ターミナル
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重い瞼を押し上げる。
記憶ではつい先程俺は大型トラックに轢かれ、あれ?
記憶が曖昧な点を考慮しても自分が今置かれている状況がまるで理解出来ない。
無論、現状の五体満足な身体に不満を覚えているわけではないが、車に轢かれたのにもかかわらず自分が無傷でいることに違和感を覚えた。
夢にしては痛覚視覚その他が現実と変わらないし、なるほどこれは夢では無さそうだ。
俺はその何故か無事な身体を起こし、周囲を見渡した。
無機質なフローリング、一見するとマンションの一室だろうか?
こんな場所で過ごすなら大学生になんぞなりたくない、と呑気なことを考え一人で苦笑する。
…?
何やら銀色のケースが視界に入る。
あまり身近には無いがアタッシュケースのようなものだろうか。
周りに何も、当然人すらも見当たらないので北條はそれをあまり躊躇なく開ける。
なんだこれ…
刀と……モデルガン?
北條も男子高校生ゆえ、平時であればテンションが上がっていたかもしれないが、この特異な状況下では訳が違う。
試しに刀を持って振ってみるが、中々軽い。
これでも中学の頃は剣道部だったので、この異様なまでの振りやすさは存外クセになる。
ただ明らかに玩具であろう刀とモデルガンがこの部屋にあるのみで、それ以外は本当に何もない。
外に出てみるか?
玄関と思しき場所へ向かい、扉を開ける。
瞬間
頬を掠めとるような弾丸が北條の元いた部屋に突き刺さった。