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chapter1: 突然ですが死にました★

白い光に包まれた空間で俺は絶世の美女と2人っきりだ。男として嬉しい状況と言えなくないが、女性の背中には純白の翼があった。女性の雰囲気…… 。オーラはまさに神々しく、ここが現実の世界ではないとすぐに理解できた。


「初めまして! 佐藤さとう 愛梨栖あいりすさん。あなたはお亡くなりになりました。

ですが不安に思うことはありません! あなたの生前の善行は認められ異世界へ転生する権利を得たのです」


立派な双翼と黄金に光輝く髪を揺らしながら、女性はとても美しく優しい声で頭に直接響くように語りかけてくる。


佐藤さとう 愛梨栖あいりす。それが俺の名前だ。昔から『女みたいな名前だ』とよくからかわれ、中学では変な名前が原因でいじめられたこともある。


中性的な顔立ちをしているならまだ救いがあった。俗に言う原宿系だろうか? ジェンダーレスな人種として受け入れてもらえたならまだよかった。だが、俺はバリバリの秋葉原にいるオタクな容姿だった。


あとは想像してほしい。

むさ苦しいおっさんが女の子みたいなかわいらしい名前をしている。ネットだったらオェー鳥が鳴いている頃だろう。


「お、おれはやっぱり死んでしまったんですか? そ、それに。こ、ここはどこですか? 転生って。俺が…… ですか? 」


自分の発した声が別人のように高く、まるで少女のようにか細く聞こえた気がした。きっと気のせいだろうと湧き上がった疑問を頭の片隅へ追いやる。

そうでもしないとこの状況に、頭がオーバーヒートしそうだった。


「急に死んだとか。転生が―― 。そう言われて混乱するのは無理もありません。

順を追って説明したいところですが、残念ながら時間もありません。

今言えるのはあなたは()()()()()()()()()ということです」


「俺は天使様に認められるような人間じゃ―― 」


彼女いない歴=年齢の童貞で子孫を成すという生物の役目も果たせていないし、趣味も特技もなく社会に貢献する何かをやったわけじゃない。


「いえ、そのようなことはありませんよ。あなたは凶悪な人間から無垢なる者を身を挺して守られました。咄嗟にそのような行動ができた。あなたは間違いなく優しい人間です! 」


天使様は俺の言葉を遮るようにそう言った。

確かに俺は生前テロ事件に巻き込まれ、逃げ遅れた幼い少女をテロリストから守った。その時テロリストに俺は殺され、その記憶は今でも鮮明に残っている。死の直前の苦痛、恐怖、冷たさ、生きれるはずの時間を失った無念そういった感情が津波のように押し寄せてくる。


「だいじょうぶ。もう大丈夫です。よしよし、いい子いい子」


「ちょっ、なにを。。。」


気が付くと天使様に抱きしめられていた。子供を(なだ)める母親のように頭を撫でながら暖かさで俺を包み込む。気が付けば、羽根布団のように柔らかい豊満なバストに身を埋めていた。


俺こんなに背低かったっけ?

身長は175cm近くあったはずだ。余程高身長な人でない限り視線を少し落として女性を見ることが多かった。なのに今は天使様を大きく見上げなけないと表情が見えない。


至福のひとときであるが女性と縁のない生活をしていた童貞には刺激が強すぎる。しかもこのふかふかな双丘に頭を包み込まれて息ができない。てか、苦しい。

天使様に「ギブアップ」を伝えようと肩をぽんぽん叩くと、より一層強く抱きしめ返された。


「ぢ。ぢぬぅ」


「ふふっ。もう死んでいるではありませんか。

佐藤さんは面白いことをおしゃいますね」


「ボケたわけじゃないわ! 」


クスクスと天使様が笑っている。いや、冗談じゃなくてマジなんですが…… 。

ジタバタと手足を動かしてせめてもの抵抗を示すがびくともしない。


疲れ果てて冷静になってみれば、確かに呼吸をしなくても全然大丈夫だった。

これでは女性に抱きしめられてテンパっただけの情けない男ではないかと羞恥心で顔が熱くなる。


「佐藤さん。いえ、イリスちゃん。よーくお聞きなさい。

あなたをこれから異世界に転生しなければなりません」


「ちょ。ちょっと待ってください。転生しなければならないってどうして? それに転生するってどこに? あとイリスちゃんってなんなんですか!? 俺の名前は佐藤さとう 愛梨栖あいりすです。 」


