1 村正オンライン
一人称のオンラインゲームを交えた恋愛物です
まぁ、ヒロインの子はブラコンですけど笑
マイペースに更新出来ればいいな、と考えています
誤字脱字の指摘や感想など、頂けると嬉しいです
それでは、皆さんのささやかな時間を彩ることを願って
宜しくお願いします!
❤
恋風薫、十五歳。突然のことではありますが――この度、生まれて初めてオンラインゲームをプレイすることになりました。そのタイトルは『村正オンライン』です。
そもそも、何故――薫がオンラインゲームを始めるに至ったのか? その経緯は、後々に語る機会が用意されていると思います。しかし、まぁ――簡単に言ってしまえば、薫が勇気を振り絞って友達になりましょうと言ったにも関わらず冷めた表情で『……お前、馬鹿じゃないの?』と見下して下さりやがった憎い畜生の冷え切った頭を縦に振らせてやるためです。
ふふふ。首を洗って、序でに耳の裏まで洗って待っていなさい! 耳の裏を洗うのは、偶に忘れてしまいますからね。
「――……薫? どうかしたの?」
「あ……。い、いえ何でもないです……っ」
黙り込んだ薫を心配してくれたのでしょう。お兄ちゃんが、隣から薫の顔を覗き込みながら首を傾げました。
現在、薫とお兄ちゃんは隣り合って座っています。とても幸せです。――……っと、いけませんいけません。幸福ポイントの急激な上昇で、今の状況を完全に忘れてしまうところでした。
薫が現在向き合っているのは、カントリーなパソコンラック。両の側面を刳り貫いたハート型の小窓がキュートな家具です。机の上には液晶モニター、引き出し式のボードにはキーボードとマウス。足元に置かれているのがパソコンの本体。――そして、薫が両手に収めているのはゲームパッドと呼ばれるコントローラーです。
「さあ、もうオープニングが終わるよ」
「はい」
薫が液晶モニターに視線を戻すと、薫の分身がベッドに寝ていました。
オンラインゲーム『村正オンライン』を始めるに当たって、薫が初めにやったこと。それは、薫の代わりに仮想世界を生きる分身の作成。キャラクタークリエイトです。
性別は、勿論薫と同じ女の子。種族は『妖精』で、職業は『巫女』です。白衣に緋袴、その背には蒼いモルフォ蝶の翅が付いています。円らな黒眼で、黒髪の長いストレートを背中に流した大人しそうな女の子です。
種族は他にも五種類ほど。職業は、全部で三種類だけでした。薫的には、シンプルで良いと思います。ベストです。
髪の長さから足の細さまで、全身をコーディネート出来る仕様には驚きました。皆が皆、赤い服の髭面オジさんで緑色の土管を潜る時代は終わったのですね。
斯く言う薫も、お兄ちゃんに手伝って貰いながらキャラクタークリエイトを思いの外楽しんでしまいました。彼此三時間以上は、キャラクタークリエイトに熱中しちゃったのではないでしょうか? 薫の分身ということで――また、愛着が湧いたこともあって名前は『かおる』ちゃんに大決定しました。
そのかおるちゃん、オープニングで謎の覆面集団――では無く、忍者集団に襲われてしまいました。どうやら、家宝の刀のような物を運んでいる最中に急襲されたようです。
深い森に囲まれた山道、十数人の用心棒達を供に大名駕籠のような乗り物で移動するかおるちゃん。しかし、忍者集団を前に陰陽師や侍の用心棒達は敢え無く散ってしまいました。
果たして、刀は奪取され――かおるちゃんは、暗い山道を満身創痍で逃げている際に足を滑らせ崖下に真っ逆様。しかし、幸運なことに街道を通りかかった商人の父娘に助けられて現在に至る――という感じです。
最初からクライマックスですね!
