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その3

 じゃあ、軍人は政治に対して何も言えないのか?


 今のブンミントーセーでは、まさにその通りなんですね。軍人が政治家に直接何かをいうこと自体が、ブンミントーセーを犯す重大な違反行為と言われてるから。でも、それって・・・


 お菓子300円のルールで、先生が「チョコなんかダメ。嫌いだから」なんて言った事に素直に従う必要はないでしょ?

同じように、政治家が提案してきた段階で、「これが出来るか?」と言われたとき、無理難題ならば断ることも出来るんですね。

 ただ、これ、あくまで「こんな作戦できるか?」という段階での話。

 政府の命令として決められたなら、「失敗が分かっていてもやるしか無い」んです。


 遠足のおやつも、先生が個々の児童に持ってくるおやつを細かく指定したら、それを守らなければいけないように・・・


 そういう失敗が分かっている作戦が強行されたりしないようにするには、軍人が政治家とコミュニケーション取れる環境が必要ですよね?

 文民統制にはそうした仕組みがちゃんとあって、参謀長とかの軍高官が直接大臣や首相、議会で政治家に説明する場所が用意されている。

 ところがブンミントーセーでは、軍人と政治家が直接接すること自体が問題だと言って遠ざける・・・

 これ、おかしいでしょ?先生と児童は直接接してはいけないなんて言ってるようなもんだから・・・


 でも、こんな無茶な事言ってるのが今のブンミントーセー。


 これで、政治家が軍事の決定権を持つって言われても、必要な判断材料が無い中で決めないといけない。

 書類を読んだだけで野球やサッカーの試合の先発メンバー決めるような話だよ。無茶にも程がある。


 軍人が超えてはならない線て言うのも当然ある。


 それは何も難しい事じゃないんだけど。


 湾岸戦争のシュワルツコフ司令官は知ってるでしょ?彼が開戦前年の11月に行われた作戦会議で、「我々はクウェートとイラク南部のイラク軍を壊滅し、その勢いでバクダッドに攻め込んでやる」というような事を口にしちゃった。


 当時、彼に与えられた命令は、「クウェート解放のために必要な措置を取れ」であって、「バクダッドに攻め込め」ではなかった。

 作戦そのものは、クウェート内のイラク軍を追い出してもイラク南部に精鋭部隊が控えているから、いつ反撃してくるか分からない。反撃をさせないためにイラク南部に居る部隊とクウェートから逃げる部隊を一網打尽にするという内容で、それはちゃんと大統領の承認も得ていた。

 

 そうすると、「我々はクウェートとイラク南部のイラク軍を壊滅」という発言は、何の問題も無かった。

 しかし、いくら身内の作戦会議であっても、公的な場で大統領が認めていない「バクダッドへ攻め込んでやる」は、言ってはいけない事だった。


 彼はその後、これを反省し、発言について訂正もしている。

 これが文民統制の国の軍人の態度だし、守るべきルールなんだよね。


 じゃあ、日本はどうか・・・

 れが無茶苦茶。

 昔、朝鮮戦争が再発した場合の日本はどうするかっていう研究(三ツ矢研究)をしていたら、それが国会で取り上げられてブンミントーセー違反だという話になった。


 もう少し新しい話では、ソ連に奇襲攻撃されたら、今の日本では自衛官が独断で超法規的措置を取るしか無いと発言した自衛隊トップが更迭されてる(来栖事件)。


 これも、ブンミントーセー上問題だって理由でね。でも、これ、不思議な話なんですよね。


 本当の文民統制は、これまで見て来たように自衛隊を動かすために自衛隊に作戦計画を作らせて、それを政治の責任で実行させることだから、日本が戦争に巻き込まれる事態にどう対処するかを自衛隊に研究させて、どういう対策を取るか案を出させるのが政治家の役割なんだけど、三ツ矢研究の時に政治家はそれを否定しちゃってる。


 来栖事件はもっと深刻で、文民統制では、もし何かあった場合のルールを事前に決めて、奇襲攻撃が起きた場合に自衛隊がすぐ動ける体制を作るのが政治の責任なのに、それを放棄しちゃった。



 最近の田母神氏の問題は、これらとは全く別で、あの人はうっかりかどうかは知らないけど、「論文を出す場合には、事前にそのことを申請しましょう」というルールを守らなかった。

 外務省のラスプーチンこと、佐藤優氏がいろんな本を出してるけど、彼は外務省に籍があったから、外務省批判のような本も、何気ない雑誌への記事も一度外務省に「こう言うの出版、寄稿したい」と報告して、許可を得てから出していたと自ら書いている。

 もし、在籍中にそれを守らなかったら、公務員法違反で処罰されるってね。

 田母神氏はそう言うルールを忘れてたのだから、論文の中身云々の評価とは関係なく、処罰を受けるのは当然の成り行きだった。


 本来、田母神氏の事件と文民統制は関係ないんだけど、ブンミントーセーでは自衛官のルール違反はすべてブンミントーセー違反になるから、あの事件がきっかけで自衛官一人一人の考えまでトーセーしないといけないなんて人権無視の狂ったことを防衛相や官僚が始めちゃった。そして、メディアがそれを支持してしまっている。

 こんなのはマトモな文民統制なら、政治家がちゃんと分別もってブレーキかけるし、メディアは一部の思想傾向を持ったテレビや新聞以外、ちゃんと批判していなきゃおかしな事態なんだよね。


 さて、ここまで読んで頂けば、これも違うって分かると思いますが・・・


 いつだったか、ミサイル防衛のための法整備で、「司令官の判断でミサイルを迎撃できる」というのを決めましたが、「これで一安心」というのは、ブンミントーセーですよ?


 これまで書いてきたとおり、文民統制というのは政治が軍事の決定権を持って、責任を持つ制度。

という事は?


 文民統制なら、法律をルールとして自衛隊に実際の行動計画案を検討、作成させて、政治がそれを承認し、命令、実行させる必要があるから。

 でも、それは、去年の春に北朝鮮のミサイル騒動の時に「その時」だけのために命令が出されただけで、それ以後、「引き続いていざという時には緊急展開してミサイル迎撃態勢を行える体制を整えよ」なんて命令が出てるのかな?

 自衛隊は法律だけあっても、政治の命令がなければ、すぐには動けないんですがねぇ~


 暴走するって意見に対して言えば、法律さえあれば警察のように自分の裁量で動けてしまう方が危ないとは思いませんか?

 ブンミントーセーは突き詰めれば、自衛隊は軍隊じゃなく警察と同じような「行政組織」だから、憲法や法律の解釈次第では、政治の命令を待たずに法律に従って自分の裁量で動けちゃう事に出来るかもしれない。まるで、戦前の「統帥権干犯」のごとくに・・・



続く


 


これをブログに投稿した2010年にはありませんでしたが、ようやくここ最近のミサイル連打で迎撃措置命令が常時発令が実施されるようになりました。

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