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偏屈な男シリーズ

偏屈な男

作者: しゃぼねっと

少し前に作った短編小説です。

地味にシリーズですが、暇なら読んでください。

 俺は偏屈な人間である。

 今までの長い人生という時間を、捻くれた考えを持ちながら生きてきた。普通の考えを持った素直な人間ならば得ることの出来た幸せを、俺はわざわざ踏みにじって生きてきたのだ。

 例えば小学校のころ、廊下に貼り出されていた『おおきな声であいさつをしましょう』とか『しっぱいしたら励まそう』だとかの標語が大嫌いだった。

 別に大きな挨拶をしたくらいで俺はいい気分にもならないし、はっきり言って喧しい。『うるさい』を五月の蠅と書くように、まさに望んでもないものを勝手に押し付けられている気分で小学生時代を過ごしていた。

 そんな標語を考えた奴に『僕は君を許さないよ』とでも言ってやりたい。

 それに後者だって、失敗した奴を励まして何のメリットになるのだろうか。失敗した人間を励ましたところでその人間が付け上がるだけである。ミスを犯したヤツに対する適切な処置とは、これでもかと悪かった所を列挙して、将来役に立つ個所を徹底的に分析することである。

 そんなことを小学生に求めてどうするのかと言う愚かな輩が居るかもしれないが、ならば小学生にでも出来る範囲でやればいいのであって、そんな手ぬるい覚悟の教育で将来をしょって立つ人間が育つのかどうか、俺は甚だ疑問である。

 しかしながら、俺は小学生のころから勉学に対しては貪欲だった。こういうことを言えば自慢したいだけに思えるかもしれないが、ただ単に、勉強は人生で役に立ち、将来俺の幸せな未来の足掛けになってくれそうだっただけの話だ。

 最近の……いや、昔から子供たちは『将来に役に立たない』等と言って、何の役にも立たないどころか少年時代の貴重な時間を奪う事を目的に作られたゲーム機にうつつを抜かすという、矛盾を孕んだ意味不明な奇行を繰り返してきた。

 どうせ社会に出るには勉学を収めたという実績と、ひたむきに努力できる事を証明する学歴が必要なのに、どうして無駄なことを繰り返すのか。

なんとも悲しい話だ。ホントは才能がある人間という意味どころか、金魚の糞にも劣る人間になってしまっている。

 話が逸れてしまったが、まあここまで言えばこの俺がどれだけ捻くれているか分かるだろう。普通の人間なら言葉通り素直に享受することの出来る事を、俺は曲解に曲解を重ねて、理解しているのだ。

 そんな俺が幸せを感じるのは、金を稼いで浪費している時だけだ。

 金を使うことは素晴らしいことだ。何故なら自分がしたい事を、自分の築き上げてきた人生と最大限同じ価値の給与によってすべて解消することが出来る。

 ちなみにこの俺の一か月ごとの給与は70万だ。少々足りていないのだが、とりあえずその金を使って俺は資本主義経済を潤している。いわばこれは立派な社会貢献だ。

 世間では『お金は全てじゃない』とか『金より愛』などという人生を心底舐め切った、幼稚園児の将来の夢よりも無価値な、失笑する以外に道のない寝言が流行っているが、無論俺はそういう言葉が嫌いだ。

 適切な大金は人生を豊かにしかしないし、その免罪符の様に使っている『愛』にさえ経費がかさむことはこの長い人類2000年の歴史が証明してくれている。

 かの有名なクレオパトラでさえ高級な絨毯に全裸でくるまって、自分自身をカエサルにプレゼントしたほどである。『金より愛』は確かに正しく見えるかもしれないが、その愛は金で出来ていることも忘れてはならないという事だ。

 とりあえずここまでが俺の自己紹介だ。ん?名前がまだだと?別にこの俺は特に名乗るほど価値があるわけでは無い。どうせどこかで聞いたことのある名字の、きっと聞き覚えのある名前の、どこにでもいるただの冴えない男である。故に名前は紹介しない。

