透視15 俺が戦う理由は……ってお話(第一章最終話)
ミアさんが瞳を見開き俺を見ていた。
俺に突き飛ばされ、芝生に転がり倒れたソフィアさんも呆然と俺を見ていた。
俺の胸には奴の剣が深々と刺さり、突き抜けた背中からは血がボタボタと流れ落ちる。
「君から来てくれるとは嬉しいね」
「時間が無かったんでね……」
「どうやら僕の勝ちみたいだね」
男は爽やかなイケメンスマイルでニヤリと笑う。俺は胸の痛みに耐えて男の右腕を左手で力強く掴んだ。
「そのセリフは俺が死んでから言ってくれ」
俺は右手のダガーで男の顔を一突きして男を殺した。そして男の頭が霧散して、男はその場で甦った。
「き、きさ……」
未来視を使い男の甦りのタイミングで頭を刺して殺す。
「……離せ」
殺す。
「……手を」
殺す。
「……離せ」
殺す。
「……クソッ」
殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!
男の切り札であった時間停止では此の状況を打破出来ない。時間停止は確かに強い。時間停止中は自由に動ける。しかし今の状況では何も出来ない。時間停止中での魂の回帰が使えない事は今での戦闘で分かっていた。更に時間停止中は自分以外の非干渉物は動かす事も、壊す事も、殺す事も出来ないからだ。
だから俺は此の左手だけは絶対に離さない!此の左手には俺の命の最後の力が宿っている!絶対に離さないからなァッ!!!
未来視を使い男の復活のタイミングで男を殺す!何度でも殺す!殺す!殺す!殺す!
「……バカな」
殺す!
「この僕が……」
殺す!
「……止めてく」
殺す!
「……や……」
殺す!!
「………………」
殺す!!!
俺は甦らなくなった男の首にダガーを深々と突き刺した。既に俺の血は背中だけではなく、胸の前からも大量に流れ出ている。
何故俺はここ迄頑張って立っていられたんだろう?
何故俺は自分の命を掛けて戦ったんだろう?
学院に来て僅かしか立っていないけど楽しかった。一人で山にいた時よりも何十倍も楽しかった……だから……。
ミアさんも……ソフィアさんも……無事だ……。
「よか…………た…………」
♢
目覚めた部屋は俺の二段ベッドでは無かった。……この部屋は……学院長先生の部屋か?
生きてた……………………………………。涙が瞳から自然と零れ落ちた。生きてたんだな俺………………。
「アベルさん!」
寝ている俺の目に青い瞳に空色の髪の毛の女の子が映る。
「アベルさん!大丈夫ですか!」
「……あ、うん……、えっと……ルフィアさん?」
「ソフィアです!ソフィアですよアベルさん!」
「ゴメン、ソフィアさん。……俺は……?」
すると部屋の扉が開きミアさん、コレットさん、ルフィアさんが入って来た。
「アベル~~~~~!」
ミアさんが寝ている俺に覆い被さって来た。俺の頬にミアさんの頬が重なる。ち、近いよミアさん!?
そして俺の頬がミアさんの涙で濡れた……。
「……俺……生きてたんだな……」
俺の目からも涙が流れミアさんの頬を濡らした。ミアさんは俺の耳元で大泣きに泣いている……。
俺はブランケットから手を出してミアさんの頭を優しく撫でた。
「ミアちゃん!アベル君は怪我が治ったばかりだから胸に乗っちゃ駄目よ!」
「……あ、……ゴメン。痛かった?」
あれ?胸は痛く無い?ミアさんが俺から離れたので、半身をベッドから起こして胸を撫でる。
「……痛く無い……な?」
「コレットが治してくれたの。コレットじゃなかったらきっと治せなかった」
コレットさんが?コレットさんを見るとニコッと笑ってくれた…………ガッ!?
「な、なあ…………」
「なあにアベル?」
ベッドの脇に立つミアさん、その隣のコレットさん、ソフィアさん、ルフィアさん…………。
眼福です!!!
「俺の眼鏡は?」
みんなの顔が見る見る林檎のように真っ赤になっていった。
「アベルの」
「アベル君の」
「アベルさんの」
「アベルの」
「「「えっちいいいいいいいいいい!!!」」」
第一章終わり迄何とか書けました!皆さんからのブクマ登録&評価★&ご愛読PV1000件越えのお陰です(//∇//)
まだブクマ登録未完の方、ご評価まだの方は、第一章終了ご祝儀で登録頂けると嬉しいです(//∇//)
次話からは生徒会選挙が始まります。引き続きよろしくお願いします~(´▽`)ノ




