄せてええ~で、す、凄いから~」
「凄いからああああんんん?」
「あ、アベルさんには、そ、そう!実績訓練!実績訓練何ですよ!!!…………ヨ?」
「ゾブィィィアアアアアア~~~ん、ちょおおおっと来なさあああい」(ニコニコ)
「ヒイイイイィィィ~~~」
ニコニコ笑っているミアさんに涙目のソフィアさんが連れて行かれてしまいましたとさ?いや、とさっじゃなくて飯いい~~~!!!腹減ったぞミアさ~~~ん!!!
♢
「流石ミアさん、ダンス激ウマだな!」
「ま、まあね」
夕食を食べて部屋でダンス練習の再開だ。ソフィアさんはその後戻っては来なかった。
ミアさんにソフィアさんの事を聞いたら満面の笑みで「ソフィアが後は宜しくと言っていたから気にしなくて大丈夫ヨ」と言っていた。
うん、きっと大丈夫なんだよな!うん!うん!
「アベル……」
「どうした?」
「明日……本当にウィリアムと決闘するの?」
「まあ、そうだな」
「……怪我とかしないでよね」
「看護治癒士が付くから大丈夫だろ?」
「そうじゃないわよ!心配って事よ!」
「心配してくれるのか?」
「…………る、ルームメイトだからね」
ミアさんは顔を赤くしてぷいっと横を向いてしまう?
「そうか、そうだな。ミアさんは優しいな」
「…………違う……。私は……戦いが怖いから…………」
得てして女の子はそういう者だろ?幼なじみのミーシャやきっとレベッカさんは違うだろうが、サリーやコレットさんはそんな感じだしな。
「あの時も……あの男に襲われた時も……怖くて戦え無かった……」
「いや、あの男は特別だよ。気にしない方がいい」
するとミアさんは首を横に振った。
「……違うのよ。怖いのは私……私の力……」
「ミアさんの力?」
そういえばミアさんのギフトって何だ?聞いて無かったな?
「ミアさんのギフトの力か?」
こくりと頷くミアさん。
「ミアさんのギフトって何だ?」
「…………………………いせい」
ボソボソと言ったのか、上手く聞き取れない。
「悪い、もう一度言ってくれないか?」
「……雷聖……」
俺の耳がおかしいようだ。雷聖と聞こえたが其れは有り得ない。雷聖とは伝説級のギフトだからな!
「すまん、耳がおかしいようだ?もう一度言ってくれないか?」
「雷聖よ!雷聖!雷聖なのよ~~~!!!」
「えええええええええええええ~~~ッ!」
『きゃああああああああああ~~~』
思わず大声を上げてしまった。そして今、女子寮内で女性の悲鳴が聞こえたが?
「……今の悲鳴はソフィアね!もう!あの子ったら聴き耳たててたんだわ!」
「ソフィアさん?聴き耳?」
「ソフィアのギフトは超聴。遠くの音を聞き分けるギフトよ。ルフィアもね。多分アベルが大声出したから吃驚したんだと思うわ」
ソフィアさん……盗聴か……。怖いな……。
「超聴か。其れも凄いが、ミアさん!雷聖ってマジか!?」
俯き頷くミアさん?何やら肩を落として元気が無い?何でだ?雷聖と言えばこと攻撃に於いては剣聖をも上回る超攻撃型ギフトだ。お伽噺に出てくる雷聖の戦士はどれもカッコ良くて凄まじい力で強大な魔物を退治していた。
「雷聖のギフトホルダーって伝説級じゃないか!凄えじゃん!!!」
「…………凄すぎたのよ」
俯いたままのミアさんがぼそりと零した言葉。ミアさんはミアさんの12歳の儀に起きた事件を話してくれた。
「12歳の儀で私に雷聖のギフトが授かった時には、父も母も兄姉達も、そして私も凄く喜んだわ……。当代にはいない雷聖のギフト。伝説級のギフトがリムフィリア家の娘に授かったのだから当然よね。
私は父に連れられて領内のペルシナ草原地帯に行ったわ。私のギフトの力を見る為に……。
燥いでいた私は何もかも考えていなかった。雷聖の力を使える。それだけが嬉しかった。そして使ったわ。雷聖の畏るべき力を……。
晴れた空だったわ……。草原地帯は青々とした草葉が爽やかな風にゆれ、鳥や蝶達が空を飛んでた……。気持ちいい草原だったのよ……」
泣いていた……。ミアさんは肩を震わせ泣きながら俺に語る……。
「雷聖の力……。晴れた空に突然現れた雷雲……。今までに見た事も無い暗く重い怖ろしい雷雲……。その雷雲から落ちた稲妻は轟音と共に草原地帯を消し去ったわ……」
俯いていたミアさんが顔を上げて、俺の制服をギュッと握りしめる。瞳からは大粒を涙が流れる落ちていた……。
「ねえアベル……。ペルシナ湖って知ってる?三年前まではペルシナ草原って呼ばれていた場所にあるのよ…………。
あの穏やかで広大な草原は一瞬にして蒸発したわ!私の雷聖の力で!こんな怖ろしい力!誰が使うの!誰に使うの!無理よ!私には使えない!!!
アベルがあの男と戦っている時も使えなかった!アベルが死にそうになってるのにだよ!使ったら!雷聖の力を使ったらこの街が亡くなるから!
やだよ!こんな力やだよ!いらない!私にはいらないよーーー!!!」
そう言ってミアさんは俺の胸に顔を埋めて、震えながら大きな声で泣いてしまった。
大きな力……。畏怖されるギフト。
デビルアイの魔眼やギフトイーターを生み出す喰技のギフトがそうであるように、雷聖のギフトも……力を扱えない者が持てば身を……いやこの国を滅ぼす…………。
俺はミアさんを優しく抱きしめた。震えが少しでも治まるように……。
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