第5話:父になる覚悟
レイナの笑顔が戻り始めた一方で、陽介はまだ法律上「父」でありながら、心のどこかで「家族としての責任」を果たしきれていないことに気づいていた。
娘の未来、美咲との関係、自分が選ぶべき道――
陽介は、「父親として生きる覚悟」を固めていく。
朝の食卓。
陽介は、いつもより少し早く起きて、お弁当を作っていた。
レイナ:「えっ、パパが?!」
陽介:「ほら、見てくれ。ウインナー、タコさんに切ったぞ」
レイナ:「すごーい! ちょっとだけ“食べたい”って思った(笑)」
美咲:「“ちょっとだけ”かい(笑)」
そのやり取りに、陽介は心から笑いながらも、どこか考え込んでいた。
出社後、陽介は上司に相談を持ちかける。
陽介:「……育児と仕事、両立するために、勤務体系を見直したいんです」
上司:「突然どうした? あんた、いつも“仕事人間”だっただろう?」
陽介:「それで……娘の成長を見逃してました。これからは、父親としてちゃんと向き合いたいんです」
しばし沈黙ののち、上司はひとつ深く頷いた。
上司:「……分かった。そう言えるのは、立派なことだ」
同日夕方。
レイナが小学校でクラスメイトに言われた言葉を、美咲に話していた。
レイナ:「“レイナちゃんのママって、いないんでしょ?”って言われたの。なんか……悔しかった」
美咲:「……レイナ」
レイナ:「でもね、“今はちがうよ。ママになってくれる人、もういるんだ”って言ってやったの」
美咲はその言葉に目を潤ませ、レイナをそっと抱きしめる。
美咲:「ありがとう。ママって呼んでくれる日、ずっと待ってるね」
夜、陽介はレイナを寝かしつけたあと、美咲と二人きりの時間を過ごしていた。
陽介:「……俺、レイナをちゃんと育てたい。
これからは、逃げずに父親として向き合う。
だから、美咲……君にも、隣にいてほしいんだ」
美咲はそっと陽介の手を握る。
美咲:「私も、ふたりを守りたいって思ってるよ」
陽介は静かに微笑み、もう一度、家族の一員としての自分を受け入れようとしていた。
次回予告
「次回、『さようならのあとで』
過去に別れを告げ、新しい未来が動き出す――」




