25(ライオネル視点)
パーティが終わり、疲労感はあるものの、
それ以上の充実感に幸せに包まれる。
王が正式に、俺とアマリアの婚約を宣言した。
とっくに紙での誓約はしているが、
やはり、国中の貴族に知られ、
祝福を受けると、アマリアが俺の者だと、
知らしめる事ができて気分がいい。
アマリアのダンスはさすがだった。
本来男性がリードするべきだが、
そんな事を意識する必要もない程、
体がスムーズに動く。
こんなに踊りやすかった事は一度もなかった。
体を密着させ、仄かに馨る自分の香りに、
何とも言えない満足感に満たされる。
2度踊って、その後は他の男とも
ダンスをする事は可能だが、
他の男と踊らせてなるものかと、
無言の圧力をかけ、後は挨拶に集中した。
エターニャとも挨拶をした。
エターニャは宣言通り、
獣人令嬢を纏め、アマリアの支援をしてくれている。
心配していたお茶会だったが、
女性の集まりで地位が約束されるのは大きい。
ふと見ると、アマリアの笑顔が、
少し普段と違って見えた。
ひょっとして、嫉妬してくれている?
期待をするものの、アマリアはそんな事で、
動じないなと、腰に手を回し笑顔を向ける。
その笑顔が可愛くて、
皆の前だというのに、額にキスをしてしまった。
その時の笑顔はいつもの笑顔で、
やっぱりこの顔が一番だなと思う。
パーティが終わった後、
王太子とリリアナ嬢に会った。
お邪魔してはいけないと思い、
声をかえず、会釈だけして通り過ぎようとする。
するとリリアナ嬢から思いがけない事を聞いた。
「アマリアと約束されているのでは?」
「アマリア嬢とですか?」
俺はそんな指示は出していない。
3人で顔を見合わせている時、
指輪が赤く光った。
魔導具屋で買った、緊急用の指輪だ。
アマリアが助けを求めている!
すぐさま王宮のアマリアが泊っている部屋へ向かった。
ノックしたが、返事がない・・・
「王太子殿下、扉を壊しても構いませんか」
「構わない、私が許可を出そう」
固い表情の王太子に礼を言い、
剣を抜き、扉の蝶番を壊す。
そこで衣服を乱されたアマリアを見て、
頭に血が上がるのが分かった。
騎士団長として、どんな時でも冷静でいたが、
自分でも気持ちが抑えられない。
すぐにでも切り捨てたかったが、
急所を抑えアマリアも横に転がっていたので、
幾分か気持ちを抑える事ができた。
反撃したのだろう、さすがアマリアだ!
アマリアを抱きしめてから、
アマリアの頬が赤くなっているに気づき、
すぐさま、王宮の医師に診断してもらう、
「大事ではこざいません、血も出ていないようですし、
すぐ元に戻るでしょう」
すぐに駆け付けられなかった事を悔やむ俺だが、
それ以上に怒っていたのが、リリアナ嬢だった。
エターニャの情報によると、
リリアナ嬢は王太子を密かに思っていたようだ。
しかし、アマリアが王太子に惹かれていると聞いて、
自分はサポートに回ろうと思っていた程、
リリアナ嬢はアマリア嬢を大切にしている。
そんなアマリア嬢が傷つけられたのだ、
怒りを爆発させるかと思うと、
静かにその場を立ち去り意外に思っていた。
犯人はすぐ捕まり、
その後ろの人間も判明した。
どうやら公爵家の人間が裏で手を引いていたようだが、
王太子が言うには、リリアナ嬢が、
王宮の人間や裏の人間、女性のネットワーク、
あらゆる情報を駆使して突き止めたらしい。
王太子は夫婦喧嘩は負ける気しかしないので、
絶対にしないと言っていた。
怒り狂うのではなく、冷静に断罪するリリアナ嬢に、
これ以上王妃として相応しい人物はいないと思うと同時に、
アマリアの姉として、頼もしく思っていた。
俺はアマリアを抱きしめ、
アマリアを守る事を、更に心に誓ったのだった。




