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それから数日が経った。
父に呼び出され、ライオネル様とお見合いがしたいか聞かれる。
もちろん即OKを出す。
姉の根回しは完璧だ、
どう父を説得したのか気にならない訳ではないが、
恐らく、この家とどう有利になるか話したのだろう。
父も私にも甘いが、あくまで侯爵家の当主という立場だ、
家の不利になる事は絶対にしない。
国も大事だが、それ以上に家至上主義なのだ。
その家を維持する為、領民の生活もきちんと守り、
当主としてきちんと仕事をしているので、尊敬している。
そんなこんなであっさりと、お見合いが設定された。
馬車でライオネル様のお宅に向かう。
我が家も歴史のある立派な家だが、
さすが公爵家、その上をいく御殿だ。
多分、この屋敷なら働いている人は30人はいるだろうなと、
なんとなく考えながら、
案内してくれる人の後についていく。
ちなみに、王族と間違われているのでは?
と思う程、丁寧に扱われるた。
私は侯爵令嬢で格下の存在。
公爵家という立場で、客人に無礼を働く事はないものの、
もっと軽く扱われると思っていた。
私もお茶会には何度か出席して、
立場による違いなど何度も経験している。
それを考慮しても、破格の待遇だと感じたのだ。
あれ?なんでこんなに歓迎されているのかしら?
私の領地は商業地帯にあり、税収も多く、
裕福な部類に入る。
王太子妃候補として、一流の教育は受けている。
えっと?オイシイ相手だと思われている?
しかし、公爵家も軍事の要だし、
かなり裕福な家のはず。
私の家のお金を当てにする必要もないのだけどな。
お見合いをするにあたって、
ライオネル様と、その屋敷、領地については勉強してきている。
確かに、私との結婚は悪い条件ではないが、
どうしても必要という程でもないと言った感じだ。
「どうぞ、こちらでお待ちください」
案内されたのは、広い庭のガゼボだ。
周りを見渡すと、綺麗に手入れされ、
色鮮やかな花がセンス良く植えられている。
この公爵家の庭師はやり手ね。
おかしくない程度に庭を見ていると、
お菓子がどんどんと運ばれてきた。
今日は2人でお見合いのはずだが、
5人分ぐらいはある。
多すぎるわよ~
そう思いながらも、用意されたお菓子が、
全て私の好物ばかりだと気づき、
その心配りが嬉しくなる。
「申し訳こざいません、ライオネル様が遅れていらっしゃって」
「気にしませんわ、こんな素敵なお花が見れるんですもの」
そう言って微笑むと、
従者の顔に”なんていい人だ”と書かれているのが、
見えるような気がしてしまった。
普段従者は無表情であるよう教育されているが、
喜びがにじみ出ている。
この従者からも、公爵家の質の高さが分かる、
どうやら、いい環境だと推測できてほっとする。