かおるちゃんが寝ているのは、恐らく商人父娘の家なのでしょう。ベッド脇の椅子に娘さんが座っていますし。――あ、額のおしぼりを取り換えてくれています。小奇麗な上に優しい娘さんですね。
――しかし、この『村正オンライン』というゲーム。映像が、とても綺麗です。これがゲームだなんて、とても信じられません。和風な筆触りが、日本人的な美意識を心地良く擽ります。薫に限らず、日本人の誰もが心に感じ入る描写だと思います。
『かおる / ……ん』
――あ、かおるちゃんが目を覚ました!
『マチ / あ、気がつきましたか?』
かおるちゃんも娘さん――マチさん? も喋っています! 声が聞こえます! そういえば、キャラクタークリエイトの時にかおるちゃんの声を選びました。
マチさんにも声があるのですね。テキストが表示されるのは同じですけれど、昔は誰もがピの連続音で話していましたから。それを考えると、時代の進歩を感じます。素晴らしいです。
二人共、舌の上で風鈴を転がしているような玉声です。
『かおる / ……ここ、は?』
『マチ / ここは、私と父の家です。私の名前はマチです。村の名前は、クオン村といいます』
『かおる / まち、くおん……。……わたし、私の名前は……?』
おや? 何だか、かおるちゃんの様子が変ですね。目を覚ましたのは良いですけど、どこかぼんやりしています。
『かおる / 名前、なまえ……。……――ぁ。かおる、かおる……』
――ホッ。どうやら、記憶喪失では
『かおる / でも、名前以外になにも思い出せない……』
……フラグ回収は、バッチリのようです。
どうやら、かおるちゃんは峠を越えたものの記憶を失ってしまったようです。
『マチ / そうなんですか、記憶が……。父がもう直ぐ戻って来るので、父にも相談してみましょう』
マチさんの父親は、ゲンさんという名前でした。深窓のお嬢様風なマチさんに対し、ゲンさんは鳶職のような体格に加えて顔が厳ついです。それなのに、笑った時にはマチさんと同じような愛嬌を感じるのですから、親子とは不思議なものですね。
ゲンさんとマチさん、そしてかおるちゃんで夕餉を囲みながら相談会が始まりました。取り敢えず、かおるちゃんは傷が完治するまで二人の世話になることが決定しました。しかし、何もせず厄介になることは出来ない。手伝えることがあれば何かしたい――と、かおるちゃん。かおるちゃんは良い子ですね!
翌日から、驚くべき回復力で動けるようになったかおるちゃんが、村人達の手伝いをすることになりました。
「ここから、チュートリアルだよ。もう動けるから、左のアナログスティック――これね。これを動かしてみて」
「は、はい……っ」
朝。液晶モニターの向こう側には、ベッドから下りたかおるちゃんが立っています。
ゲームパッドを握る薫の手は、若干の緊張で湿っていました。
『村正オンライン』は、マウスとキーボードで操作するやり方。そして、ゲームパッドという見慣れたゲームコントローラーで操作するやり方。その二種類があるそうです。薫はゲームパッドにしました。マウスとキーボードでどうやって動かすのか、理解出来なかったからです。
お兄ちゃんの指示通り、左のアナログスティックを左手の親指で前に倒します。――すると、何ということでしょう! 液晶モニターの向こう側に立っていたかおるちゃんが、長い後ろ髪を靡かせながら歩きました!
「あ、歩きましたっ」
「うん。他にも動かしてみて」
右に倒せば右に。左に倒せば左に。後ろに倒せば、ゆっくりと後退ります! ――我が子の歩く姿を初めて目にした母親とは、このような気持ちになるのでしょうか? 心の底から嬉々とした感情が湧き上がるのを感じます。これが、女の喜びなのですね!
