その2
さて、一つ、「そんなので良いの?」って例を出しますね。
イラン・イラク戦争中、ペルシャ湾で米イージス艦がイランの旅客機を撃墜する事件がありました。
その事件は、イランの軍民共用空港を離陸した旅客機をイージス艦が民間機だと識別できなかった事によります。
ただ、このときその飛行機が旅客機だと分かったとしても、警戒範囲に入った場合、照会や警告に応じなかったならば、同じ事になっていた可能性は高いでしょうね。9・11みたいな事はすでに警戒されていたでしょうから。
ちなみに、今、米国領空を飛ぶ旅客機で騒ぎが起きた場合、最悪、その旅客機は撃墜される事もあるそうなので、気を付けましょうね。閑話休題。
さて、イラン機撃墜事件の経緯ですが、米海軍は「軍艦に接近する航空機がいたら無線で警告する、ある程度近づいても警告に応答がない場合、艦長の判断で攻撃することも許可する」というルールを決めていました。
このイージス艦はそのルールに従い接近中の旅客機に警告を発しましたが、応答がなく、そのまま接近し、艦長の判断で攻撃が出来るところまで近づいた時に、艦長は攻撃命令を出して、撃墜してしまいます。
日本なら、「文民統制はどうした!!」なんて騒ぎになりそうですが、警察の行動基準に倣えば、何か問題でも?
犯罪を犯しているかどうかは分からないが不審な車があるから停車を呼び掛けたら無視した。それをサイレン鳴らして追いかけてるうちに、その車が事故を起こしてしまった。
これ、警察官が悪いの?逃げなきゃいい話ですよね?
で、さっきのイージス艦はどうなったか?
おとがめなし。ルールに従って警告をして、それへの応答がなく撃墜に至ったから、艦長は不問。
ただし、ルールを決めて撃墜を許可したのは米国政府だから、米国政府としてイランに謝罪して、犠牲者にもちゃんと補償しています。
日本だと艦長の責任にして終わっちゃうかもしれないですがね。あ、賠償はするでしょうけど。
こういうブンミントーセーではない対応には、政治家や政府の責任ってのが付いて回るんですよね。
日本では政治責任を回避するために防衛省の官僚にもブンミントーセーを適用して、彼らにも責任を分担させて、最終的に全部「自衛官の独断」になるように仕向けてるような状況ですが・・・
ちゃんと政治家が最後に責任取る体制を文民統制と言うんですよ?
そのために、政府や内閣は何をやるのかという目的ややってはいけない事を決めて、その前提の下で細部を自衛隊に立案させ、政治の責任で出来上がった作戦計画を承認し、命令、実行させる。
時折、軍事評論家が言う「軍事法ってのはやってはいけない事だけを決めるもので、今の自衛隊の状況みたいに政治が逐一口を出して『あれをやれ、これはダメ』と言うのはおかしい」という話の中身はこう言う事。
だから、政治家が責任持てないような無理な作戦は、中止も出来るし許可しない事もある。
軍隊が暴走するっていうけれども、文民統制下の軍隊は政治のルールの中で動くようになってるんだから、暴走じゃなくて「政治の責任で行動してる」が正解。あるいは、そもそも暴走しているのは政治(政府や議会)という事になるんじゃないのかな?
当然、そう言う時に国民が抗議するべき相手は自衛隊じゃなく、無茶なことや怪しい事を承認、命令した政治家なんだよね。
サヨクはそこ間違ってる。まあ、政治家でも責任回避したくて、責任を認めたがらない人もいるみたいだけど。
で、クーデター云々て言うのも、この制度だと自衛隊はクーデター起こせないよね?だって、クーデター起こす相手は国民が選んだ政治家なんだよ?
自衛隊が政府の指揮を離れるのは違法だし、文民統制を受けていない状態で、「国民を救う」なんてのは言い訳にもならない。だって、守るべき国民、従うべき国民の代表に銃を向ける行為なんだもの。
続く