 ……さっきからとんだ陰気臭い話ばかりしてしまったようだ。まるで世間そのものの価値観を糾弾しているみたいだ。

 こんな話ばかりではつまらないだろう…。ちょうどいい話がある。実は少し前にこんなことがあった。


 俺はとある日、取引先との話し合いで他県にでばることになった。

 俺は金を稼ぐために鍛えた愛想笑い、金を稼ぐために会得した会話術、それに金を稼ぐために新調した背広を着こんで、金を稼ぎに行っていた。感触から言って成功だろう。つまり金を稼げるのだ。

 俺はとりあえずその喜びとともに適当な食堂に来ていた。

「かき揚げそば一つ。」

 俺は勝利宣言のように食堂の女性に言った。

「何か嬉しそうですね」

 女性はあまりに上機嫌な俺に、思わず尋ねたようだった。

「そうですか?」

 俺は心からの笑顔で応えた。

 それから香ばしいかき揚げと和風だしの匂いを嗅ぎながら、適当な席に座ったのだった。どうやら席が混雑しているらしい。空いている席は数えるほどしかない。俺は割り箸を割ると、そばをすすり始めた。

 麺類はそば派の俺には、こういう食堂でラーメンではなくあえてそばを頼む。別にこれは俺の偏屈さは関係ない。ただそばが好きなのだ。

 そう、これこそが俺の至福の時間。ただ好きなものを喰うことが出来るこの時間は、この俺の給与により保証されていると思うと、なんだか安心感や満足感すら覚える。

 隣の席が、俺の両隣がいつの間にか空席になっていた。俺はそれに、一味唐辛子をとるときに気が付いた。まぁ別に気にする程のことではない。それよりも唐辛子だ。そばは唐辛子を入れることによって、その味わいが劇的に変わるのである。

 さあ、唐辛子をそばに…

「あの、すいません」

「……」

 俺の至福の時間を邪魔する輩に、思わず返事の声すら出なかった。分かりやすく嫌そうな顔をしながら、俺はその相手の顔を見た。みたところ中学か高校の部活生のようだった。

 そんな奴がこの俺に一体なんの用なのだろうか。

「一味唐辛子なら使用中だぞ」

「え……?いや、あの、唐辛子じゃなくってですね」

 じゃあなんなんだ。この俺に唐辛子以外で一体何の用があるというんだ。

「実はですね…あの席が他に空いていなくて…。あ、僕ら先輩合わせて三人で…他に席がなくって…あの、その席を譲ってもらって少し手前の席に座って頂きたいんですよぉ…」

「…………は」

 一体何を言い出すかと思えば……。とんでもなく非常識なことをいきなり言われてしまった。

虫唾が走るとはこの事を言うのか。いや、走るどころの騒ぎではない。虫唾にF1カーで走り去られるぐらいの非常識さである。

 虫唾って胃液のことだぞ。もうF1カーで走り去られたら、それはもう胃液じゃなくてただの吐瀉物だ。

車酔いしたのか?F1カーで。

「君が後輩か?あの……非常に無神経そうな彼らの」

「いや……はい。まぁ……」

 彼は非常に尾を引く返事をしたが、まぁ非常識なことを言い出した側からすれば言い返せないのだろう。俺は彼にとりあえず言わなければならないことを言う事にした。

「お断りだ。先輩に、後輩は君のパシリではないと伝えておけ。」

「はい……」

 彼は先輩のもとに帰っていった。

 まったく。ごはん中に虫唾にF1カーで走り去られるとは思わなかった。

 昼飯を吸収するのに胃液である虫唾が要るというのに、一体俺は何でそばを消化すればいいのだろう。まあ。とりあえず一味唐辛子を……

「あのぉ、すいませぇん」

「…………」

 たった今、虫唾がスピードの向こう側へ消えた。振り返ると、先ほどの少年の先輩達が二人俺の前に立っていた。よく見ると彼らのお盆の上に乗っているのはラーメンセットだった。