「右のアナログスティックは、カメラ移動」
「カメラ、ですか?」
「うん。要は、かおるちゃんの視点移動だね。右に倒せば右を向いて、前に倒せば上を向くよ」
お兄ちゃんに言われた通り右のアナログスティックを右手の親指で動かすと、かおるちゃんの視点が動きました。上に、下に。左に、右に。和風テイストな民族調の部屋を好き勝手に見回していると――自室から一歩も外に出ていないにも関わらず、旅行先のコテージを歩き回っているような不思議な感覚に包まれます。
オンラインゲームって、何だか物凄いです――。
『マチ / かおるさん。かおるさんを助けた時、傍に刀が落ちてたんです。たぶん、かおるさんの物だと思うんですけど。着物とは違って、刀は修理出来そうだったので、村の鍛冶師さんに修理を依頼してたんです。先ほど使いの人が来て、あと少しで終わりそうだから、取りに来てくれたら直ぐに渡せるそうです』
一通りの操作をお兄ちゃんから教わってマチさんに話しかけてみると、衝撃の事が実発覚しました! 忍者に奪われたと思っていた刀でしょうか? 是非とも、行ってみる必要がありそうです。
因みに、かおるちゃんは今も紅白の巫女装束を着用していますけど、オープニングで着飾っていた物よりは質素な彩りになっています。
『マチ / かおるさん。記憶喪失のこともありますし、私でよければ、村の案内を兼ねて色々お教えします。如何でしょうか? 勿論、必要なければないで構いませんよ』
『 マチからチュートリアルを受けますか? ▽はい / ▽いいえ 』
初めての選択肢が出ました!
チュートリアル。お兄ちゃんがいるので必要無さそうですけれど、どうしましょうか? お兄ちゃんに相談してみましょう。
「お兄ちゃん、チュートリアルって受けるべきなのですか?」
「そうだね。チュートリアルが終われば貰える物もあるし――何より、僕が傍で教えるよりも世界観を味わえるだろうしね」
「分かりました」
お兄ちゃんに教えて貰いたかったですけど、何か特典が貰える上にゲームを楽しめるとあれば、マチさんのチュートリアルを受けざるを得ません。
『 マチからチュートリアルを受けますか? ▼はい / ▽いいえ 』
十字キーで選んで決定ボタン、ポチッ――と。
『マチ / 分かりました。それでは、一緒に行きましょう』
マチさんと一緒に家を出ると――そこは、村でした。
緑豊かな田圃道。畑仕事で汗を流す男性の方がいれば、川で洗濯物を水洗いする女性の方がいます。木々の梢で囀る小鳥達。折った小枝を刀剣に見立てて打ち合いながら、ワイワイと走り回る子ども達。木目調に藁を葺き交ぜた家屋の数々。空は高く青く、雲は緩く白く――。
そこには、素敵な田舎風景が広がっていました。本当に『村』です。『村』なのです!
「……すごい、です」
「うん。凄いよね。こんなに綺麗なオンラインゲームは、他に無いよ」
薫は、暫く村景色に見惚れていました。
村人達の呼び声や笑い声。木の葉を揺らす風が吹けば、僅かに土埃が舞い上がります。村の中央、小高い丘に建てられた玄関先から伸びる風景は、本当に絶景物です。
――漸く動き出した頃には、当初の目的を忘却していました。……はて? と小首を傾げている薫に優しく教えてくれるお兄ちゃん。そうです、刀です!
それでは、鍛冶師さんのところに行きましょう。でも――。
「……鍛冶師さんは、どこにいるのでしょうか?」
「マチちゃんが教えてくれるよ」
『マチ / それでは、鍛冶師さんのところに行きましょう。まずは、画面の右上を見てください。円い絵があるのが分かりますか? それが地図です』
いきなり、メタな発言が飛び出しました。これも、ゲームの醍醐味と言ってしまえば醍醐味なのでしょうか? えっと、画面の右上……円い絵……。これですね。
ゲーム画面の右上に、確かに円く縁取られた絵――地図がありました。円い縁取りは、彩りからして木枠を模しているのでしょうか? 地図は簡素な線画で、その中央に三角のマークがあります。
『マチ / 中央に描かれた三角記号が、かおるさんの現在位置になります。それでは次に、キーボードのMを押してみてください』
Mですね? マチさんの指示に、素直に従います。ポチッ――と。
――おお! 右上の地図が消えたかと思えば、画面の中央に拡大されて現れました。これは見易いですね。村の全体像と思しき線画の中には、地図記号のような絵が程々に描かれています。これは、何の絵なのでしょうか?