「あなたの新しい名前です! 元の名前からもじってイリスちゃん。私が名前を授けるなんて特別なことなのよ? 」


天使様が誇らしげ胸を張って喜びを頬に浮かべている。


「ありがとうございます。愛称みたいなものだと思っておきます。できればもっとかっこいい名前がよかったですが…… 」


元の名前に良い記憶がないので正直微妙と思ったが、天使様から頂いた名前をいらいないと言うのは失礼に思えた。

でも最後にボソリと本音が漏れてしまった。


「ん? 何か言ったかしら? 」


あまりにも小さい声だったから天使様まで声は届いていないようだ。どことなく、表情はニコニコしている天使様から「私がつけた名前になんか文句ある? 」と無言の圧力を感じるのは気のせいだろうか?


「い、いえ。なんでもありません!

それより異世界に転生ってどういうことですか。教えてください」


背筋に氷を当てられたような感覚を覚え、急いで話題を切り替えた。


「そうですね。人間には理解が難しい内容でしたね。

本当は1からご説明したいのですが時間がありませんので要点だけかいつまむと―― 」


天使様いわく、エリコと呼ばれる世界があってその世界は神々の争いで地上世界《下界》の発展が停滞してしまっているそうだ。困った神は地上世界に直接介入できない自分たちに代わって世界を動かす存在を求めた。そこで、異世界の選ばれた人間を異世界へ転生させエリコの発展を促すことにした。


「そんな世界を発展させるとか。俺みたいな凡人にできるわけないじゃないですか」


「はい。普通の人間には難しいと思いますので私たちより()()()()を授けさせて頂きます」


どこかの小説のテンプレよろしくな展開である。俺自身そういう読み物が好きで読んでいた時期もある。

叶うことならどこかの英雄のように何かを成したいと何度夢見たことか。


だがそれは空想の中であり、現実となれば話が変わってくる。

天使様から力をもらっても自分が物語の英雄のように何かができるとは到底思えない。


「俺なんかが世界をどうこうなんてできるわけないですよ。たとえ天使様のお力を頂いても…… です」


「そんなに自分を卑下してはダメですよ? それに世界を発展させると言ってもイリスちゃんに何かをしてほしいわけじゃないんです。


あなたが自由に考え異世界で行動する。そのことに大きな意味があるのです。

先ほども言いましたが私たちにはことわりがございます。たとえ、世界の有事でも地上のことは人間が考え、進まなくてはなりません」


天使様は微笑みながら俺をじっと見つめながら言った。

神様たちは地上に直接介入ができない。そのルールは神々から人間に何かを指示するようなことも含まれるようだ。だからそれとなく諭すことしかできない。


でも異世界から人を転生させたり力を授けたりすることは地上への介入にならないのだろうか?

俺はふとそんなことを考えていると、天使様は続けて言った。


「ちなみに、異世界から人間を転生させることも力を与えることも本来なら禁忌タブーです。

ですがそうも言ってられない状況なので特別に最高神ハックより許可を頂いております」


天使様は俺を名残惜しそうに何度か強弱のある抱擁を繰り返してから離れると、指をパチンと鳴らした。

すると、目の前に巨大な鏡が出現した。そこに映っていたのは―― 。


挿絵(By みてみん)


「おんなのこ…… ?」


鏡に映るのは素っ裸の小学生くらいの少女だった。一糸まとわぬ姿に羞恥心が沸き上がる。咄嗟に腕で大事な部分を隠す。


「ふぇえ。あ、あっ。ない…… 」


長年連れ添った相棒はそこになく、平坦な丘となっていた。その代わりに上半身にかすかな膨らみを感じる。

俺が右手を上げれば鏡の少女も困った顔のままひくひくと頬を引きつらせ、サファイアのような大きな青い瞳を不安そうに曇らせながら同じように真似をする。プラチナブロンドの白さと黄色の混ざったさらさらの髪が動くたびに風に舞い、その姿はどこからどうみても女の子だった。


「イリスちゃん! 」


すっぽんぽんの状態が恥ずかしくて、胸とお股とお尻の3つを2本の両の手でいかに隠すか。あたふたしていいると天使様が背後から近付いてきた。


「えっ。ちょ。ちょっと天使様。急に抱き着かないでください!

