第2話:1000円と水道水
母の育児放棄が始まり、家に帰っても温かいご飯はない。
与えられるのは一週間1000円の食費だけ。
幼いレイナは、その少ないお金で飢えをしのぎながらも、誰にも助けを求められずにいた。
そしてある日、とうとう財布の中身が尽きてしまう――
空腹の中、レイナが公園で水道水を口にしていた時、ある女性が声をかけてくる。
放課後、学校の昇降口。
レイナ:「……バイバイ、ミキちゃん。またね」
友人と別れたレイナは、ランドセルを背負いながら静かに帰路につく。
帰り道にあるコンビニを見つめるが、手には100円玉が一枚だけ。
レイナ:(心の声)
「これで、おにぎり……買えないかな……」
だが、税込で買える金額ではなかった。
結局、何も買わずにそのまま家に戻る。
家の冷蔵庫の中には、何日も前に賞味期限が切れた納豆と水だけ。
母親の姿はなく、リビングのテレビだけが虚しくついていた。
テーブルには、空っぽの財布。
レイナはそれを握りしめ、こっそり玄関から外に出る。
夕暮れの公園。
レイナはベンチに座り、ポケットの中の小銭を数えてみる。
レイナ:「……もう、なにも買えない……」
彼女は立ち上がり、水道の蛇口をひねって水を両手で受け取る。
それをすするように飲みながら、ポツリとつぶやく。
レイナ:「ママ、どうしてご飯作ってくれないの……?」
そのとき――
???:「お腹、すいてるの?」
振り返ると、そこにはベーカリーカフェ「Ao Bakery」の店員、美咲の姿があった。
■回想(美咲視点)
朝、美咲はカフェの前を掃除している時、何度か見かけた少女の姿を思い出していた。
いつも同じ服、同じ時間、公園で水を飲んでいる。
美咲:(心の声)
「……この子、毎日ひとりで?」
そして今日、思わず声をかけていた。
美咲:「これ、よかったら食べて。さっき焼いたばかりのパンなんだ」
袋の中には、ふわふわの白パンと、少しだけ甘いクリームパン。
レイナは戸惑いながらも、そっとそれを受け取り、小さく頷いた。
レイナ:「……ありがとう。すごく、いい匂い……」
パンを一口かじった瞬間、レイナの目からぽろりと涙がこぼれ落ちる。
美咲:「大丈夫。お店、すぐそこだから。いつでもおいで」
夕日が沈む中、レイナは美咲に手を引かれながら、カフェへと向かっていく。
温かい光が灯るその店のドアが、やさしく開かれた。
次回予告
「次回、『パンのにおい』
匂いに誘われて、少女の心が少しずつほどけていく――」