『マチ / もう一度Mを押せば、元の小さな地図に戻りますよ。あと、地図の中に描かれている記号ですが。これは、鍛冶屋だったり道具屋だったり、それぞれの施設を表しています。拡大した地図の下に一覧表があるので、その中から鍛冶屋の記号を探してみてください。見つけたら、地図の中にある同じ記号を探してみてください』
チュートリアルっぽくなってきましたね! 楽しくなってきました!
ふむふむ。拡大した地図の下に――確かに、ありますね。様々な記号が描かれた右隣には、マチさんの説明通り施設の名前が書かれています。鍛冶屋さんの記号は――剣と金槌を交差させたような記号です。地図の中にも、同じ物を見つけました。村の南西にあるようです。
『マチ / どうですか? 鍛冶屋がどこにあるか、見つけましたか? 見つけたら、その鍛冶屋をマウスでクリックしてみてください』
更にメタな発言を頂きました。勿論、マチさんに従います。マウスで、マウスで――クリック。カチッ――と。
そうすると、三角マークから鍛冶屋さんのところまで――光る点線が繋がりました。
『 自動で移動しますか? ▽はい / ▽いいえ 』
『マチ / 地図上で行きたいところをクリックすれば、自動で移動してくれるんです』
カーナビみたいなものですね、多分。
薫自身の手で村を見学ながら歩きたかったのですが、自動で移動する様も見てみたいですね。この葛藤、鬩ぎ合い――自動で、お願いします。
『 自動で移動しますか? ▼はい / ▽いいえ 』
『はい』を選ぶと、続いて新たなメッセージが表示されました。
『 以後、確認すること無く自動で移動しますか? ▼はい / ▽いいえ 』
勿論、『はい』です。楽が出来るに越したことはありません。現代人ですから。
かおるちゃんとマチさんが自動で歩く後ろ姿を見守りながら、お兄ちゃんにダッシュやジャンプなど高度な操作方法を教えて貰いました。
ダッシュしたりジャンプしたりすると、持久力なるものが減るそうです。左上に表示されている三本のバーですね。かおるちゃんの上半身がデフォルメされたと思しき可愛いアイコンの右隣に、三本のバーが並んでいます。
上から緑色の体力、青色の精神力、そしてオレンジ色の持久力と並んでいるそうです。玄人のプレイヤーさんは、上からHP・MP・STと言っているみたいです。
操作の中でも、ジャンプは回避行動になるので持久力の管理は重要らしいです。――まだまだ、難しいことは分かりませんけど……。
『トウジ / おう。アンタが、ゲンさんが助けたっていう巫女さんかい? 刀の修理は終わってるぜ』
自動移動でもカメラの操作は出来るらしく、嬉々として視点をグルグル回している間に目的の鍛冶屋さんに到着しました。ゲームの視点はかおるちゃんを後ろから俯瞰しているような形なので、かおるちゃんの目が回ることはありません。
鍛冶師さんは、トウジさんというのですね。縦に高く、横に太く。筋肉質に焼けた肌は、鍛冶師! という感じがします。まぁ、実際に鍛冶師さんを見たことはありませんけど。
――それにしても、この世界は名前をカタカナで付けるのが習わしなのでしょうか? でも、『カオル』ちゃんよりも『かおる』ちゃんの方が可愛いですしおすし……。まぁ、ゲームです。そこまで、拘る必要も無いでしょう。ああ、久し振りに回る小皿が見たくなってきました。
『かおる / ありがとうございます』
かおるちゃんがトウジさんから受け取った刀は、残念ながら至って普通の刀でした。何の変哲も見受けられません。インベントリ――というものを開いて説明文を読んでも、太古の龍を滅ぼした刀――とはどこにも書かれていませんでした。人生、何事も上手く運びませんね。
しかし、『巫女』が刀とは――此れ如何に?
