16連目
「ダンジョン中ってこんな感じなんだ」
親切にダンジョンについて説明してくれた門番と別れダンジョンの中に入ったカイトは、周りを見渡しダンジョン内を確認していた。
ダンジョンには色々な種類があり、今カイトがいる洞窟型のダンジョンは広い空間は無いものの、枝分かれしている道が多く、行き止まりもある為、10階層しか無いとは言え、下の階層に行く階段を探すには結構大変なダンジョンだった。
「ん?」
10分程ダンジョンを歩いていると、目の前にゼリー状の物体が現れた。
「これは、スライムかな?」
カイトはすかさず、神眼を使いスライムを鑑定する。
名前 スライム ランク F
表面がゼリー状の粘膜で覆われている魔物、攻撃力は殆どなく、中心の核を壊すと溶けて消える。
「なるほど」
カイトは、そう言うとストレージからブーメランナイフを出すと、スライムに向かって投げ付ける。ブーメランナイフがスライムの核を壊し、カイトの手元に戻って来る。核を破壊されたスライムは溶けて無くなり、その場所に小さな赤い石が落ちていた。
「これは魔石かな?そう言えば、シャドウベアーやゴブリンの時は解体しないでギルドに渡したんだっけ」
カイトはそう言うと、魔石をストレージに仕舞い、再びダンジョンを進んでいく。
カイトがダンジョンに入って20分程立つ頃、下に続く階段を見つけた。
「ここが下に繋がる階段、そしてこっちがボスの部屋か…」
下に続く階段がある通路の隣の通路には、ボスに続く道が有った。なぜカイトがボスのいる道が分かるかと言うと、通路の分かれ道になる中心の部分にこの先、右の道ボス部屋、左の道階段と書かれた立て札が有ったからだった。
「取り敢えず、ボスがどんなモンスターなのか見に行ってみようかな~」
カイトはそう言うと、ボスの部屋が有る通路に向かって歩き出した。
「それにしても何でこの階にはスライムしかいないんだ?」
「きゅ~?」
カイトは、この階層でまだスライムを数える程しか倒してなく、ニュアと共に物足りなさを感じていた。
「もしかしたらボスもスライムだったりして……まぁそれはないか」
そんなことを思いつつ、カイトは、ボスの部屋の前についた。ボスの部屋に繋がる扉は、明らかに、ボスの部屋!と言う用な、色々な金属を混ぜて分厚く頑丈な作りの大きな扉に成っていた。
「随分立派な作りだな、う~んどうしようか?」
カイトは扉を眺め、そんな感想を言うと中に入りボスへ挑戦するか考える。
「ニュアここまで来たらボス倒してから次のかいに行こうか」
「きゅう!」
カイトがニュアに聞くと、ニュアは倒すき満々らしく、カイトの頭から下へ降り、臨戦体勢を取った。
「分かった、じゃあ行くか!」
カイトも頷き、扉に手をつき押して開ける。
カイトが部屋を開けると、中は何もなく洞窟と同じ空間が広がっていた。
「う~ん、何か思ってたのと少し違うな~」
ボス部屋と言うと、もっと空気が重く、部屋がどんよりしてると思っていたカイトだったが、今いる部屋は空気もそれほど悪くなく、何よりさっきまでいた通路をそのまま広くした感じの空間だった。
「ん?あれは…スライム、っていうかボスまでスライム…」
ボスの部屋の中心には茶色いスライムがいた。カイトは、ボスまでスライムなのかと落胆し、一応神眼で鑑定してみる。
名前 アシッドスライム ランク D
身体中が酸でできたスライム、スライムの上位種である。通常のスライムとあまりかわりないが、攻撃する時は、身体の酸を飛ばし攻撃してくる。
「今回は武器を使わずに魔法だけの方がいいかな?ニュア頼める?」
カイトは、アシッドスライムの特性、身体中の酸の体液で武器が錆びることを危惧しニュアに魔法での攻撃を頼みこむ。
「きゅ!きゅうー、」
ニュアはいいよ!と言っているような鳴き声をあげると、アシッドスライムに向かって、火の魔法ファイアーアローを使う。
ニュアが放ったファイアーアローは、アシッドスライムの核に当たると、そのままスライムと同じように溶けて無くなり、その場所にはスライムより少し大きな魔石が落ちていた。
「まぁ、さすがに一撃だよね」
カイトは、アシッドスライムとニュアの実力差に少し、アシッドスライムに同情するも、それよりも、ニュアの魔法が上手く決まった事が嬉しかった。
「きゅう~」
「お疲れ、ニュア」
駆け寄って来たニュアをカイトは、ニュアを労い抱くと定位置の頭の上にニュアを乗せる。
「きゅう~」
頭の上で寛ぐニュアに笑みを浮かべたカイトは、アシッドスライムの魔石を拾いに行く。