本編1
「あーあ、なんで上手くいかないのかなぁ…」
金曜の夜。
彼女は新宿の街を、足元危なげに歩いていた。
顔は赤くなっており、言葉とは裏腹にちょっと陽気な表情を浮かべている。
「絶対に上手くいくと思っていたのになぁ、やっぱり私、魅力ないのかしら」
そんなことを考えながら、人ごみの駅へ向かって歩いている。
どうやら、振られたらしい。
あの話し振りから行くと、絶対に自分に気はあったはず。
だけど、実際にアタックをかけてみればなんだ、逃げ腰じゃないか。
男ってダメね、などと思いつつ、陽気な表情に少々悲しげな表情を浮かべ、ふとビルとビルの間の路地に、微笑みながら彼女を見ている、30代ぐらいの神秘的な女性がいた。
彼女はそれに気づき、ふらふらとそちらへ歩み寄る。
「その表情から見ると、失恋でもしたのかしら?」
神秘的な女性は彼女に声をかけた。
神秘的な女性は、占いの看板を掲げていた。
そうでもなければ、彼女が気安くふらふらと近寄るわけでもない。
「恋愛運悪いのかなー?」
ちょっと陽気な口調で彼女は答える。
「見て差し上げましょう」
神秘的な女性はそういうと、彼女の返事を待つことも無く、彼女の手を取り、目を閉じた。
「何占い?」
彼女はそう思いながらそんな女性の様子を見ていた。
神秘的な女性は、固く目を閉じた。
時折苦悶の表情を浮かべるが、ふとやさしい表情に変わり、そして目を開いた。
「彼はあなたの強いパワーに押されちゃったみたいね」
神秘的な女性は彼女に話しかける。
「確かにねー、猛烈アタックかけちゃったから…
多分、普段の私とのギャップを感じちゃったのかなー?」
彼女は答えるが、女性は続けて言う。
「あなたと彼の相性は悪いわけじゃない、いや、むしろぴったりという感じかしら」
「じゃあ、なんで振られちゃったのかなー…今月は恋愛運が良いってどの占いでも言っているのに」
「それは、彼があなたを恐れたからみたいね。
彼もあなたのことは好きだけど、だけどあなた自身に恐怖を抱いている…」
「何が怖いんだろう?」
彼女はちょっとよろめきながら、ほろ酔い気分で問いかけた。
「…もう、だめなのかなぁ…」
何も答えない女性に対して、失望的な台詞を漏らす彼女。
女性は軽く笑った後に、ふと表情を変えて言った。
「あなたには何か特殊なパワーを感じます。
・・・何というのかしら・・・私と同じような神秘的な力」
女性がそんなことを口に漏らすと、彼女は何か思うところがあるのか、こんなことを言った。
「さっき、何かを探られていた感じがするんだけど、その時に…」
彼女は言葉を濁した。
そんな彼女の言葉に対し、女性は表情を固くして
「その時に?」
と問い返した。
彼女は、困った表情と笑った表情を混ぜて女性に言った。
「目の赤い猫ちゃんが頭に浮かんだ…その猫ちゃん、今風邪を引いているみたいで、あなたがすごく心配しているのがそのまま感じ取れちゃったんだけど…」
その言葉を聞いたとたん、女性は驚きの表情を浮かべた。
「あ、今すごく動揺している?本当のことを言った?」
彼女は女性に手を握られたまま、どこを見るわけでもなくつぶやいた。
「・・・私のせいで、あなたの力が覚醒しちゃったのかしら?」
彼女は新宿の夜で起こった事を覚えているのは、ここまでであった。