「お兄ちゃん、巫女さんも刀で戦うのですか?」
「そうだよ。侍は勿論、忍者も巫女も刀で戦うの。まあ、刀が魔法の杖みたいな感じの物もあるけどね。今受け取った薙刀も、そんな感じだよ」
「なぎなた……?」
改めて受け取った刀を眺めてみると、確かに普通の刀より長い――のかもしれません。残念ながら、薫は刀剣類の造詣は浅いどころか平坦なのです。ぺったんこに知識も糸瓜もありません。
「薙刀は、陰陽師と巫女の補正武器なんだよ。取り敢えず、もう一回トウジさんに話しかけてみて」
「はい」
トウジさんは現在、頭上に感嘆符を浮かべています。地図を見れば、トウジさんと重なる形でエクスクラメーションマークが印されていました。
『トウジ / アンタ、刀を持ってるってこたぁ、多少は腕の立つ巫女さんなんだろ? ちょっと、頼まれ事を引き受けて貰えないかい?』
『 依頼を受けますか? ▽はい / ▽いいえ 』
依頼とは、所謂クエストで――その依頼を熟しながら物語を進めていくらしいです。全て、マチさんが教えてくれました。経験値や物品報酬もあるそうです。
『 依頼を受けますか? ▼はい / ▽いいえ』
『トウジ / 引き受けて貰えるか! ありがてぇ! 実はな、最近近くの街道で魔物を見かけるようになってきてな。討伐を依頼したいんだ』
なるほど。つまり、かおるちゃんに――引いては薫に戦え、と。……今から断るのは、駄目でしょうか? 駄目なのでしょうね。……本当に駄目なのでしょうか? ぐすん。
「戦闘のチュートリアルだから、簡単だよ」
……お兄ちゃんの『簡単』だけは、信用出来ません。
東京観光の序でに日本最高学府の理三を受験して満点合格するような人ですよ? 夢の国は楽しかったですけど、次は海の国に行きたいですけど……! ――そういえば、思い返してみれば本当に勉強する素振りも見せませんでしたね……。
本当に楽しかったですけど、他の受験生の方々に申し訳無い気がします……。結局、上京しませんでしたしね……。
学校の方で、結果が欲しいから受けてくれ! と校長先生に懇願されたらしいです。受験料は勿論、旅費や観光費まで全て学校側が負担した――と言うよりも、お兄ちゃんが『させた』みたいです……。
――とにかく! お兄ちゃんの『簡単』だけは信用出来ません!
「本当に、ほんとぉーに簡単ですか?」
「本当に簡単だって」
お兄ちゃんの笑顔が怖いです。説得力がありません。でも、笑顔は素敵です。簡単に、現実逃避出来てしまいます。――逃避しては駄目ですけど。
――がんばれ、かおる!
