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読み専でしたが深夜テンションで書いてしまいました。
書いたからには完結させたい!
一話2000文字前後でお送りします。
毎日10時に更新予定。
学生時代は自分で言うのも何だがそこそこ交友関係は広かった。
今から思えば、まだ"女"に毛が生えた程度の時特有の甘酸っぱい恋も沢山経験したし、その分味わう失恋も今となってはニヨニヨしてしまういい思い出だ。
大学を卒業し、今の会社に勤めた時には仕事も恋も全力で行くぞー!と気合いを入れるも、地頭が良くない事もあり事務員特有の細々とした作業を覚える事に必死になってしまい恋の方は一旦保留。
「えー!もうどれくらい彼氏いないのー?」と心配する同期に「腹が減っては戦はできぬ所以、まずは日々の業務を淡々とこなせるように頑張る所存。」とウケると思って言って引かれたのもいい経験だったと思う。
年齢を重ねれば月日が流れるスピードが変わる事も知ってはいたが、こんな猛スピードで駆け抜けるとは思っていなかった私は仕事に精を出している内に気がつけば28歳になり、お局様と呼ばれるようになっていた。
そしてそう呼ばれる頃には狭い世界で繰り広げられる憧れのオフィスラブも私を蚊帳の外に繰り広げられていた。
それを横目にどうしてこうなった?と思いつつも振られた仕事をいつも通りこなしていると、月日が流れるスピードは猛スピードを通り越して光の速さで私を39歳(独身)まで運んだのだった。
「はぁ~…この歳になると座ってると腰にくるなぁ」
仕事帰りにいつも寄る若くて笑顔の可愛い店員のいるコンビニで目の保養を済ませた私はお弁当の入った袋をブラブラさせながらゆっくりと家路に向かっていた。
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「あの!!」
「え…あなたは…」
振り返ると、さっきのコンビニ若くて可愛い店員さんがいた事に驚きを隠せない。
「じ…実は僕!あの!あと10分でシフト終わるんです!!よ、よかったら僕と…1日、いや1時間でいいんで僕にくれませんか?!」
「え?どうして?」
「僕…貴方が初めてあのコンビニに来た日からずっと…気になっていたんです!!綺麗な人だなって…っいや!それだけじゃなくて、いつも夜まで仕事してちょっと疲れた感じがして…僕が癒してあげたいって…」
真っ赤な顔をして焦った様にいい募る彼に私は
「ふふふ。私、オバサンだよ?」
「そんな、歳何て関係ないです!!!」
「私、安西真理子。君は?」
「僕は吉永瑛太って言います!」
「じゃ、10分後にファミレスでも行こっか」
と大人の余裕を見せつつ内心はウオォォオオ!!と足軽達が勇ましい声を上げながら突進するのをどうにか抑えていた。
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という妄想をしながら帰宅するのが日課だ。
頭がイカれてるのは重々承知だが、日々の疲れを癒すなら脳内で彼を犯した所で罪にはならん!と自己完結している。
実際、彼は「僕」でなく「俺」と自分を呼んでるし、休日の朝たまたまコンビニの近くを散歩していたら仕事終わりに待ち合わせたのか、彼女とイチャこらしてる彼を見かけた事もある。
よって彼は彼だが彼ではないのである!無罪なのである!
既に男が寄り付かなくなって9年。
合コンに参加しようにも、39歳が来たら相手の男も興醒めだろうという事を悟っている私は参加もできず脳内スキルを高めていった私のささやかなご褒美。それが一体誰に責められると言うのだろうか?
無論、母である。
週末には電話の嵐。やれ婚活パーティーというものがあるらしい。やれこの際四の五の言わずお見合いでもしろ。
しまいには孫の顔を見る事は叶わないのか。と泣かれるまでがセットだ。
一人娘が行き遅れてるのだから親の心配も分かるが、恋なんてしようと思って"する"ものじゃない。気がついたら"してる"ものだと思うのだ。結婚だって無理にするものじゃなく、恋をして、この人と生涯を共にしたいと思った時が結婚をする時だと思うのだ。
学生時代の【脳内お花畑】のまま時を止めた私は、条件で選ぶのではなくこの人が好きだ!と自然に心から溢れるような出会いが欲しいと切実に願っているのだ。
だから親には申し訳ない思いを抱きつつも、丁重にお断りさせて頂いている。
「はぁ…」
そんな事を考えていたら思いがけずにため息がもれた。
あー、やだやだ。せっかく楽しい気分だったのに憂鬱になっちまったよ。苦笑いをしながら鞄から鍵を取り出して家のドアを開け、そろそろ履きつぶれそうなパンプスを脱ぐ。
カチャリと後ろのドアが閉まる音がしたので鍵を閉めようと視線を上にあげて
「は…?」
と素の声を出してしまった。
だって、目の前にあるのは使う当てもない今までのボーナスでコツコツと理想のお部屋に仕上げたカタログに出てきそうな素敵なワンルーム……ではなくボロボロのベッドにボロボロの机、敷いてあるだけ無駄なんじゃないか?ってくらいの絨毯が私を迎えたから。
「は…?え?」
混乱する頭で部屋間違えてる?!と玄関ドアを開け部屋番号を確認しようとすると、開けた先には同じようなボロボロの部屋にボロボロの服を纏ってポカーンとした外人が二人いた。
ポカーンが3人になったのである。
ありがとうございました。