それに俺、今まっぱなんで…… 。その恥ずかしぃです…… 」


最後は消え入りそうになりながらそう言うと、天使様は嬉しそうに顔をほころばせて言った。


「やっぱり、イリスちゃんはかわいいですね! 」


「あぅ。そ、そんなことないですよ! それに俺は男だからそんなこと言われてもうれしくないです…… 」


生前、キモイだ、不細工だと言われることはあっても、褒められることはなかった。男として褒められたなら素直に嬉しかった。でも『かわいい』というのは複雑な気分だ。


その言葉は鏡に映った少女に対しての感想であって、自分に向けられたものではない。そう、わかっているのに、なぜか悪い気はしなかった。


ただ、背中がこそばゆい感じがして恥ずかしい。


「なんで俺は女の子になってしまったんですか? 男に戻れますよね? 」


「ごめんなさい。戻れないです。でも女の子になったのにはちゃーんと理由があります! 」


一瞬、天使様が声のトーンが下げて申し訳なさそうに肩をすくめて言った。


「私の力は女の子じゃないと使えないから…… です! 」


今度は、ぱぁっと花が咲いたような明るい表情で天使様がドヤ顔で言った。


「ごくり…… 。天使様。私に授けていただける能力は、どっ、どんな能力なんですか? 」


女の子じゃないと使えない力。神様に選ばれて異世界転生するわけだ。チートな能力をもらえる気がする。

誰かのスキルを奪う能力とか。地球の道具や商品を召喚できる力とか。ステータスが異常に高いとか?

俺も男だ。どんな能力かわくわくする!


