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2 村崎守正-B

今回は短いです

  ❤


 お兄ちゃんが帰宅すると同時に、私はお兄ちゃんに縋り付きました。


「……うぅ、おにぃちゃぁぁん……」


「よしよし。薫はいつまで経っても泣き虫だな」


 玄関先で抱きついた私を抱き上げて、お兄ちゃんはリビングに向かいました。ソファに腰を下ろして、そのまま私をギュッと抱き締めてくれます。


 頭も撫でてくれて、それだけで幸せな気持ちになります。――けど、零れ落ちる涙が止まる気配はありません。


 いつまでも、いつまでも――心がザワザワと泣き続けます。


「……病院にでも行った?」


 お兄ちゃんの胸に縋り付いて嗚咽を飲み込みながら、私は頷きました。


「ネックレスは?」


「……もって、いきましたぁ……」


「……そっか。そっか」


 お兄ちゃんの胸で、心の奥から溢れる悲鳴に飲み込まれながら泣き続けました。――それから、どれくらいの時間が経ったのでしょうか。気がつけば、私はお兄ちゃんに抱かれて眠っていました。


「……んぅ」


「起きた? おはよう」


 温かい胸に凭れかかりながら視線を上げれば、お兄ちゃんの優しい微笑みが視界に収まりました。素敵な目覚めです。


「おはよう、ございます……」


 私がムニャムニャと言葉を返せば、お兄ちゃんが頭を撫でてくれました。それだけで心がポカポカと温まるのですから、自分でも安い妹だと思います。


「落ち着いた?」


「……はい」


「訊いても?」


「はい」


 お兄ちゃんの胸に身体を預けながら、私は頷きました。


「どうして病院に?」


「担任の先生に、頼まれたのです。入学以来登校していない子がいるから、その子のお見舞いに行って欲しい、と」


「……なるほど」


 お兄ちゃんの心が、少しだけ熱を帯びました。温かくて熱い――それは、怒りです。


「このことは、先生も知らないのです。だから、私がいけないのです。断れなかった私が……」


「……ごめんね。それで、お見舞いに行ったんだね」


「はい」


「その子が原因?」


「……はい」


 とても、とても弱い子でした。幾重にも幾重にも積み上げた壁の向こう側で、延々と泣き続ける子ども。それが、村崎守正さん。……でも――。


「どんな子だったの?」


「……すっごく、ムカつく人でしたっ!」


「……え?」


 お兄ちゃんが、珍しく呆けたような表情を浮かべました。そんな顔も素敵です。


「物凄く、ものすごぉ~く厭味ったらしいのですっ! 捻くれるにもほどがあります! 人を馬鹿にしたようなことばっかり言って、それで人から離れようとしているのです! それなのに、心の中では子どもみたいに泣いてばっかりで! あの人は、チグハグな心に気がついているのに! だから、あんなに捻くれたのですねっ!」


 プンプンと怒気を吐き出す私を見下ろしていたお兄ちゃんは、突然笑い出しました。――え、え? わ、笑うところですか……?


「あっははは。いやいや、ごめんね。ふふふ。あははははははははは――」


 お兄ちゃんは、暫く笑い続けました。何がそんなに面白かったのかは、私には分かりませんけど。お兄ちゃんが幸せそうなので、それだけで良いです。――まぁ、少しだけ釈然としませんけど……。


「そっかそっか。捻くれたクソガキだった訳だ。ふふふ」


「はいっ! あれこそがクソガキさんですっ!」


「そっかそっか。ふふふふ。――でも、真面目な話。その子は僕の作ったネックレスを貫通した訳だ」


「……はい」


「テレパシーが急に強まったってことは?」


「ない、と思います」


 テレパシー。精神感応。所謂超能力と言われる力を、私は宿しています。その原因も理由も不明ですけど、この力の所為で心がズタズタに引き裂かれたのは事実です……。


 善意も悪意も分別なく、好意も殺意も否応なく――。ありとあらゆる感情が、幼い心を犯すように流れ込むのです。自意識という物心がつく前から、私の心は嵐の渦中に独りぼっちでした。そんな私を救ってくれたのが、お兄ちゃんです。


 グチャグチャな心を整理するためにお母さんの口調を真似て、ただただお兄ちゃんの心だけを感じて――。


 今の私が出来上がったのは、中学校に進学する直前くらいです。現在でも、多重人格の後遺症は残っていますけどね。グロテスクな物が好き、とか。和風ホラーは苦手ですけど。


「そっか。まぁ、うん。それなら大丈夫かな。改良案が浮かんだら直ぐに作るけどね」


「はい」


 私の眼鏡やネックレスは、テレパシー能力を抑えるためにお兄ちゃんが作ってくれた物です。その原理は私にも分かりませんけど、お兄ちゃんの手作りだから安心です。


「……でも、そっか」


「……お兄ちゃん?」


 思案顔のお兄ちゃん。その遠くを見るような目は、私は余り好きではありません。お兄ちゃんが手の届かないところに行ってしまいそうで、怖いからです。


「薫」


「はい」


 私の頭を撫でながら、お兄ちゃんはニッコリと微笑みながら言葉を紡ぎました。


「その子と、友達になってみない?」


お兄ちゃん、何者!?

まぁ、只者ではありません笑


しかし、このお兄ちゃん結構腹黒そうだzおい何するんだやめろぉおお――……

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