 昼に定番のラーメンを食べるあたり、彼らとは仲良くなれそうになかった。

「なんだ、一味唐辛子なら今使っているぞ」

「え?……いや一味唐辛子かんけーねぇし」

 失礼な物言いだ。一味唐辛子に対して。二人のうちボスっぽそうな先輩は続けた。

「ちょっと向こうで食べてくれません?俺ら座りたいんで」

「……何?」

 今だけ聴覚を失いたかった。

「三人並んで喰いたいんすよぉ、だから」

「お断りだ。」

 先輩どもはイラついた顔をしていた。なんで俺がそんな顔をされなければならないのだ。

「なんでっすか、おっさんが動いたら解決するじゃないっすか」

 俄然動く気がなくなって来た。どういう教育を受けたらこういう会話ができるのか正気を疑う。

「そうだな。理由としてはそんな事をしてもこの俺に何の得もないことだ。どうして俺が顔も知らない君たち……しかもメンドクサイ役割を後輩に無理やりやらせるような非常識で独善的な、その上腰抜けな君たちに席を譲らなければならいのか理解に苦しむ。」

 少年たちは突然の俺の暴言に唖然としている。多分俺が文句を言いながら移動すれば済む話なのだが、それは気に喰わない。

「あ…?」

 なにか反論をしたいのだろうが、俺の言ったことは確信的に正論なので、言い返せない。

「誰が腰抜けだこの」

「そもそも」

 急に荒げられた俺の声に少年は驚き黙った。

「俺はこの席に座るためにこのかき揚げと共に『好きな席に座っていい権利』を買ったんだ。わかるな?」

 すると少年は反論する。

「それだったら俺だって好きな席に座る権利を得てんだろうがよ!ならそこに座る権利を使って、せっかくだからその席に座っていいってことだよな!……っな?」

「お……おう!」

 先輩たちは急に水を得た魚の様に反論しだした。だが俺はその甘すぎる反論にスパイスの…いや一味唐辛子の効いた反論をかえした。

「違うな…お前や俺はあくまで『空いている好きな席に座っていい権利』を得ているのであって、『人が座っている席を強奪して良い権利』は買ってない訳だ…」

 自分でもかなり暴論だとは思うが、俺が言及した権利の購入について触れて反論したのが悪い。

「それに…たとえおれが席を譲りたくても俺は『席を譲っても良い権利』を買ってないし、それを一体何処で購入すればいいのか見当もつかない。そのうえそもそもこの席譲るつもりもないのだ。……という事は、権利的にも俺の意志的にも俺が席を譲ることは絶対に、何が起きても、天変地異が起きても……決して無いのだ」

 席に座るという事に権利なんて要るはずもないのに、さも必要なように話している事実に自分でも驚いている。席に座るのに権利を買う必要があってたまるか。多分今日のかき揚げそば532円(税込み)にそんな権利は含まれていなかったはずだ。確かレシートにもそんな事は書いていない。

 少年はこの俺のこじ付けの論破に圧倒され、どうしようもないといった顔で立ち尽くしている。面倒くさいが、助け舟を出そう。

「あそこの…ふたつ空いている席にお前ら先輩が座って、おれの後ろの席に後輩君がすわればいいだろ。せっかく買った権利を無駄にするのか」

 まあ、実際そんな権利誰も買ってないし何処にも売ってない。

「わかったよ…おい、行くぞ」

 先輩二人は向こう側に、後輩は俺の後ろの席に素直に座ったのだった。そう、子供のうちは素直なのが良い。別に俺は子供が嫌いなんじゃない。

 多少行動範囲が広がったのを、まるで半分大人になったように振る舞う中高生が嫌いなのだ。親がいないと何も出来ない癖して生意気なのだ

 俺は自分のそばの器を覗き込んだ。かき揚げが汁に溶け、分離し始めている。大量の油が汁中に浮き、非常に不健康そうに見える。俺は再び麺をすすり始めた。多少麺が伸びてしまっている。味わいがガタ落ちだ。…そうだ。せっかくだから一味唐辛子を入れよう。

