意外な生活
この物語は全て創作です。モデルはありません。
治子はマサヒロと結婚した時、もちろん幸せになるつもりで一歩踏み出した。
その後、順調に2人の愛娘にも恵まれ、マサヒロの給料も安いながらも安定していたし、何しろ社宅だったので、家賃はタダのようなものだし、ノンビリと平凡に優しい時間は流れて行った。
しかし....
23歳と26歳で娘をそれぞれに産んだ治子にとって、その苦しみは訪れた。いや、久々に訪れたと言うのが正しいか?
マサヒロは仕事がら、一年の半分ぐらいは出張で全国各地を回っていた。つまり、家に半分は居ないのだ。
寂しいって何が寂しい?
マサヒロとの夫婦生活が出来ないでは無いか!
最初の頃はマサヒロの出張先に付いて行き、会社から指定されたビジネスホテルでは無く、普通のシティホテルに泊まったりしていた。それまた小旅行のようで楽しかった。
しかし、子供も産まれると、そうそうそんな新婚旅行遊びばかりやってられなくなり、何よりマサヒロが、治子が付いてくるのを嫌がるようになった。
同僚の手前、やり辛いと言う。
治子が、私達夫婦なんだもん、何も恥ずかしい事じゃ無いでしょ?と膨れると、他の同僚の奥さんで、治子みたいに夫の出張先に来る嫁は誰1人として聞いた事無いと言う。
治子はそのマサヒロの言葉が面白く無くて、社宅で、ちょっとお茶飲みをするようになった同年代の奥さんにこっそり聞いて見た。
『ね、恥ずかしぃんだけど、ぶっちゃけ、貴女、ご主人が出張行ってる時って、寂しくならない?ほら、夜の方....』
そこの家も、マサヒロと似たり寄ったりの間隔で出張に行ってると聞いた事があった。
すると、その同僚の奥さんは、
『う〜ん。私は子供産んでから、いつもいつも自分が疲れちゃってて。だから申し訳無いんだけど、旦那が出張って聞くと、これでゆっくり熟睡出来て有難いって思っちゃう。出来ればほとんど行っててくれる方が助かるんだよなぁ?』
と、治子にしたらビックリ仰天の回答が返って来た。
女性雑誌の相談コーナーや、その手の小説も何冊か読んで見た。
そして治子は今更ながら悟った。
どうやら自分の身体と言うか、自分は1人の女として、相当な男好きらしい。下卑た言葉で言うと、男無しでは生活出来ないってやつだ。
高校生の頃からもしかして、自分はそんなタイプの女なんだろうか?とは思ってはいた。でも結婚して安定すれば、落ち着くものだと思っていた。
しかし案の定....
結婚したものの、夫婦生活が満たされないとなると、元の黙阿弥だったのでは無いか?
治子は4歳と1歳になる娘を社宅の庭で、みんなと遊ばせながら、1人暗い闇に沈み始めた。
結婚したのに、欲求不満が溜まり始めた治子。