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結局私は2日間眠り続けていたらしい。
目が覚めて聞いた話では、襲撃者はあっさりと捕まり、
その裏で手を引いてた者も特定されたとの事だった。
「ゲルンガー公爵家ですか」
「ええ、もう何も心配しなくていいのよ」
姉が王太子妃になる事は、
社交界で姉の耳には入らないように囁かれていて、
あせったゲルンガー公爵が、娘を王太子妃にしようとして、
手下を王宮に送り込み、王宮の人間を買収して、
事件を起こしたようだ。
「もう公爵家は終わりね、
領地は全て没収、平民として10年暮らせるぐらいの、
お金だけ渡して、国外追放らしいわ」
女性が襲われたとあったら、邪推する者も出て来る、
なので何があったか大々的にはせず、
処刑ではなく、追放にしたらしい。
「それと」
と声を潜める。
「獣人を人身売買しようとしていたらしいわ」
私はその事にぎょっとする。
「夢で、獣人と人間が争い、
アマリアとライオネル様の子供が、
それを阻止すると言っていたわね、
そして、その火種は人身売買だったわね」
私はゲームの設定を思い出して確かにそうだ思う。
「これで、獣人と人間の争いは起こらないのね!」
まさか、大事になる前に解決できると思っていなくて、
はずんだ声が出る。
私は嬉しくなって、姉を見ると、
姉は複雑な表情をしていた。
「アマリアは、ライオネル様との子供の為、
結婚する事を決めたのでしょう?
なら、もうライオネル様と結婚する必要はないのでは?」
「お姉様?」
「今なら、王太子殿下と結婚も、
考えられるのではなくて?
あんなに好きだったのだから・・・」
姉の言葉にショックを受ける。
確かに昔は好きだった、
姉にアレクシスについて色々話してもいた、
しかし、
「アレクシスがダンスに誘ったのは、お姉様です!」
姉は下を向いて、
でも、としっかりとした声で言う。
「アマリアといる方が、王太子殿下は自然な気がするの、
私には距離があるというか・・・」
「好きな女性には慎重になるのは当然です!」
「好き?」
私は首をぶんぶん振る。
「アレクシスはお姉様を愛しています!
私とは・・・いわゆるマブダチです!」
「まぶだち?」
「えっと、とにかく、私は今は、
ライオネル様が好きなんです!」
「それは嬉しいな」
え?と声がした方を見ると、ライオネル様と、
アレクシスが入ってきた。
「え?いつの間に?」
「きちんと挨拶はしたぞ、
ただ、話のタイミング的に踏み込めず、
少し離れた所で聞いていただけで」
アレクシスは、姉の手を取る。
「不安な思いにさせて申し訳ありません、
これからは距離を詰めれるよう努力します。
ただ、これだけは伝えさせて下さい。
愛しているのは、貴女ただ一人です」
顔を赤くして、照れている姉に、
上手くいきそうとほっとなる。
「俺の事を迷わず好きだと言ってくれて嬉しかった」
そう言って、ライオネル様は、
腕と尻尾と両方で私を抱きしめた。
「それに王太子妃なんかになっちゃったら、
好きな時にカレーが食べれないわ」
その言葉に、
「私よりカレーなのだな」
というアレクシスに、
「当然」
と返し。
「俺よりは?」
というライオネル様に、ぎゅっと抱きしめ返し。
「食べ物の一番はカレー、
男性の中の一番はライオネル様よ」
と言うと、
「特別という事だな」
と嬉しそうにしていた。
姉は、
「確かに・・・2人はお似合いね」
と納得してくれたのだった。