 すると隣に女性がおぼんを置くのが見えた。器に乗っているのは俺と同じそばだった。良い趣味だ。

「お隣いいですか?」

「どうぞ」

俺がそう笑顔で応えた時だった。

「あー…そこ座るの?」

 彼女の反対側、つまり左隣の席に座ろうとしているカップルが居た。その女は金髪なのだが、顔が東洋人丸出しで、非常にブロンドが似合っていない。控えめに言ってクソブサイクだ。男のほうは鶏よろしくの逆立った明るめの茶髪に耳と鼻にピアスを刺している。

 鼻というのはあんなに皮脂が出る部分だというのに、錆びるのが怖くないのか。それに鼻にピアスなんて刺してお洒落のつもりなのだろうか。牛にしか見えない。いや、彼らは乳牛や肉牛の立場から社会の役に立っているので、牛に失礼か。

「あんたが別の席座ってさ、おじさんがそこ詰めてよ」

「…いやだ」

「はぁ?」

 金髪の醜女が俺に食って掛かった。

「えっと…」

 俺の右の女性が手持ち無沙汰で居る。

 彼女は俺と同じそば派の人間だ。若いそば派の人間はこの俺が守っていかなければ。俺はそんな誰にも必要とされていない義務感を覚えていた。

「実はな…この俺はひどい椎間板ヘルニアで…仮に右隣の女性が動いても、俺が動くことは困難だ。…他の奴に頼んでくれ」

 勿論嘘である。なんだ椎間板ヘルニアって。椎間板がそもそも何処なのか、それがどういう症状なのか見当もつかない。

「なんだおっさん。嘘ぶっこいてんじゃねーぞ」

 彼氏がしびれを切らして俺に文句を言いに来た。

「そうか…嘘に見えるのか…」

 逆にどういう人間が椎間板ヘルニアっぽいのか教えて欲しい気はする。

「ひとつ質問していいか。なんで君たちはそこまでして隣り合いたいんだ?」

「は?…俺たち付き合ってんだよ。だから隣り合いたいの!頭弱いんか」

 お前よりかは確実につよいぞ鼻ピアス。

「すまないな…そうは見えなかった」

 いやぁ。お似合いのバカップルだ。知能が低そうだ。

「舐めてんのか?」

「だがたった今この俺は君たちがカップルだと信じる事にした。そうは見えないにもかかわらず、この俺は口頭だけの情報を信じる事にした」

「あっそ、じゃ席かわれや」

「断る。さっき言ったようにこの俺は椎間板ヘルニアだからな。」

 俺は悪びれもせずに言った。

「嘘つくなよ。どんだけ席替わりたくないんだよおっさん」

 俺もそれが疑問になってはいる。そばはもうクタクタで、お冷の氷は跡形もない。

「なぜ信じてくれないんだ?俺は君たちの口だけの言葉をこの数分の間で信じてあげたというのに、君たちは何故俺の言葉を信じてくれない。」

「嘘にしか思えないからだよ」

「俺もだァ。君たちがカップルだという証拠は見渡す限り何処にもないし、探す限りカップル関係を証明してくれそうな書類も持ってなさそうだ。にもかかわらず、それなのにもかかわらず。この俺は君たちの事を信じてあげたのだ。でも君たちは俺を信じてくれない。…これは不公平ではないのか?」

