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「エターニャ・ハーツ様からのお茶会のお誘い?」
姉に聞いた時は、どうしてかしら?
というのが本音だった。
私の驚きを察したのだろう、姉も複雑な表情で
私を見ている。
エターニャ様は獣人の公爵令嬢、
夜会でお会いした事はあるが、
挨拶程度で親しくはなく、当然友人でもない。
「どうして、お誘いがあったのかしら?」
「エターニャ様はライオネル様の事が、
好きだったらしいのよ」
姉が困った声で伝えてくれる。
恋のライバルという事?
でも・・・
「エターニャ様とライオネル様は結婚できないのでは?」
ライオネル様とお見合いをするにあたって、
頭に入れていた知識を引っ張り出す。
獣人は血が濃すぎると、子供が産まれない、
祖母が同じという濃すぎる血の為、
2人は結婚の条件からは外れるはずだ。
「そうなのよね」
姉はまだ困った表情を崩さない。
「2人は幼馴染で、一方的にエターニャ様が、
ライオネル様を慕っているらしいの」
どうやら、長い片思いらしい。
うーんと迷う。
お見合い相手を好きな令嬢と会う・・・
普通なら遠慮したい所だが、
無意味なら姉が話を潰しているはずだ。
こうして、私に話を持ち掛けるという事は、
交流をしておくと、
私にとってメリットがあるという事だろう。
まあ、立場は向こうが公爵家と格上な訳だし、
断らないのに越した事はない。
「貴女の意志を尊重するわ」
姉は父ほどではないが、
貴族として、家、領民の事を気にかけている、
当然、自分の我儘より、家の立場を優先する。
そんな姉がもちかけた話。
なら答えは1つだ。
「エターニャ様のお茶会に参加します。
招待状を下さい、
参加の旨の返事を書いて送りますから」
姉はほっとした表情だった。
確かに嫌な思いはするかもしれない、
嫌がらせの1つや2つは覚悟しておくべきだろう。
しかし、そんな事で怯むようでは、
社交界は渡っていけない。
これでもそれなりに場数は踏んでいる。
詩や小説も、趣味や教養以上に、
こういった嫌味対策の為に必要だったりする。
「これでも王太子妃教育を受けて来たのです、
お茶会を楽しんできます」
姉は満足そうに、微笑んだ。