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2.大型生物って…狩人のゲーム?

こんばんわ 引き続き2話をどうぞ

「わわぁーっ!!」

 ヒツジが目覚めると、いきなり周りは一面荒野だった。

どきどきと波打つ心臓に手を当てて確かめると、ふと違和感に包まれる。何故か、自分が着ぐるみを着ていることに気づいたのだ。


 眠りに落ちるときは、平凡なシマシマパジャマだったはずなのに、どうして…


 然し、悠長に考えをまとめることが出来なかった。。何故なら、いきなり大型生物が怒涛のごとく襲いかかって来たからだ。


大型生物は、毛むくじゃらで見た目は地球上の生物である熊に酷似していた。寧ろ、物凄く機嫌の悪い熊そのものだ。


大型生物は、四つん這いの体勢で、此方を標的に定めたのか、勢いよく突っ込んで来るではないか。


「ぎゃああああ! お助けぇぇぇ!!」

 大型生物の抜き打ちにも似た襲撃にあたふたしてその場から逃げ出す。だが、緊張が全身を駆け抜け、思うように足が前に進んでくれない。

 大型生物が大きく肝の冷える咆哮をあげ襲いかかってくるその刹那、誰かから腕をとられ大型生物が突進してくる軌道から離れる事が出来た。


「わゎ…ありがとう」

 引っ張ってくれたらしい人物を見て、目を丸くする。

「あ、あれ、ボス?」

 そこには、柔らかな表情の青年―トモキが、怯えたような感情を顔に浮かべさせていた。その傍らには、トモキと同輩の青年―ミツルも、トモキと似たような表情を浮かべ、ヒツジを見つめている。


トモキは、ヒツジに“ボス”と呼ばれ、現実が戻ったようにホッとした笑みを見せて、確かめるように聞く。


「…ヒツジ君、だよね」

「うん」ヒツジは問われて素直に頷いたものの、今の状況に首を傾げる。「ここってどういう場所なのかな」

 ヒツジの言葉に、トモキは申し訳なさげに首を横に振り

「ごめん、俺たちにも良くわからないんだ。」

「僕達、普通にチャットをやっていたんだけど、気づいたらここにいたんだ。」


 トモキの言葉の後を、ミツルが続けて言う。


 ふたりの言葉に、ヒツジは難しげに眉を顰め腕を組むと唸るように言う。


「何だか、キツネにバカされてる気が……あぁっ!」


 ヒツジは唸るのをやめ、目の前に迫ってくるトモキとミツルの背後の大型生物を指で示す。大型生物は、まるでヒグマのように両方の腕を高々と振り上げ今にも襲いかからんとしていた。

距離はまだ遠い位置にあったので、まだ余裕はあるが大型生物が走ってくれば、きっと自分達は逃げられないであろう。


「ボス、ミツル君!! よけて!!!」


 ヒツジをはふたりに向かって思わず叫び、無意識に着ぐるみの腕を大型生物

に向かって伸ばす。

 すると、着ぐるみ状態の手の平からパラパラと光が溢れこぼれ落ち、そこからミニサイズの仔熊のぬいぐるみが沢山生まれ出てくるではないか。あれよあれよという間に仔熊達は一直線に大型生物へ立ち向かって行く。


 そして!


 仔熊達はひとつにまとまって走り、やがてそれはひとつの大きな形に変化し、大型生物に負けない大きな熊のぬいぐるみと化し、相手に迎え撃ったのだ。


そのシュールともいえる光景に唖然となったのは、トモキやミツルだけでなく、仔熊を発射させたヒツジ自身も吃驚した表情で自分の着ぐるみの袖口に視線をやった。


「とりあえず、ここから離れよう!」


 最初に覚醒したトモキが、ミツルとヒツジに逃げるように促した。

 大型生物は、今は密集した仔熊達と戦ってはいるが、いずれはこちらに照準を合わせてくるだろう。気が逸れている内に逃げなくてはならない。

「そ、そうだね。た、食べられちゃうのは怖いし。」

「そんな想像止めてくれよ。現実になったらどうするの?」

 尻込みをしつつも、この場から逃げようと共に足を動かし出す三人であったが、そう上手くいかなかった。


 仔熊達と戦っていたモンスターは、小熊達から照準を三人の方に切り替えてきたからだ。


「げっ!」

「ちょ! 何でこっちに向かってくるんだよ!」

「元々此方が目的だったからじゃないのかな?」

 焦りだすヒツジとミツルに、トモキは妙に冷静な態度で切り返す。

「何でそこで冷静なの、ボス!」

 ヒツジは、冷静なトモキを見やる。

「だって、君たちが慌ててるから、ひとりくらい冷めたのがいても良いかなと。」

「さすがだな、トモキ。」

 何が流石なのか、わからない謎な褒め方をするミツル。

 掛け合い漫才よろしく言い合いながら逃げる三人の背後に、大型生物の脅威が降り注ごうとした。だがそのとき、大型生物の全身が一瞬炎に包まれた。

 

 大型生物が炎に包まれたのを凝視し、新たなる生物かと、慌てふためく三人。だが、目の前に現れた炎を飛ばしてきた正体に目が輝く。

「兄貴! 親方!!」

 ヒツジの歓喜に満ちた叫びに引き込まれて、トモキもミツルも安堵の表情を浮かべる。

 シノが大剣を構えてモンスターを睨み付けながら、三人に呼び掛けた。

「坊っちゃん、ヒツジ、ミツル。三人ともまだやられてはいねえな?」

 さらに襲いかかろうとする大型生物に、焔で威嚇しながら周囲を見渡すコモロ。

「向こうの方からも、お呼びでない輩がワンサカ来るんだけど、巣でも突ついたの?」

「…っていうより、ここら辺りバトルフィールドなんだけど、異常だよね。」

「それ以前に俺達がこの場所にいること事態が異常だろ?」

「今はそんなこと考えてるな!」大剣を構え直しシノは叫ぶように言う。「事が終わってから状況確認だ!」

「了解だって。グルマリ、君は三人を頼む。でも、動くなよ? ここは俺とシノでぶち破る。」

「動こうたって、怖くて無理だよぉ。」

 頼まれたグルマリの代わりに、ヒツジが声を震わせ泣きそうな表情で言う。

「男だろ、ヒツジ。元気出せ!」 

 グルマリはヒツジの肩を片手で慰めるように撫でてやる。トモキとミツルのふたりも、ヒツジを庇うかのようにひっそりとくっついてくる。それを横目で見やったシノは満足げにニヤリとし、モンスターに振りかぶった。



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