「あ、申し遅れましたが私はゴモリーと申します。気軽にゴモリーと呼び捨てで大丈夫ですよ」


「ゴモリー様、ご丁寧にありがとうございます」


天使様はゴモリーという名前らしい。天使様は天使様なのだと思っていたから、固有名があって少し驚いた。

本来であれば敬礼すべき場面であると思いつつもゴモリー様に抱きつかれていて身動きがとれなっかったので、俺の後ろにいるゴモリー様を見上げながらそう言った。


「ゴモリー」


ゴモリー様が不満げに口をとがらせている。

神様を呼び捨てにするのは失礼だと思って『様』をつけたが不服のようだった。


「ご、ゴモリー。どんな能力か知りたいです」


「ああ、失礼しました。話題がそれてしまいましたね。

一言で言えば回復能力ですよ」


「回復ですか…… 」


「あれ? 不満そうですね。すごい力なんですよ。

失った腕もどんな奇病も治せる奇跡の力。まさに女神の奇跡です。

それを人間が扱えるのです! これはすごいことですよ? 」


期待していた目立つような能力ではないが、能力の詳細によってはチート性能な可能性もある。

俺は期待に胸を膨らまさせながら言った。


「あの。トレーニングをして自己回復をし続ければ無敵の体を手に入れたり、敵の体を悪い方向に治癒して攻撃したりみたいなことはできますか? 」


「いえ、残念ですがそれはできません。

まず損傷と修復で自己強化を行うというのは人間のそれも少女の体ではとても耐えられないでしょう。

それに私の力は正常な状態に治すことしかできないので攻撃に転用するのは難しいです」


治す以外の使い道が実はあるという可能性もある。ただ、ゴモリーの言い方から期待しないほうが良さそうだ。


正直に言えばチート能力でギルドから称賛されたり、ハーレム作って女の子たちとうはうはしたりと夢はあった。だがそれは叶わないようだ。


そもそも俺は女の子の姿だから百合の楽園しか作れないな。

ふっと全身の力が抜ける心地がする。


ポジティブに考えればなんでも治すことができるわけだ。それなら、その力で楽をして暮らすことはできそうだ。

ヒーローみたいな活躍はできないけど俺らしく陰でひっそり平和に暮らすだけなら十分な能力かもしれない。


そこまで考えてふと疑問が頭をよぎる。


「あれ、ゴモリー。男性ヒーラーみたいな人はエリコではいないんですか? 」


俺が疑問に思ったのはゴモリーの力は女性しか使えないという話だった。つまり、エリコでは女性しかヒーラーがいないのではないか。


「いえ、いますよ? 」


「えっ…… 。 じゃあなんで女の子じゃないとゴモリーの力は使えないんです? 」


やっぱり普通のヒーラーとゴモリー様の力は違うから女性限定ということだろうか。

それなら納得がいくが別の理由があるかもしれない。


「私の趣味です! 」


えっ、趣味って。じゃあ俺が女の子になったのってあんまり意味がない…… ?

じゃあ、元に戻してほしいと抗議の視線をゴモリーに送ると、彼女は居所が悪そうに目をそらした。


あたふたしながらうわずった声でゴモリーが言った。


「あっ! なごり惜しいですがもうタイムリミットのようです…… 。


本当はイリスちゃんとこの世界で一緒にイチャラブしたいのです!

ですが…… 。ですが、私も神に仕える者として使命を果たさねばなりません。

でなければ私も堕天使ネフィリムとなってしまいます」


話題をそらそうと急いで転移を始めたのは明らかだ。

「せめて男に戻して転移させろ! 」と俺は異議を申し立てながらジタバタ手足を動かす。


「寂しくなりますがしばしの別れです。

私はいつもイリスちゃんと共にありますから…… 。だから、がんばってください! 」


俺の力が弱いのか。ゴモリーの力が強いのか拘束する両の手をほどくことができない。

その間にも俺の周囲に光の粒子が集まり、徐々に光が強くなって視界が歪みを増してゆく。


「ちょっと待ってください! まだ聞きたいことが―- 」


気が付くとゴモリーが遠く離れたところにいる。その距離は段々と離れてゆき―― 。

突如浮遊感と共に高所から落下していく感覚に襲われた。


「せめて男に戻してからにしてくれ!!!!!!! 」


===========================================


目が覚めると一面に木々が生い茂り、むせるほどの自然の香りが漂っている。所々に咲く花々は地球で見たことがないユニークな形や色をしていた。空を見上げれば雲ひとつない晴天で空気はどこまでも澄んでいるようだった。


ふいに肌寒さを感じて自分の胸を見下ろすと薄汚れた麻布のような素材のワンピースを着ていた。

男なのに女の子の服を着ていることに気恥ずかしさを感じながら、実は夢を見ているだけなのでは? と思い頬をつねる。


「いたっ。いふぁいよー。」


軽くつねったつもりだったがとっても痛い。自然と一粒の涙が零れ落ちてくる。この痛みは現実だと思う。


ペタペタと全身を触りながら自分の状況を確かめるが、完全に女の子の体だった。どうやらゴモリーと共に鏡で見たあの少女になってしまったのだろう。


自分が女の子になったと自覚すると無性に羞恥の感情が沸き上がる。時折風にスカートが不安げに揺れて、股がスースーする。もしかして下着を穿いてないのかと心配になり、内股になりながらスカートをたくし上げてみる。


「あ、よかったぁ。ちゃんと履いてる。 ってよくない! 」


高く透き通った声が聞こえる。これが自分の声だと理解するのに少し時間がかかった。


下着は地球のものと同じようで白い幼児用のパンツだった。奇抜で独特な下着でなくてよかったとほっと胸を撫で下ろす。


女性用の下着をきていることを意識したら途端に顔が熱くなる。意識は男のままなので変態プレイをしているような居たたまれない気持ちになる。


「これはブリーフ。そう、ブリーフなんだ! だから何も変じゃない! 」


恥ずかしさで穴があったら入りたい気分だったが、森の中でまともな装備を持っていないことに気が付き早く街を探さないとこのまま森の中で飢え死にするかもしれない。そんな不安が頭をよぎった。


その時だった―― 。


ドンっと重たい何かが落ちる音と遅れて悲鳴。いや苦痛に悶える獣のような声が聞こえた。

恐れていた獣との遭遇に息を飲む。じっと音のする方向を注視していると、時折人の声のようなうめき声が風に乗って聞こえる気がした。


ガクガクと足が震えていた。獣がいれば俺には太刀打ちできる術はない。ゴモリーにもらった力も治癒する力で攻撃手段は皆無だ。


でも、もしそこにいるのが人だったら?