「が、頑張ります……っ」
「うん、頑張れ」
かおるちゃんに薙刀を装備させた後、マチさんの案内で村の外に出ます。その際に、ロード画面? というものが出ました。桜舞散る着物姿のマチさんが蹴鞠で遊んでいる様子が描かれていて、可愛かったです。少し和みました。
村の外に出ると――そこには、時代劇で描写されるような、土の踏み均された街道が遠くまで伸びていました。若草の草原や深緑の森林に囲まれ、彼方には山々が見えます。どこまでも鮮明な色彩に――薫は、やはり暫く見惚れてしまいました。
『マチ / 最近魔物が出るようになった街道は、こちらです』
チュートリアルとはいえ、マチさんが村の外まで出てきて大丈夫なのでしょうか? という疑問をお兄ちゃんに尋ねてみたところ、マチさんは武術の心得があるそうです。何でも、ゲンさんと行商路を共にしているのは用心棒としての一面もあるとか。
マチさん、物凄いです。――というか、それならマチさんが戦えばいいと思います! くぅ、チュートリアルという強制案内システムが忌々しいです……。
マチさんの案内で大きな街道を逸れた横道に入ります。――すると、画面中央に色々な情報が表示されました。
『 始まりの街道 修羅場 人数制限:1人 適正レベル:1~10
難易度:▽易しい / ▽××× / ▽××××
部隊情報:▽部隊作成 / ▽部隊検索 ※チュートリアルでは使用出来ません
クオン村の傍にある街道。近郊の街まで続く近道で、村人がよく利用する。 』
マチさんとお兄ちゃんの話を総合すると――ここは、所謂インスタンスダンジョンの入口なのだそうです。因みに、『村正オンライン』にはスタンドアローンなインスタンスダンジョン『修羅場』と、皆でワイワイ遊べるマルチダンジョン『修練場』――以上二種類のダンジョンがあるそうです。
チュートリアル専用の『始まりの街道』には難易度が『易しい』しかありませんけど、通常は『難しい』と『恐ろしい』を加えた三種類があるそうです。――恐ろしいって、何ですか……?
他にもパーティである部隊など、覚えることは他にも色々あるそうですけど――薫の頭がパンク寸前だったので、お兄ちゃんが後で教えくれることになりました。ダッシュとジャンプだけで桃色のお姫様を助けていた時代が懐かしいですね……。
――何はともあれ、初ダンジョン。出発です……! あ、またロード画面です。村の子ども達がチャンバラする風景。和みますね。
『マチ / ここが「始まりの街道」です』
そこに広がっているのは、やはり緑豊かな風景。とても風流な描写です。――しかし、ここは戦場なのです! ぐすん。
画面を隅々まで見回してみましたけど、以前と変わった様子は見受けられませんね。――そういえば、画面の下部に表示された四角い枠の横列は何なのでしょうか? マチさんが、パッドの絵図と共に基本的な戦い方をレクチャーしてくれた後に、薫の疑問が解けました。
『マチ / 画面下部には「刀技」や「秘技」を装着して、それらを戦闘中に使用することが出来ます』
『刀技』や『秘技』。お兄ちゃんが、簡単に説明してくれました。要するに、ボタン一つで発生する必殺技らしいです。
かおるちゃんは、現在は薙刀の刀技『巫刃一閃』だけ使えるみたいです。Kを押して説明文を読む限り、衝撃波? のようなものを飛ばす技みたいですね。――つまりは、遠距離攻撃ですね。心強いことこの上無いです! バシバシ使っていきましょう! と言いたいところですけど、精神力が無くなると刀技は使えなくなるようです……。
初めての戦闘を前にガクガクブルブルしながらマチさんの説明を聞き終えると、木陰から狼のような動物さんが一匹現れました。
『マチ / あれは、野狼牙という魔物です……!』
あ、あれが魔物……! ――可愛い! 薄汚れた灰色の毛皮に包まれた矮躯。そして、血色に窪んだ眼窩と変色して歪んだ牙が並ぶ顎。とても可愛いです!
「お兄ちゃん! あれが魔物なのですかっ?」
「そうそう。可愛いでしょ?」
「はいっ!」
「ふふ。薫なら、そう言うと思った」
こんな可愛い魔物――野狼牙さんと戦うのですね。それなら、きっと楽しめそうです!
初めてオンラインゲームをプレイした時、右も左も分からない状況で でも自分以外にも同じ時間プレイしている人がいるんだと思うとワクワクしました
薫ちゃんも、楽しんでくれると嬉しいですね
ゲームの設定や感想など、質問でも何でも頂けると嬉しいです
初心者な薫ちゃん視点なので、余り専門的な用語は出てきませんしね笑
それでは、失礼します
ここまで読んで頂き、ありがとうございます
あ、勿論続きますよ笑




