本編3
「やっぱり佐桐さんは強烈な性格なんだよなー」
彼はそんなことを思いながら、隣に女の子を連れて歩いていた。
ここは新宿。
仕事を終え、言い寄られた女の子と一緒にデートを楽しんでいた。
「香川さんってやっぱり素敵」
女の子はそう言った。
彼・・・いや、香川はそんな彼女を見つめながら、ニヤニヤしていた。
「そんなことないって」
そういいながら香川は「やっぱり女の子は可愛い方がいいよなー」などと思っていた。
そう、彼こそが、佐桐を振った男である。
「佐桐さんもなぁ・・・悪くは無いんだけど」
そんなことを思いながら、隣にいる今時の女の子を見ていた。
「この子はこの子でちょっと物足りないけどな」
そんなことを表には出さずに、彼女と二人、夜の新宿を楽しんでいた。
ふと、ビルとビルの間にある、占い鑑定の看板を見つけた。
やさしそうな視線を持った女性が、占いをするようだ。
「ねぇー、私たちの相性を占ってもらおうかー?」
女の子は香川に可愛らしく言った。
そんな彼女に押されて、香川は女の子と一緒に占い師の元へと行った。
「相性見てもらえるんですかー?」
女の子は神秘的な女性に声をかける。
「はい」
女性は静かに、優しく答えた。
二人を観察するように見て、そして、香川の視線を捉えた。
そんな女性の視線を気にすることなく、女の子が
「ええっと・・・私たちって、相性いいですか?」
と言った。
女性は女の子の方を見て、にっこり微笑んだ。
「私の鑑定の仕方は、一人一人じっくり見て占うので、2人いっぺんには無理だわ。
なので、一人一人見て、それぞれにアドバイスをするということでよろしいかしら?」
女性の笑顔に女の子は何かを安心したのか
「じゃあ、それでお願いします」
と言った。
香川は「料金はどうなるのかな」と思いつつ、女の子に押されるだけであった。
まず、香川を見ることになった。
女の子は、女性の集中力が損なわれると正しい判断ができないのでという理由で、少し離れた場所で待機をしていた。
女の子のいるところから2人の会話は聞こえない。
女の子はつまらなそうな表情を浮かべながら、自分の番が来るのを楽しみに待っているのであった。
女性は香川の手を取り、ゆっくりを息を吸った。
香川は女性の手のわ柔らかさを感じながらぼーっとしていた。
ふと、女性が香川に話しかける。
「なぜ、彼女を振って、あの女の子を選んだの?」
香川は困惑の表情を浮かべた。
「誰の、何の事ですか?」
香川の言葉に、女性は軽く笑んだ。
「あなたは彼女の事が本当は好きなはず。
だけど、普段冷静な彼女から想像もできないような情熱を感じて、それに引きを感じちゃったのね」
香川は苦笑いを浮かべた。
「彼女は仕事ですごいなと思っていただけですから」
ちょっと苦々しい言い訳をしているなと、香川は自分で思った。
別に彼女を嫌いで振ったわけじゃない・・・なんとなくそういう展開になってしまったと思った。
この時点で、香川はこの「彼女」が誰であるのかを察した。
「水の星座らしくないわね、情熱に押されるなんて。
あなたと彼女の相性は、お似合いだと思うわ。
情熱を冷静を持ち合わせた女性は、あなたにとっては魅力的ではないのかしら?」
「あの彼女とではなく、今の彼女との相性を占うのではないんですか?」
香川はつい言った。
なぜここで、彼女のことを…佐桐の事を言うのであろう。
なぜか苛立ちを感じたからだ。
「彼女は、あなたが思っているような人ではないわ。
見た目はそういう風には見えないけど、まじめな恋をするひとよ。
口では冗談を言ったり、本音が分からないかもしれないけど…
あなたの求めている人に近い人だと思うんだけど」
香川の言葉を無視するかのように女性は続けた。
そんな女性の言葉に香川はとうとう怒りを露にしそうになったとき
「あの子との相性は、あなたが一番良く分かっているはずよ?」
女性は香川の心を見透かしているかのように言った。
そして、彼の手を離し、女の子に変わるように促した。
香川が女のこのところへ行こうとしたとき
「あの子は、気をつけた方が良い・・・きれいに別れなさい」
と女性の声が聞こえた。
香川は振り返るが、女性は微笑んでいるだけであった。
香川は軽く首をかしげ、女の子を呼びに言ったのであった。