俺がここで逃げたらその人を見捨てることになる。きっとこんな森の中で都合よく他の誰かがやってくることはないだろう。つまり、俺が見捨てれば助かる見込みはないだろう。


幸いにも俺には人を治癒する力があるらしい。そんな力がなければ俺がしてあげれるのは応急処置程度のことだが、不思議な力がある以上助けることができるかもしれない。


無意識だった。とりあえずどんな状況なのかだけ見てみようと。そう思い、行動していた。獣だったら即座に逃げても助かるかどうか。もしも獣だったら俺はここで死ぬだろう。


「でも俺は一度死んだ身なんだ。人を見殺しにしてまで生にすがるのは男らしくないだろう」


小声で自分に言い聞かせながら草むらをかき分けていく。

突然、手に生暖かい感触があった。


「ふぇえええええ。ゆ、許してください! い、命だけは…… 」


パニックになって手を振っていると顔に熱い何かがかかった。なんだろうと手をみると―― 。

真紅に染まった手。地面を見れば徐々に広がりゆく血だまりがそこにあった。


「ぁ、ぐはぁ。はぁ。はぁ。たぁ、す、け。ごふぁ」


かすかな声が聞こえて振り向くと血液独特の鉄の匂いがむっと強くなり、目の前には年端もいかない少女が虚ろな目でこちらを見つめていた。


視線があった瞬間、黒髪の少女はせき込むように吐血した。

俺は急いで少女に駆け寄ると状況を確認する。


崖の斜面に血痕があることから、目の前の崖からこの子は落ちてきたようだ。

転落の際に手足があらぬ方向にまがっている。右腕は周囲にはみあたらないし、お腹のあたりは内臓が飛びでていた。医療系の知識に乏しい素人でも。なぜ生きているのか不思議な状態だった。


ごろごろと不自然な呼吸で苦しそうに顔を歪めながら、必死に左手を俺に伸ばしてくる。


「ぐはぁ。ごほぉ。くる、し。ぃよ」


「喋っちゃダメだ! 」


俺は彼女の手を握り締めた。そして思い出していたゴモリーがくれた力のことを。人を癒す力を俺は授かったはずだ。でも使い方なんて聞いてない。こんなに早く使うことになるなら聞いておけばよかった。


「なおれ! なおれ!! 」


後悔しても今目の前にいる子は救えない。必死に『治れ』と念じながら力を込めてゲームでみた回復魔法をイメージをする。

だが、何も起こることはなく少女は急速に体温を失って冷たくなっていく。


「ヒール。キュア。リカバリー。ファースエイド。ポーション。エリクシール! 」


思いつく限りのファンタジー用語を唱えてみるが状況は一向に変わらない。少女の温度と反比例して焦燥感がどんどん沸き上がってくる。どうしたら良いのか。混乱する頭に最悪の状況がチラつく。どんどん不安と恐怖でいっぱいになる。


諦めたくない。なんとかするんだ! そう自分に言い聞かせ、必死に頭を働かせる。

ふいにある言葉が頭に浮かんだ。迷っている時間はなく直感的にそれを叫ぶ。


聖救神愛エプリオールハイレン


突如、ゴモリーが纏っていた神々しい光が少女を包み込む。純白の光は徐々に強さをましてゆき、最後には周囲をフラッシュアウトさせた。


最後までお読みいただき、ありがとうございます!

しばらくはストックがあるので毎日更新していきますが、基本的に遅筆なので更新が遅くなりますが許してください・・・


https://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=74372676 ※18禁

ちょっとイラストが際どかったのでなろうでは修正を入れてます。

pixivでは元のイラストが見れます。よろしければご覧ください。


※05/02誤字脱字修正



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