 おそらくこれを読む誰もが俺の事を大人げないと感じているだろう。勿論この俺も例外なくそう思っている。今俺はカロリーでなく意地で生きている。

「俺には君たちがカップルだと偽り俺をこの席から退かせることによって、持病の椎間板ヘルニアを悪化させるつもりにしか見えない。誰に依頼された?例の市民団体か」

 男は俺を凝視していた。

「何言ってんのおっさん」

 俺にも分からん。

「それに君たちは俺が椎間板ヘルニアでない事を証明する“非椎間板ヘルニア証明書”でも持っているのか?それが無い限りこの俺は椎間板ヘルニアであることを声高に叫び続けるし、君たちがこの俺をこの席から退去させるに足る理由も証拠もないことになる。それにもかかわらずこの俺は君たちの言葉を信じてあげたのだぞ?君たちがカップルだという証明も出来ていないというのに。だから俺の椎間板ヘルニアを信じてあげてくれ。この俺からのお願いだ」

 女は余程イラついているのか、ヒステリック気味に言った。

「ちょっと!私たちが嘘ついているとでも言うの!?」

「その証拠はないな」

「私たちは今月でsince五か月なの!めっちゃラブラブなの!それが証拠よ」

「それが証拠だと?それを証明できる奴はいないのか」

「いや、友達の加奈子が……」

「誰だそいつは……知らん。お前らとグルかもしれない奴を引き合いに出してどうする。そうだな……こういう時は公的機関に証明してもらうのが良い。籍の入った戸籍謄本を市役所にコピーしてもらうことをお勧めする。」

 すると男は俺にこう言った。

「だったらおっさん。あんたのヘルニアはどうやって証明するんだ?」

「うむ。かかりつけの医者にでも診断書を発行してもらうかな。それまで……ここで立って待っていてくれるというなら、医者に診断書を持ってこさせるぞ。その間に市役所にでも行ってくるといい。待っていてやる。」

 勿論待つつもりは無い。勝手に帰るだろう。

「はぁ……いこう」

 カップルは呆れた顔をすると適当な席を探しにブラブラし始めた。まったく。それはこちらの反応だ。そばは完全に伸びきり、汁はあからさまに減り、かき揚げは水に浮かべたポップコーンみたいになり、必要以上に油が浮いていた。

「これだから安っぽい食堂は苦手だ。客も必要以上に安い…」

 隣を見ると、同じそば派の少女がぽかーんと口を開けていた。

「食べないと伸びますよ」

「え……はぁ」

「迷惑をおかけした。これは心ばかりのお礼だ。」

 俺はそういうと一万円札を彼女にポンと渡した。

「え!あの、要りませんよこんなお金……」

 俺は無視して一味唐辛子を開けてそばに注いだ。やっとゆっくりそばを食べることが出来る。すると俺の後ろを、赤子を抱えた若い夫婦が歩いてきた。よく見ると、隣の女の右隣が空いているのが分かった。

 夫婦は赤子を座らせる席と、自分たちが座る席の三つが必要らしかった。

俺は立ち上がって、荷物とお盆を持つと夫婦に言った。

「あの、よければこちらの席に座って下さい。」

 それから隣の少女に言った。

「君も寄ってあげるといい。……それとも、君は椎間板ヘルニアかい?」

「あ。私は違います」

 そういって隣に寄るのであった。私はってなんだ。俺も違う。

「いいんですか?ありがとうございます」

 夫婦はありがたそうに、俺と少女に言うと、多くの荷物を降ろしたのだった。俺は夫婦と赤子が座るのを見届けると、その後ろの席…先ほどの後輩君がいる席の隣に腰かけた。少年は俺に意外そうに尋ねた。

「あの」

「なんだ」

「あんなに誰にも渡さなかった席を、どうしてあの夫婦に譲ったのですか?」

「何故かだと?」

 俺は彼に当然の事を話した。

「困ってる人のは優しくするのが当然だろう?だから彼らに譲った。それだけの話だ。」

 そう。この俺は、とても素直で優しい男だったのだ。

 俺は伸びきったそばを、至極うまそうにすするのであった。





ちなみに長編も作っています。

偏屈な人は出てきません。笑

https://ncode.syosetu.com/n7408fe/


twitterやってます。@shabonet71232

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